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■■■ 「古事記」解釈 [2022.4.3] ■■■
[457][安万侶文法]現代"の"文法との繋がり
助詞<の>を≪乃≫≪能≫≪之≫と眺めて行こうと軽く考えていたが、そうは簡単な訳にはいかないことに気付かされた。
はてさて、どうするか。・・・時間だけが過ぎていく。

無い知恵は絞りようがなく、時々、思い出しては考えてみたところで意味は薄そうだ。さりとて、無方針で分析整理したところで何も見えてきそうにないし。と言って、放りっぱなしは精神衛生上よくない。
そこで、行き当たりばったり流で現代文法を考えながら眺めてみることにした。

ただ、誤解してもらってはこまるが、連体修飾助詞<の>文法を調べて素人の視点から云々する気は全く無い。簡単な解説しか目を通していないが、分析主義的な緻密性を志向するまとめ方が主流に映ったからである。興味の対象は、あくまでも、どうしてこうなるのかであって、現状はこうなっていますではないので、調べようとの気力がさっぱりわかない。

しかし、考えてみれば、それも無理は無い。
助詞<の>の用法は、呆れかえるほど広範囲に渡っており、尋常な対処方法では無理がありすぎる。
思いつきで、書いてみればその困難さはすぐにわかる。極く普通に誰でもが使う言葉がこの調子であり、ママ整理すれば、10種以上併存になりかねず、それでなんなの、で終わってしまう。・・・
 私のPC WindowsのPC 自宅のPC 彼の会社 PCの評判 PCの進歩
 書類の大きさ 書類の紛失 書類の袋 税金の書類 税金の重さ
 雪の朝 雪の肌 雪の思い出 雪の被害 雪の対策 雪の予報

文句は大いに似ているが、その意味するところはえらく異なる。しかし、意味は瞬時に伝わる優れた表現方法である。"△△の○○"の両者の概念の違いを、一瞬にして読み取る能力が要求される言語ということになろう。
従って、このような用例を網羅的に集めて分類するのは並大抵のことではなかろう。

それに、果たして一意的に分類可能なのかも、疑問符が付く。"○○の△△"を、悪戯に、"△△の○○"と書いても、成り立つからだ。しかも、理論的に成立するというレベルではなく、実際にどちらも使うことが多い言葉なのだから。・・・
  朝食のパン ⇔ パンの朝食
  東京の港区 ⇔ 港区の東京
  木の椅子  ⇔ 椅子の木


さらに、すでに書いたように、複文化していると見なせば、主語や目的語を示す助詞と見なすこともできたりする。上述例にもあるが、"が"や"を"の代替と見なすことも可能なのである。

驚いたことに、日本語では避ける、後置修飾言語の真似さえできる。
  前置修飾(赤い花) ⇔ 後置修飾(花の赤いの)

まさに、こりゃナンだかね、の世界。

しかし、そう考えてしまうのは、"世界標準"の”文構造ありき”文法に合わせるから、と云えないこともない。現代日本語文法は、SVОCの世界標準の概念にできる限り合わせて解釈することになっているようで、その発想で精緻な文法を組み立て上げれば上げるほど、ほころびは避けられなくなっていく。「"パンの朝食"が好き。」は話語ではほぼ完成形の文章と見るべきで、主語を省略した訳ではないし、複文になっているのでもない。文字あり言語とは、根本的に異なるルールが存在していると考えるべきだろう。
そうそう、"ほぼ完成形"としたが、それは文末に不足部分があるから。語気詞として、例えば、「パンの朝食が好きなの。」とすれば完璧である。しかし、文学作品化する場合は別だが、この話語を文字でママ記録しようと考える人はいまい。

太安万侶は文字記録化にあたって、ここらで悩んだに違いないが、吹っ切れたのであろう。
そうだとすれば、現代の<の>文法の元祖的記載が「古事記」にあってしかるべし、となる。

