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■■■ 「古事記」解釈 [2023.6.19] ■■■
[723] 前後括り引用好み
「・・・」<表記>について戯言を書いてみたが、続いて<発言>について。
この言い回しに用いる文字は広義で捉えればかなりのバラエティ。📖言,謂,曰,云,道,稱の峻別のはしり・・・
  詔白曰告問宜請奏答 言謂云 道稱

尚、実際の発話だけでなく、夢についても同様な取り扱いになる。(高倉下答曰己夢云  獻天神御子 故 如夢教  大物主大神顯於御夢曰  乃天皇驚起問其后曰吾見異夢・・・如此之夢  於是天皇患賜 而 御寢之時覺于御夢曰  伊奢沙和氣大神之命見於夜夢云)
もちろん、諺・歌でもこの文字を用いる。📖地文・歌に加え、諺の3本建て 📖[歌鑑賞]113首INDEX

滅多なことでは、古文など読まないので「古事記」の<発言>の文字化にははなはだひっかかるものがある。
引用する場合は、"「・・・」と言った。"という具合に、<と>と言う助詞を用いるのが普通だと思うが、その様な記述は避け(例外1件)、用法として目立つのは≪前後括り復唱的引用≫だからだ。・・・
㊤詔之…謂 告…告 白…云 告…登詔雖 云…云 詔之…告 語天若日子言…云進 詔者…云 云…云 大怒曰…云 詔之…詔 曰…今各謂返佐知之時 曰之…云  ㊥答曰…白 誂妄曰…云 曰…云 曰…云  ㊦令詔…云 白…白
【例外的用法:告「・・・」詔雖】

品詞が自明でない漢語にまともな文法はほとんど期待できないが、流石に、"○○云「・・・」云"という用法は避けるだろう。しかし、仏典であれば、釈尊の肉声を記載していることになり、説話は長いから、発言の始まりと終わりに引用であることがわかるように文字を置くことになる。太安万侶はその辺りを真似た可能性もあるが、考えてみれば、口誦叙事なのだから、引用に助詞を使わないのなら、こうした用法が古くから存在していてもそうおかしなことではない。

漢文を参考にしていないと見なすのは、≪"VО"V表記(謂其莵云 告其子言 etc.)がされているし、≪引用性強調辞≫として<〜之( or 者)>が用いられているからでもある。

この様な用法が生まれたのは、口誦叙事が<発言>でストーリーが展開していく構成になっていることを意味していよう。だからこそ、≪発言完了接続辞(爾 故 即 etc.)が矢鱈に目立つことになるのだと思う。

【付記】 現存する日本最古の物語とされる「竹取物語」(@平安前期)📖竹取物語を祖とする意味は歌物語ではなく、もっぱら他者の奇異な体験を散文で書き記している作品と言えるが、会話ストーリー構成ではないというに過ぎず、翁と姫の短い対話等々、会話は重要な一角を占めている。(引用表記法としては、"〜「・・・」と、〜"という形である。前述した様に「古事記」には、この<と>を欠く。)

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