→INDEX

■■■ 「古事記」解釈 [2021.1.9] ■■■
[8] 神代篇は海人の縦横無尽の活躍記
"国生み"の記述の仕方📖國生みは実は分かり易い、そこでの阿波へ扱い方📖阿波は麻の国ではなく粟時代の雄、さらには、本文との齟齬が目立つ序文📖序文要約部冒頭は解題的と眺めて来れば、その真意がどこにあるのか考えざるを得ない。
「古事記」の構成について、ほぼ常識とされていそうな見方も、あえて棄てさり、ゼロベースで行くしかあるまい。

一番の問題は、"出雲神話"の位置付け。

と言うのは、「日本書紀」でカットされ、「古事記」ではしっかりと収録とされているが、ほとんど完本として残存している「出雲國風土記」の神話と重なっているとは言い難いからだ。
このことは、"淡路⇒阿波⇒隠岐⇒・・・"として始まった様々な小国家をすべて捨象し、それを一括りにしてしまい、出雲に預ける形にして、歴史の表舞台から見えなくするように工夫したことを示しているのではなかろうか。出雲神話とはあくまでも、一国内での話であり、史書に収載すべきものではないからである。
(例えば、俗称"因幡の白兎"には大穴牟遅神が登場するものの、"出雲"に伝承している話ではなかろう。"国生み"で、隠岐は重視されていることを忘れてはならない。しかも、三子ノ島と記載するなど、現代人でも気付かないことを知っている。このお話は、「因幡國風土記」逸文があるものの、専門家の註を待つまでもなく、「古事記」の後世引用臭紛々。つまり、極めて、独自性が高い話なのだ。従って、全体の流れから見て、因幡の山から見える隠岐之島との間に古くから交流があったことを示すために収録したのだと思う。隠岐の大型鰐[化石出土地]神話と野生素兎[背中焦げ色の固有種]の存在を示していることもあるし。出雲国島根千酌の津がかならずしも隠岐往来の中心とは限らないことを示していそう。尚、「因幡國風土記」逸文はわざわざ、"ワニと云う魚"としている。鰐魚という表記は他でも見られる。古代鏡に兎神仙は珍しくもなく、この話もその手の焼き直しバージョンではないか。鏡には、象も登場するのだから、太安万侶が鰐を知らなかったとは考えにくい。限られた地の方言でしかない魚の名称を古事記が平然と用いるとは思えない。どうあれ、隠岐と因幡は安直に考えるべきではない。)

ともあれ、公的史書の「日本書紀」でハイライトを当てたいのは、あくまでも"国譲り"の事績だけ。そこで、"出雲神話"を収録しなかったと解釈して満足しがち。だが、それだけではありませぬぞ、と注意喚起を行ったのと違うか。
(壮大な出雲大社@杵築とは、あくまでも"国譲り"の国家的モニュメント。本貫地とは別の地に建立し、移転させた可能性もあろう。)

そんな風に考えてしまうのは、序文の本文要約冒頭が道教教義そのものとなっているから。本文の雰囲気とガラリと替えただけでなく、記載していないことにまで触れている。淡路以前は道教の世界、と断言しているようにもとれる。

う〜む。

ここまで連続して考えてくると、コレは難問でもなんでもないと思えるようになってきた。太安万侶の見方を素直に受け入れればよいだけのことではないか。

そんな姿勢に徹すると、見えてくるのは海人大活躍の状況。

そこで、先ずは、綿津見神の広がり方を眺めて、海人の展開次第を簡単に整理しておくことにした。(神社情報は出処不明が多く、後世建立にもかかわらず箔をつけるべく創作された古代由来譚もあるし、地場の古社に近世になって勧請され御祭神化している可能性もありそう。その上、強引に合祀が行われたので、名称や祭神が替えられたり、移転例も少なくない。そもそも、消滅してしまった古代社もかなりの数だ。それを考えると、個々の情報の信頼性はかなり低いと言わざるを得ない。しかし、ざっくりと全体を見るなら、それなりの傾向は読み取れるのではないか、ということで。)
【注】
安曇≒アマツミ/海人ッ靈の可能性は高い。「日本書紀」編纂に安曇連が参画しているので、参照は限定した方がよい。(大海人皇子/天武天皇の名称は摂津の凡海麁鎌に養育[壬生]されていたため。乳兄弟一族が支援勢力であろう。)
尚、海部とは、伊勢部/磯部、山部、山守部といった"部民[職業部/品部]"名。海部を取り仕切る地位に登りつめたのが安曇氏。凡海オオアマ氏も、阿曇氏と同族[阿曇連(宿禰)・海犬養連・凡海連・八木造・阿曇犬養連]とされているが、連携しているのか、名目的なのかはわからない。