但し、それは、難しい文法が「古事記」から見えてくるとか、分析・整理すれば<の>文法を樹立できる可能性が高い、と考えている訳ではない。
素人からすれば、<の>文法とは、日常会話感覚そのものであり、「古事記」にもその息吹を見てとれるのではなかろうか、と云うこと。

その日常会話感覚とは、"の"の前方語彙と後方語彙を耳にしたら、どのように修飾しているのか、意味を推し量ることができるというだけのこと。会話の流れのなかで、"○○の△△"の意味を判定するにすぎず、10通りのパターンどころか、100通りになっても一向にかまわないのである。
前方語彙のカテゴリーと、後方語彙のカテゴリーを瞬時に判定し、話の筋からすれば両者はどのような関係にあるかを推定し、そこから、どのように修飾しているかを読み取ることになる。
重要なのはカテゴリー観であり、相対して会話するには、あらかじめ共有していないと理解は難しい。と云うか、相対でコミュニケーションを図る話言葉言語とは、そういうモノと違うか。

しかし、なんでもかんでも"○○の△△"と云うだけで相互理解可能な筈がなく、お気軽に使える修飾語・被修飾語が社会的に決まっている定番がある筈だ。そして、いかにもそれから逸脱してそうに映る用法が並列して存在することになる。口頭で読めば、アレ、これは普段と違うと感じさせればよいのである。その意味は、自由自在だが、すぐに想定可能な範囲内に限られる。

・・・どうかな、この考え方。

そんなことを思ったのは、冒頭の用例は、漢文@序文と同じだが、すぐにとんでもなく長たらしい装飾の用法が続けて登場するからだ。どう見ても、"○○の△△"の用法に従って記載しているような文では無い。"〜の△△"とよく使う形で表記しただけで、"の"の文法規則に則って書いているようには思えない。口頭なら、いかにもありそうな文体では。・・・
   如葦牙因萌騰
【国生みの之】
   修理固成是多陀用幣流
   自其矛末垂落
   天之御柱 天神之御所 天神之命
 (各言竟之後 不入子之例 今吾所生之子不良)
 (詔之)
淡道狭別嶋
伊豫
二名嶋
隱伎
三子嶋 …[再掲]天之忍許呂別
   [再掲]天之狹手依比賣 天之忍男
 (還坐之時)
この記述も合点がいかない。伊予の松山という記載が普通だが、伊豫の別名が二名嶋ではないかとおもわれるからだ。と云うか、伊予を知っているから、自動的にそう考えてしまう。これこそが<の>文法。
もちろん定番は、後者が前者の一部。知らぬ人無しであろう。・・・
【各国地名】
出雲國伊賦夜坂 出雲國肥河上在鳥髮地 出雲國多藝志小濱
伯岐國
手間山本
木國
大屋毘古神之御所
淡海國
日枝山
科野國
州羽海
紀國
竈山
山代大國

