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■■■ 「古事記」解釈 [2022.6.21] ■■■
[536]奴=野について
音素文字として使われている<奴[=㚢]>について。
  📖"阿〜和"全87音素設定
  (又:奴の旁)(〃) [萬]「古事記」 @呉音
解説によれば、<ヌ>に当る音が中国語になかったので<奴>が選定されたそうだ。わざわざ、賤称の文字を使う理由がどこにあるのかはなはだ納得し難いので、全く調べていない。大陸古代、<奴>は<ナ>と読まれていたとの説でもあるのだろうか。
<ノ[甲]>とも読まれているので、音の流れで、そう見なしているのかも。
(「古事記」<ノ>:[乙類]乃、能、之 [甲類]野、怒、、努、濃…非格助詞)
📖[安万侶文法]現代"の"文法との繋がり 📖[安万侶文法]助詞<の>は乃でもよいのか

・・・ここらはゴタゴタするのは致し方ない。本居宣長が、それまで<ノ>と読んでいた箇所の<奴>は<ヌ>であると一喝したため、皆、それに従った表記方法を遵守するようになったのだから。現代に入り、甲類・乙類についての知見が深まり、それが変わった来た訳である。

部外者からすれば、ここらは単純な話。・・・
<奴><努><怒>は呉音<ヌ>として読まれている以上、当時の漢語では、すべて同じ発音だったと考えるのが自然だからだ。つまり、これらの発音が<ナ>だったとは思えないと云うこと。この3文字は同系なので発音は同じだが、大陸では声調の違いで区別されていたことになろう。
一方、<ノ>という音だが、ベトナム語に残存しているようだから、一時的であるものの、唐音だったことがあると考えたらよいではないか。(朝鮮語は参考にならない。古代情報ゼロの上、系統が異なる複数あった半島言語関係が皆目わからずだからだ。しかも、王朝革命万歳風土であり、日本語と違って、後世言語と古代語に一貫性ありと見なせる根拠も極めて薄弱。)

≪奴[女+又(=手)]
  [意味]奴(男子)婢(女子)罪隷…e.g. 貴至封侯 賤至奴僕[「論衡」幸偶]
  [呉音]
  [漢音]
  [訓]やっこ/やつ め
["=野"用例]
  [歌75]加良奴袁[枯野を]
≪努[力+奴]
  [意味]力を入れて仕事につとめる。
  [呉音]
  [漢音]
  [訓]つと-める はげ-む
["=野"用例]
  於 河内之美努村 見得其人貢進
  [「萬葉集」巻十四#3404]可美都氣努[上つ毛野]
≪怒[心+奴]
  [意味]心に込めていかる。
  [呉音]
  [漢音]
  [訓]いか-る おこ-る
["=野"用例]
  [歌2]佐怒都登理[狭野つ鳥]
  [歌16]多加佐士怒袁[高佐士野を]
  [歌25]佐賀牟能袁怒迩[相武の小沼(野)に]
  [歌42]加豆怒袁美礼婆[葛野を見れば]
  [歌44]怒毘流都美迩[野蒜摘みに]
  [歌76]多遅比怒迩[丹比野に]
  [歌97]美延斯怒能[三吉野(みえしの)の]

「古事記」で使われていない<奴>構成文字
−−【ヌ音】−−
≪駑[馬+奴]
  [意味]足の遅い馬
  [呉音]
  [漢音]
  [訓]おそ-い おと-る
≪鴑[鳥+奴] ≪𨾯[隹 隹+奴]
  [呉音]
  [漢音]
≪𧉭[虫+奴]
  [呉音]
  [漢音]
≪胬[肉+奴] [音]ヌ
≪弩[弓+奴]
  [意味]力を入れて引く強い弓。
  [呉音]ヌ ノ
  [漢音]
  [訓]おおゆみ いしゆみ
≪砮[石+奴]
  [呉音]
  [漢音]
  [訓]やじり
≪孥[子+奴]
  [意味]幼い奴隷。
  [呉音]ヌ ノ
  [漢音]
  [訓]つまこ
 ≪伮[人+奴]
  [呉音]n.a.
  [音]
  [訓]つとめる
≪帑[巾+奴]
  [意味]幼い奴隷/孥の代替布。
  [呉音]ヌ トウ
  [漢音]ド トウ
  [訓]かねぐら
≪笯[竹+奴]
  [呉音]ヌ ナ
  [漢音]ド ダ
  [訓]とりかご
≪詉[言+奴]
  [呉音]ヌ ナ
  [漢音]ド ダ
  [訓]かまびす-しい わるくいう
≪𥅄[目+奴] [音]ヌ

−−【ニョウ音】−−
≪呶[口+奴] =詉
   [意味]力を入れ大声を出す。
   [呉音]ニョウ
   [漢音]ドウ
   [慣用音]
   [訓]かまびす-しい
≪怓[忄+奴]
   [呉音]ニョウ
   [漢音]ドウ
   [訓]みだれる

−−【ナ音】−−
≪拏[手+奴] =拿
  [意味]手に力を入れ引く。
  [呉音]
  [漢音]
  [訓]つか-む、ひ-く
≪𧘽[衣+奴] [音]ナ
≪䋈[糸+奴] [音]ナ =茹
≪𨥬[金+奴] [音]ナ

−−【出自不詳】−−
≪𪗭[歯+奴]
≪𪏷[黍+奴]

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