整理といっても、分析しようという訳ではなく、確認のようなもの。
「古事記」では、海の神は同じ名前で、3つの全く関係ない事績に登場してくる。・・・
伊邪那岐命+伊邪那美命
└○(大)綿津見/ワタツミ/豊玉彦命
├○宇都志日金析命/穂高見命…阿曇氏祖神
│ …穂高神社@信州安曇野
│ …氷銫斗賣神社@信州長野稲里下氷鉋田中島
├○豊玉毘売命【勾玉】
├○玉依毘売命
│ …玉依比賣命神社@信州長野松代東条内田
└○布留多摩命/振玉命
  【系譜】豊玉彦命─[祖]宇都志日金折命/穂高見命─[2]多久置命─・・・
      ─[9]百足足尼命─[10]大浜宿禰─・・・

[伊邪那岐命]
├○三貴神
├○綿津見三神(底津・中津・上津)
│  …志賀海神社@博多湾口志賀島[後漢光武帝金印57年出土地]
│    ○「風土記(逸文)」(糟屋郡)資珂嶋: 大濱・小濱と云ふ者あり。
└○住吉三神(底・中・上筒之男神)
綿津見神宮訪問[火遠理命]
綿津見
└○豊玉毘売(火遠理命后)【真珠】
●沼河比売@高志国奴奈川+八千矛神/大国主
│  …奴奈川神社@越後頸城【翡翠】
(伝承)
└○建御名方神@信州…妃:八坂刀売神
  …諏訪大社

瀬戸海系
<阿波>…海部氏 📖地方「風土記」には阿波国関連話
  和奈佐意富曾神社@奈佐の浦
  王子和田津美神社@徳島国府和田宮元津(御祭神:豊玉姫命)@名方
  ⛩(和多都美豊玉比売神社)
<讃岐>大内郡入野郷安曇直眉
<伊予>
  綿津見神社@宇和島津島
  ⛩湊三嶋大明神社@松山港山(御祭神:大山積神+大綿津見神+・・・)
<淡路>野嶋 阿曇連浜子[「日本書紀」401年]
<紀伊>
  神社@(那賀)海神社紀の川神領(御祭神:豊玉彦命+国津姫命)
  龍神宮/綿津見神社@田辺上秋津(御祭神:綿津見三神)
<摂津>
  大海神社@住吉(御祭神:豐玉彦命+豐玉姫命)
  卍(安曇寺)…氏寺
<播磨>
  林神社@播磨明石宮の上綿津見/少童海神)
  神社@神戸垂水宮本(御祭神:綿津見三神
  ○「風土記」揖保郡 石海郷: 右所以稱石海者・・・安曇連百足 仍取其稻獻之・・・遣安曇連太牟 召石海人夫令墾之・・・
  ○「風土記」揖保郡 浦上里: 右所以號浦上者 昔 安曇連百足等 先居難波浦上 後遷來於此浦上 故因本居為名
<吉備>
  田土浦坐神社@鷲羽山(御祭神:大綿津美神 底筒男神)
  ⛩(由加神社本宮@児島)
<備後>
  渡守神社(⇒沼名前神社)@福山鞆後地(御祭神:大綿津見命)
<長門>
  大綿津見神社/龍王社(+乳母屋神社⇒龍王神社)@下関吉見下