山代國
相樂
河内國
志幾
筑紫國
伊斗村

序文の漢文からすると、肝となる定番表現は地名ではなく時間軸かも。・・・
構造文で文法を考えると、どうしても、"〜の物、〜の國、〜の鹽"は用法が全く違ってしまう。これを突き詰めていくとどうにもならなくなってしまう。しかし、素人からすれば、上記の"〜の△△"を含め、実は、皆同じ用法となる。・・・
そんなことができるのは、定番が絞られているからだろう。ここから外れると気付けば、頭がそのつもりで回転し始めるだけ。定番はことの他、重要なのである。
【◇◇之時/間】
天地初發之時 "久羅下那州多陀用幣琉"之時 然後還坐之時 出向之時 燭一火入見之時 逃還之時 遣人之時 度事戶之時 所到其穢繁國之時 令織神御衣之時 示奉天照大御神之時 臨坐之時 天照大御神出坐之時 如此設備待之時 大神初作須賀宮之時 列伏之時 持其矢以奉之時 逃出之時 追避其八十神之時 將婚高志國之沼河比賣幸行之時 忿而飛去之時 問天尾羽張神之時 問賜之時 獻天御饗之時 將天降之時 其沈居底之時 問言汝者天神御子仕奉耶之時 嶋之速贄獻之時 乞遣其父大山津見神之時 今各謂返"佐知"之時 泣患居海邊之時 持玉器將酌水之時 奉火遠理命之時 其和邇將返之時 將攻之時 如此令惚苦之時 將方產之時 到豐國宇沙之時 從其國上幸之時 從其之時 是與登美毘古戰之時 廻幸之時 到熊野村之時 之時 受取其横刀之時 追入之時 到忍坂大室之時 然後將撃登美毘古之時 又撃兄師木弟師木之時 爲大便之時 詔其伊須氣余理比賣之時 參入宮内之時 娶其嫡后伊須氣余理比賣之時 驚乃爲將殺當藝志美美之時 將殺之時 此王之時 求謂意富多多泥古人之時 夜半之時 罷往於高志國之時 以沙本毘賣爲后之時 興軍撃沙本毘古王之時 取其御子之時 今當火燒稻城之時 御寢之時 將遣之時 如此詔之時 出行之時 還上之時 將獻大御食之時 到弟國之時 其大后比婆須比賣命之時 朝署入廁之時 當此之時 以劔自其胸刺通之時 各拔其刀之時 之時 受命之時 思還上之時 到相武國之時 渡走水海之時 出甲斐坐酒折宮之時 於是獻大御食之時 騰其山之時 到玉倉部之清泉以息坐之時 到當藝野上之時 先御食之時 到三重村之時 到能煩野之時 又飛居其磯之時 平國廻行之時 將撃熊曾國之時 度幸之時 御食其河邊之時 四月上旬之時 倭還上之時 如此上幸之時 興軍待向之時 到山代之時 經歴淡海及若狹國之時 幸行于濱之時 一時天皇越幸近淡海國之時 到坐木幡村之時 吾明日還幸之時 獻大御饗之時 喚上之時 獻其大御酒之時 獻大贄之時 時渡河之時 渡到河中之時 掛出其骨之時 將來之時 愁白其母之時 幸行之時 天皇上幸之時 還幸之時 是口子臣白此御歌之時 太后問其所由之時 到來之時 將爲豐樂之時 幸行日女嶋之時 本坐難波宮之時 爲豐明之時 到幸大坂山口之時 上幸於倭之時 共飮之時 初爲將所知天津日繼之時 將流之時 追到之時 成人之時 未日出之時 食御粮之時 坐日下之時 令燒其家之時 還上坐於宮之時 到於美和河之時 幸行吉野宮之時 後更亦幸行吉野之時 御猟之時 射其猪之時 登幸葛城山之時 幸行于春日之時 將斬之時 獻大御酒之時 如此相讓之時 乞其歌末之時 明旦之時 欲召其老媼之時 
---
還入其殿内之間 是摭食之間 是拔食之間 如此言之間 於是不知所出之間 落隱入之間 然解結椽髮之間 如此白之間 僕者將降裝束之間 吾掌水故三年之間 之間 共婚供住之間 共住之間 如此逗留之間 將來之間 返參上來之間 其政未竟之間 各讓天下之間 弟辭令貢於兄相讓之間 此人營田於山谷之間 將到難波之間 一宿之間 八年之間 幸行木國之間 未即位之間 倏忽之間 望命之間 將治天下之間 
---
【此([10 12 14 15 16]天皇)之御世】

