表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.7.31 ■■■ 靈宝の旋風工部員外郎の張周封は怪奇物の話を収集する務めを命ぜられていたと思われる。中華帝国のインテリジェンス要員ということになろうか。 と言っても、表に出て活動する訳だし、様々な噂話が山のように報告されてきただろうから、事務処理的仕事も膨大だったと見てよいだろう。そこから取捨選択し、重要な情報をまとめるのだから、視野が広い成式にも、しばしば意見を聴いたに違いなかろう。 そのためか、「酉陽雑俎」には、張伝がいくつか収載されている。おそらく、議論が弾んだネタ。・・・ 蟲本草【蛺蝶】 長安の奇譚【城東】 食材本草【茄】 聖山【介山】 月の見方【八月十五夜】 ここでは、これらに加え、「卷十五 諾皋記下」の軍将話をとりあげておこう。・・・ 工部員外張周封言,今年春,拜掃假回,至湖城逆旅。 説去年秋有河北軍將過此,至郊外數里,忽有旋風如升器, 常起於馬前,軍將以鞭撃之轉大,遂旋馬首,鬣起如植。 軍將懼,下馬觀之,覺鬣長數尺,中有細綆如紅線焉。 時馬立嘶鳴,軍將怒,乃取佩刀拂之。風因散滅,馬亦死。 軍將割馬腹視之,腹中無傷,不知是何怪也。 その張が聞いてきたという話。 今年の春、祭掃墳墓のために休暇取得。 折角だからと、遠回りの旅程にして、湖城@河南靈宝に到着。 そこで聞いたという。 去年の秋のことだった。 河北の軍將がここを通過した時のこと。 郊外数里の地点で、 忽然と、漏斗のような形の旋風が発生した。 しかも、常に、馬の前で起きたのである。 軍将は鞭で打って撃退しようとしたのだが、 旋風は、さらに強烈に回転する始末。 ついには、馬の首で旋風ときた。 鬣は、植えてあるかのように、立ち上がった。 そこまでくると、流石に、軍將も懼れをなし、 下馬して状況を見詰めていた。 鬣は、ついには数尺の長さに達したのである。 軍將、その中に紅色の線のような細縄が有ることを発見。 時に、馬は棒立ちになり、嘶いた。 軍将は怒り、佩刀を取って払った。 すると、風は散り散りになって消滅。 しかし、馬も死んでしまったのである。 そこで、軍將は馬の腹を裂いてその中を視た。 腹の中には傷ひとつとしてなかった。 一体、これがどのような怪物なのか、知ることかなわず。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |