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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.12.1 ■■■

穗柏連句

【閑明坊東十一条光明寺】[續集卷五 寺塔記上][→]についての記載箇所は、紛れ込んだ文章とみなしたりする話はとりあげた。[→]
  上座公院。有穗柏一株。衢柯偃覆。下坐十余人。

しかし、それは関心が結構高かったお寺ということでもあろう。[→「消しさられた西明寺」]
  山庭院。古木崇阜。幽若山谷。當時輦土營之
もちろん連句も。・・・
  紅樓連句[→]

もう一つの連句もご紹介しておこう。・・・

穗柏連句:

冒頭の"下坐十余人"という巨木を題材にしようというのである。
(柏樹/枝垂糸杉/(Cupressus)の類に穗柏という名称は無い。)

一院暑難侵,莓苔可影深。

この寺院には、暑気も侵入してこない。
だからこその、"莓苔"がつくる深い影。

"莓苔"だが、以下に示すように詩の用語としてよく使われており、苔生す庭があったのである。
…龜龍(or 頭)落生莓苔。… [「襄陽歌」李白]
…更遊龍潭去,枕石拂莓苔。 [「過汪氏別業二首 其二」李白]
…興移無灑,隨意坐莓苔。 [「陪鄭廣文遊何將軍山林十首 其五」杜甫]
 松樹有死枝,塚上唯莓苔。… [「句」 靈K]
…巖寒松柏短,石古莓苔厚。… [「遊坊口懸泉偶題石上」白居易]

小生は単なる苔ではなく、異穗卷柏/姫鞍馬苔/(Spikemoss)ではないかとも思う。岩の上に生える小さなシダ植物の岩檜葉 or 岩松の仲間で、葉がヒバに似ている訳である。

標枝爭息鳥,余吹正開衿。(柯古)
木の上の方の枝には、
鳥達が止まっており、争って一息ついている。
その余った風が吹いてくるので、襟を開いて、まさしく、気分上々。

"上如標枝,民如野鹿。"[「莊子」天地篇]を踏まえているのだろう。(為政者は樹木の上の枝の如く勝手に伸びているだけで、民たる野生の鹿は、そんなことはおかまいなしに生活しているという状況。)

宿雨香添色,殘陽石在陰。

一晩宿った雨のお陰で、
香りが漂ってくる上に、青々した色が冴え渡る。
陽が残ってはいるが、石に影ありだ。


乘閑動詩思,助靜入禪心。
(善繼)
閑に乗じ、詩興の心が動き始める。
それが、静寂な雰囲気を盛り上げ、
禅の精神に没入していく。


廃仏の大騒動の跡がそこここに残る寺院での、青々した羊歯苔と石の情景に感極まった連句というところだろうか。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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