もう一つの定番は、神や人の名称での用例だが、之を記載しないことも多いことからすると、省略しているのではなく使わない場合もあるのでは。天皇名には使わないことでわかるが、"○○の△△"はカテゴリーが自明であるから使うのであって、そのような気分で話していないなら之を使うことは無かろう。たとえ無くても、通じるからである。
これを考えると、意味上、之=津ではないことがわかる。(後述)
つまり、太安万侶は、世俗的には太之安万侶という表記が正統だが、知識人としての自負があればあくまでも之無しの太安万侶ということになろう。

もう一つ、当然の如くに使われる用法がある
【○○之妹 ○○之弟 ○○之子/御子 ○○之女 ○○之兄 ○○之祖】
しかし、「古事記」での、神名での定番はこれだろう。・・・
【天之】
天之御中主
天之常[登許]立
天之御柱
天之忍"許呂"
天之狹手依比賣
天之
天之
天之水分
天之"久比奢母智"
天之狹土[豆知]
天之狹霧
天之闇戸
天之尾羽張
天之眞名井
正勝吾勝勝速日
天之忍穗耳
天之菩卑能/葦原中國天菩比
   天香山天之"波波迦"
   天香山
天之日影
天之眞拆
天之石屋戶伏"汙氣"
天之"都度閇知泥"
天之冬衣
天之甕主
天之羅摩船
天之"麻迦古"弓
天之"波波"矢
天之波士弓
天之加久矢
天之御巢
天之御舍
天之新巢之凝烟[州須]
天之眞魚咋
天之八衢
天之石位
天之八重"多那"雲
天之石靫
天之眞鹿兒矢
天之御影
天之八十毘羅訶
天之日矛
【天神之】
天神之御所
天神之詔命/天神之
天神之御子
【五柱神者別天神の之】
   [再掲]天之御中主神
(宇麻志阿斯訶備比古遲神)=<如葦牙因萌騰
物>成神
   [再掲]天之常[登許]立神

【天安の之】
天安河原
天安河河上天堅石
天安河河上天石屋
天安河
【天香山之】
天香山之眞男鹿之肩拔
天香山之天之"波波迦
天香山之五百津眞賢木
天香山之天之日影
天香山之小竹葉
【國之】
國之常[登許]立
國之水分
國之"久比奢母智"
國之狹土[豆知]
國之狹霧
國之闇戸
國之人草
【神の之】
風[加邪]木
夜藝速男/火R毘古/火"迦具"土
石筒
建御雷之
底筒男命 中筒男命 上筒男命 墨江三前大神
建速"須佐"
猿田毘古
美和大物主
意富美和大神
伊豆志八前大神
葛城一言主大神
石楠船
長乳齒
飽咋"宇斯能"
科野
熊野山

【命/人の之】
  [再掲]天之菩卑能命/葦原中國之天菩比神
上宮厩戸豊聰耳命
熊野
高倉下
沙本
大闇見戸売
春日
千千速真若比売 春日日爪臣 春日袁杼比売
志幾
大県主
葛城
曽都毘古 葛城高千那毘売 葛城高額比売命 葛城垂見宿祢 葛城野伊呂売宗賀稲目宿祢大臣 宗賀倉王
十市
入日売命
忍坂
大中津比売命
川内
若子比売
伊勢
佐那造 伊勢品遅部君 伊勢
伊勢國
三重婇
吉野
国主
吉備
兄日子王 吉備石无別
荒田郎女 木菟野郎女
木國
酒部阿比古
山代
猪甘 山代荏名津比売 山代大筒木真若王 山代玖玖麻毛理比売
尾張國
三野別
三川
衣君 三川穂別
三野國
本巣國造
三野
稲置
若狭
耳別
小國
國造
近淡海
安直 近淡海安國造
高志國
沼河比賣 高志利波臣
多遅麻
竹別 多遅摩俣尾
丹波
河上摩須郎女 丹波竹野別 丹波遠津臣
針間
伊那毘能大郎女
旦波
大県主
筑紫
米多君
豊國
國前臣
日向
泉長比賣 日向美波迦斯毘売 日向美波迦斯毘売

