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■■■ 「古事記」解釈 [2023.5.17] ■■■
[693] 「古事記」仮名長短音 賣米
めme現代日本語でも、辞書に於ける<エ>列音の土着的用語に映る語彙は僅かで漢語が主体に見える。渡来音が多そうで、2種類あってもおかしくはなさそう。しかし、結局のところ1種類となったのは、<エ>列音は、語中や語尾で使われることが多いから面倒なことは止そうという姿勢に尽きるのでは。他の母音の蔭に隠れていそうなイメージが強い。
これと対照的なのが<ウ>列音。<ウ>の発声は、気にかければすぐにわかるように、いかにも自己主張が強そう。(・・・言い方が適当でないので、誤解を生じ易いが、uの如き、誤聴を防ぐための規則に縛られた様な唇の動きは絶対にしない。と言って、唇形状が似た音声とほぼ同一と見なすのもどうかと思う。素人からすれば、無理に舌の位置を動かすような筋肉活動をしないことが特徴だからだ。これぞ自然体の音たる<宇>との自負あり。)

そんな想いもあって、言葉創出神話を書いてみた。📖(宇列音)こんな変遷を意味している訳である。・・・
 ❶阿
  ❷宇
   ❸イ
    ❹オ ⇒ ❺オ+オ
     ❻(イ→)イ+イ
      ❼e+e

アハハに尽きるが、よくできた馬鹿話と自負しているので、少し付け加えておくことにした。

先ず、母音の祖語創出という雰囲気で書いているが、倭人にとっては、母音とわざわざ記載する必要は無い。倭語は"完璧な"母音語であり(子音は母音の装飾音として前置される音に過ぎない。)、それはおそらく雑種化を旨とする文明の基底となった話語の本質。
(<ギリシア>文明圏は文字化に当たっては子音語の性格を埋め込んだからである。母音語は表記せず封印し口頭伝承すべき大事な言葉だからで、<印度>文明圏は表記するものの、口頭伝承の神聖な言葉の揺らぎを極小化させるためのもので、子音の発音を固定化することに意味がある。<印度>文明圏に至っては、帝国化を文書管理で行ったため、強権的に音を"暗記"させるしかなく、母音子音などどうでもよく、ただただ400程度修得し、文字読みにはさらに付加的な発生技法が必要とされるただならぬもの。<倭>の言語文化はこの様な系譜には全く乗っからない。)
従って、倭語〜現代日本語の5母音を概念図にすればこうなる。・・・

________
__イ___宇___
_____|__オ
______|
______阿__オ
________

ということで、この<エ>列音を取り上げようと思うが、<けkeゲge祁氣下宜>📖(甲乙音)がすでに入っているので、<もmo毛母>(訓呉音)のお隣の<めme賣米>を取り上げよう。
本居宣長が甲乙音の"普遍的"存在を1例として指摘した有名な仮名文字である。
(冗談半分。…大御所の絶対的指示により、"普遍的"論では無いと見なすらしい。それが、部外者のインテリにはよく知られるている、という意味。)
ただ、そこらは、このぺージ末尾に、簡単に記載しておくに留めよう。

ここで、重要なのは、特別音"イ"⇒イ+イという分岐とは違って、"e"は口腔空間にはもともと無かった音で、落下傘的に生まれたと思える点。このことは、ともすれば"e"空間領域の2つの音は、標音文字のなかに属するとしがちだが、それは上記のシナリオを否定するようなもの。すると、倭語用概念図になってしまうが、"e"は甲乙2種あるが1種でもある、という恐ろしく矛盾した設定になってしまう。しかし、考えて見れば、そう映るのは、非倭語圏の発声分類でしか考えられないから。・・・
<e>とは、現代日本語の<エ>と似た音と考えればよいだろう。一方、<e>は、現代日本語では失われてはいるが表記すれば<エー>となる。両者は違う音だが、同じ音でもある。それだけのこと。
しかし、自分の発声を注意深く観察すれば、<エー>は<エエ>と伸ばすのは難しいことに気付かされる。倭語の開口音の代表たる<阿>の<アー>とは違う伸ばし方をしており、<イー>に似た伸ばし方をしているものの、<エ>と<イ>音の違いは保っている。そうなると、素人からすれば、実に単純な峻別であって、長音化し易い音が<e>ということになろう。