対馬海流系
<肥前>
  志賀神社@佐世保高島(御祭神:底筒男命)
<肥前(五島列島)
  ○「風土記」松浦郡 値嘉の郷: 在志式嶋(平戸島南端地名)之行宮 御覧西海 々中有嶋 烟氣多覆 勒陪從阿曇連百足 遣令察之 爰有八十餘
<肥後>
  永尾剱神社@宇城不知火(御祭神:綿津見大神/海童神神)
<筑前>
  和布刈神社@北九州門司速戸(御祭神:比賣大神+日子穗穗手見命+鵜草葺不合命+豐玉比賣命+安曇磯良)
  ○「風土記(逸文)」うちあげの濱: 此の舟の往かざることは、海神の心なり。
<筑後>
  風浪宮@葦原ノ津(大川酒見)(御祭神:少童命三座[神功皇后創建])…安曇磯良
<対馬>
  浜殿神社@対馬豊玉仁位(御祭神:綿津見大神/豊玉彦尊)
  和多都美神社@豊玉仁位和宮(御祭神:彦火火出見尊+豊玉姫命)
  和多都美神社@厳原久和東浜(御祭神:玉依姫命+豊玉姫命)
<壱岐>
  神社@石田筒城西触(御祭神:豊玉彦命)
  和多津美神社@郷ノ浦渡良浦小崎(御祭神:和多津美命)
<石見>
  水上神社@大田温泉津(御祭神:上津綿津美神 上筒男神)
<隠岐>
  神社@西ノ島別府
<出雲>
  和奈佐神社@松江宍道上来待和奈佐山…阿波海部氏
  船林神社@和奈佐神社南の船岡…阿波海部氏
  ○「風土記」意宇郡安来郷: 海若等、大神之和魂者静而
<伯耆>會見郡安曇郷
<但馬>
  神社@豊岡小島海ノ宮城崎(御祭神:大綿津見命)
<丹後>
  (元伊勢)籠神社@丹後宮津大垣…神職:海部氏

黒潮系
<掖玖島/屋久島>…九州最高峰[1936m]
  ⛩益救神社@宮之浦(御祭神:山幸彦)
<薩摩>
  ⛩和田都美神社(⇒枚聞神杜)@指宿(旧御祭神:開聞岳神)
<大隅>
  ⛩御崎神社@佐多岬(御祭神伊邪那岐命+伊邪那美命+綿津見三神+住吉三神)
<日向>
  ⛩青島神社@宮崎(御祭神:山幸彦)
<土佐>
  ○「風土記(逸文)」玉嶋: 是海神所賜白真珠也
  海津見神社/竜王宮@高知瀬戸城山(御祭神:大綿津見神)
<伊勢>
  綿積神社@松坂
  八代神社@鳥羽神島(伊良湖水道)(御祭神:綿津見命)
<尾張>
  綿神社(旧 八幡社)@名古屋北元志賀
<三河>
  綿積神社@岡崎柱(矢作川)…伊勢部/磯部
<下総>
  渡海神社@銚子高神西(外川浦日和山)(御祭神:綿津見大神+猿田彦命)

上記の"綿津見神"(海[ワタ]ッ靈[ミ]之神)の存在を眺めて、成程感が得られるか否かはセンスの問題。
常識にとらわれていると、読み取れることは極めて少ないし、そもそも、こんな情報からいい加減な推定をしても意味なしと考えて終わってしまうだろう。
一方、せっかく調べてゴミにするのも腹立たしいと思うと、いい加減な母集団設定であるにもかかららず、恣意的に整理することで、なんらかの結論を生み出して、満足することになる。
ボゥ〜と眺め、直観に頼るのが一番。そうすれば太安万侶史観が見えて来る。

尚、上記に登場してくる住吉3神と、3貴神登場後に登場する宗像3女神については、海神として、一樗にするとゴタゴタになるので別途とりあげることにした。

と言うことで、・・・

"国生み"で九州は四面と記載されているが、その意味がここから見えてくる。
例えば、概念的には、以下のような勢力範囲を設定できるということ。
海の神は同根ではあるものの、4系列あるということ。話が余りに長くなったので説明は省くが。
筑紫ノ國+壱岐+対馬…朝鮮半島〜日本海
肥ノ國+五島列島+男女諸島…対馬海流上流域(⇒九州山越え東岸)
豐國+瀬戸海諸島
熊曾ノ國+南島…黒潮本流域
ただ、例外が1つある。大陸北岸寒流の末端(朝鮮半島北東域)からの乱流で日本海に入ってくる民もいた筈だから。普通は無視されるが。
隠岐

  ─概念的海図─
□□■■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□
□□■■■■■■□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■■■
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■■■■
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■■■■■
□□■■□□□□□□□□□□□□□■■■■■■■
□□□□□□□□□□□□□□■■■■■■□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□■■■■□□□□□
□□□□□□□□□■■■□□□□□■■■□□■■
□□□□□□□□□□□□□■■■■■■■■
□□□□□□□□□□□□□□■■■■■□□■■■
□□□□□□□□□□□□□□■■■■■□□□■■
□□□□□□□□□□□□□□□■■■■■□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□■■■■■□□□□□
□□□□□□□□□□□□□■■■■■□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□■■■■■□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□■■■■□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
  朝鮮半島 済州島 四国 本州 隠岐

 (C) 2021 RandDManagement.com  →HOME