宮名は面白い。基本、"○○の△△宮"だと思うが、徹底している訳ではない。訓読みなら、"△△の宮"と読みたくなるが、之を入れていないから、そのように言われていなかったのかも。・・・
【宮/御陵の之】
__岡本宮(舒明天皇)
__小治田宮豊御食炊屋比売命(推古天皇)…大野岡上⇒河内 科長大陵
倉橋_柴垣宮長谷部若雀命(崇峻天皇)…倉椅岡上陵
__池邊宮橘豊日命(用明天皇)…石寸掖上⇒科長中陵
__他田宮沼名倉太玉敷命(敏達天皇)…川内_科長陵
師木島_大宮天国押波流岐広庭天皇(欽明天皇)…−
檜垧(之)廬入野建小広国押楯命(宣化天皇)…−
(之)金箸広国押建金目命(安閑天皇)…河内古市高屋村陵
伊波禮(之)玉穂哀本杼命(継体天皇)…三島
長谷列木小長谷若雀命(武烈天皇)…片岡石坏
石上_廣高宮意祁命(仁賢天皇)…−
近飛鳥__宮袁祁王之石巣別命(顕宗天皇)…片岡石坏岡上陵
伊波禮(之)甕栗 & 忍海(之)高木角刺白髪大倭根子命(清寧天皇)…−
長谷_朝倉宮大長谷若健命(雄略天皇)…河内多治比高鸇陵
石上(之)穴穂穴穂御子(安康天皇)…菅原伏見岡陵
遠飛鳥__宮男淺津間若子宿禰命(允恭天皇)…河内惠賀長枝
多治比(之)柴垣水歯別命(反正天皇)…毛受野陵
伊波禮(之)若櫻伊邪本和氣命(履中天皇)…毛受(百舌鳥)陵
難波高津大雀命(仁徳天皇)…毛受耳原陵
軽嶋(之)品陀和気命/大鞆和気命(応神天皇)…川内恵賀裳伏岡
__息長帯比売命/大帯比売命(神功皇后)…沙紀_盾列池上陵
穴門豊浦宮 & 筑紫(之)訶志比帯中津日子天皇(仲哀天皇)…河内惠賀長江
近淡海志賀_高穴穂若帶日子天皇(成務天皇)…沙紀多他那美
__倭建命…能褒野陵
纒向日代大帶日子淤斯呂和気天皇(景行天皇)…山邊道上
_出雲石𥑎之曾
_檳榔長穂
磯城玉垣伊久米伊理毘古伊佐知命(垂仁天皇)…菅原御立野中
師木_水垣宮御真木入日子印恵命(崇神天皇)…山邊道勾岡上
春日伊邪河若倭根子日子大毘毘命(開化天皇)…伊邪河坂上
堺原大倭根子日子国玖琉命(孝元天皇)…橿原_剣池中岡上
黒田_廬戸宮大倭根子日子賦斗邇命(孝霊天皇)…片岡馬坂上陵
葛城室秋津嶋大倭帯日子国押人命(孝安天皇)…御所_玉手岡上陵
葛城_掖上宮御真津日子訶恵志泥命(孝昭天皇)…御所_掖上博多山上陵
境岡大倭日子鉏友命(懿徳天皇)…橿原_畝火山真名子谷上
片塩_浮穴師木津日子玉手見命(安寧天皇)…橿原_畝火山美富登
葛城_高岡神沼河耳命(綏靖天皇)…橿原_衝田岡陵
畝火(之)白檮原神倭伊波礼毘古命(神武天皇)…畝火山北方白檮尾上
吉備高嶋
阿岐国多祁理
竺紫岡田
○檳榔長穂 ○道御井 ○鳥取河上
 (胸形奧津 胸形中津 胸形邊津)