印欧語表現の二重母音(aiː uiː oiː)は倭語には存在しないから、渡来語のその様な音すべてを<e>にしている可能性もありそう。イを外来語対応として、甲乙に分岐させたが、そこに当て嵌まり難いこれらの音を一括したということでもあろう。
雑種言語の母音創出も流石にここで打ち止めとなる。以後、甲乙峻別はすぐに整理されてしまい、母音は5音に収斂していくことになる。

・・・いい加減な素人推定話であるが、ポイントは<ギリシア 印度 中原 倭>的見方にある。<倭>はあくまでも雑種文明の血を引いていると考えて眺めないと、何も見えてこないという点を強調しているだけ。

ついでだから、この長母音についても、現代日本語は<倭>的観念を未だに色濃く残していることを、記載しておこう。<ギリシア 印度 中原>文明からは、およそかけ離れているのはここからもわかる筈。・・・

現代日本語は母音の長短の違いで語彙の弁別を行っている。しかも、それを文字上で表記するルールがあり、独特な言語との印象を与える。(英語は長短母音峻別が崩壊した上に、長母音表記も行われていないし、アクセントで生まれる緊張音が長母音になるのでその存在を気にかけないせいもあり、どうしても差異が目立つ。)
しかし、それは印象と言うより、事実その通りと考えてよさそう。以下に示す、表記ルールを一瞥すると、いかにも雑多な方法論が埋め込まれており、これぞ雑炊言語の本領発揮としか言いようがあるまい。この様な言語が他に存在しているとは考えにくかろう。
もちろん、それを形作ったのは太安万侶である。・・・
文字重複:[母音]+母音
  @「古事記」:亜亜音引】志夜胡志夜
❷小書きの母音付け…長音を二語重複と誤認させない工夫か。
長音符(【音"引"】の旁)⇒ー@横書き片仮名
  外来語の片仮名@国際音声記号[ː] 英文語尾[-er -or -ar -y]
  平仮名の例外(擬音/擬態語 感動詞 語調強調用長呼 俗語風体表現)
❹二重母音的表示@平仮名(稀に片仮名)
  [-a]+あ
  [-i]+い
  [-u]+う
  [-e]+え (or い)
  [-o]+う (or お)
❺¯(macron)@ヘボン式 あるいは 稀に ^(circumflex)@訓令式
  ローマ字
❻h- あるいは h'
  ローマ字

・・・・・

(𠂇:女の初画変形)(〃) [萬]賣/売…賣/売【甲】 @呉音
賣/売 [呉音]メ [漢音]バイ [慣用音]マイ [訓]う-る
女 [呉音]ニョ [漢音]ヂョ [慣用音]ニョウ [訓]をんな をみな め むすめ
妻 [呉音]サイ [漢音]セイ [訓]つま め-あわせる
牝 [呉音]ビン [漢音]ヒン [訓]め めす めん
  1例のみ(牝馬壱疋)
陰 [@序-漢文]陰陽斯開
召 1例のみ(勿召上而)
喚 [呉音漢音]クヮン [訓]わめ-く よぶ  …【正訓】め-し
刀@1例のみ(娶当摩之灯)…【正音】メ

me [萬]…米【乙】 
米 [呉音]マイ [漢音]ベイ [訓]こめ めめ よね
目 [呉音]モク [漢音]ボク [訓]め ま
眼 1例のみ(恒令経長眼)

微 都麻碁微爾つまごめにmi [萬]…微【乙】 @呉音
  【速須佐之男命】作御歌の文字では、このルビだけ合わない。・・・
  _伊___
  __久__
  賀岐__碁
  ____曽
  _____
  多_都__
  __豆__
  _爾___
  ___弊_
  _____
  麻☆_★毛
  夜____
  __流__
  ____袁


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