辞書によれば、格助詞/連体助詞<の>に匹敵するのが、<つ><が><な>であるが、現代語ではほとんど淘汰されたと云う。

-----<な>-----
<の>の母音交代("〜ma/mi-no"⇒"〜-na")らしいから、文字表記は"之"のままで音便的読みが存在していたということだろうか。現代用語にいくつか残渣的に見かけるとされている。・・・
  眼(な)子 水な戸(湊) 水な(無)月 神な(無)
"海な原"も、"〜mi-no"⇒"〜-na"ということになる。

-----<が>-----
"わが子"で御馴染み。助詞として主格を示していることが多いから、特別に自分自身の情感を込めて表記していそう。"○○之子/御子"は、客観的表現であり、それを主観的表現にしていることになろう。従って、之とは異なる用法と云えそう。
我でなくても、同様な用法はありえそう。
[__3]【沼河日売】未開戸(婚姻拒絶)
    八千矛の 神の命 萎草の 女にしあれば
    吾が心[和何許許呂] 浦洲の鳥ぞ 今こそば 吾鳥にあらめ

[_19]【大久米命】回答
    乙女に 直に逢はむと
    吾が黥ける利目[和加佐祁流斗米]


-----<つ>-----
≪津[氵/水+聿]=𦪉≫
  [音]シン
  [訓]つ (ち と ず)
 【原意】渡口/渡水的處⇒滋潤
これは之とは発祥が異なる文字であり、太安万侶が原意を知らないわけがなく、そのつもりで使用していると考えるべきだろう。
【天津】
天津日子根
鍛人
天津"麻羅"
天津國玉
  (
天津日繼)
天津日高日子番能邇邇藝/天津日子番能邇邇藝/天津日高日子穗穗手見
天津久米
天津日高日子波限建鵜葺草葺不合
天津
【神の津】
黃泉大神
綿 中綿 上綿
  [再掲]風[加邪]木津別之忍男神
天津神とされるのは、渡来神ということになろう。
海神名とはっきり記載されている、綿[ワタ](海)[][](霊)もそのような意味だろうし、"尾津の岬なる 一つ松[【地文】尾津前一松【歌】袁都能佐岐那流 比登都麻都(尾津の岬なる 一つ松)]"との表記も、"岬の尾"を意味しているのは自明だから、助詞は"能/の"だけでなく、"都/つ"も助詞風に映るようにしていそう。

そうそう、現代ではなるべく避ける<の>用法も見かける。
1つは、続けて使う書き方。・・・
  八尺勾五百津"御須麻流"珠/八尺勾璁五百津"御須麻流"
もう1つは、"前方語⊃後方語"の大原則的用法上、あまり好かれていない表現。これはかなり多用されている。・・・
  "前方語"之中"後方語"

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📖"わ"は和
📖矜持を示す音素文字
📖琉を愛好
📖ヲを"遠"表記にする理由
📖ヲは袁にしたかったか
📖仮名案出の端緒
📖"之"文法の入り口
📖助詞<の>は乃でもよいのか
📖"ア"と"あ"を規定
📖語気詞の扱い
📖特別感嘆詞"然者"
📖接続詞不要の社会
📖ゴチャゴチャ表記の理由
📖構造言語文法は不適
📖句間字と文末字の重要性
📖膠着語の本質
📖日本語文法の祖は太安万侶
🗣📖訓読みへの執着が示唆する日本語ルーツ
📖日本語文法書としての意義
📖倭語最初の文法が見てとれる
📖てにをは文法は太安万侶理論か
📖脱学校文法の勧め 📖「象の鼻は長い」(三上章) 📖動詞の活用パターンは2種類で十分 📖日本語に時制は無いのでは 📖日本語文法には西田哲学が不可欠かも 📖丸暗記用文法の役割は終わったのでは 📖ハワイ語はおそらく親類 📖素人実感に基づく言語の3分類 📖日本語文法入門書を初めて読んだ 📖書評: 「日本語と時間」 📖日本語への語順文法適用は無理を生じる

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