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2003.2.7 |
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科学研究費問題(4:異端排除)…科学研究費配賦の仕組みの不合理性はよく知られており、その状況を突破する方策として、新しい動きが始まった。しかし、テーマ採択の意思決定に係わる「権威者」が変わる訳ではない。その姿勢に変化がなければ、効果は限定的と言わざるを得まい。科学研究費の採択で力を持つ「権威者」の姿勢に問題があるのは、昔からよく知られている。特に、問題なのが、異質な研究排除型の方針と、実績なき革新的提案者に機会を与えない体質だ。 一般に、異質を排除すれば、イノベーションは起きにくなる。又、異端研究を許容しておかないと、インターネットの登場ではっきりしたように、流れが変わった時に全く対応できなくなる。 日本の「権威者」の行動は、こうした観点で見る限り、イノベーション風土の阻害要因と言えよう。 「新しい動き」とは、この阻害要因を取り除くものではない。主流派のキー研究者を選抜し、重点テーマ化することで、成果を出易くしたに過ぎない。選ばれた研究者は研究がし易くなるから、おそらく、短期的には上手くいっているように見えるだろう。しかし、長期的に見れば、イノベーション風土からさらに遠ざかる施策を展開しているともいえる。 従って、かなり問題を含む施策である。 例えば、学会間の融合的研究や、学会の隙間研究といったテーマで成果をあげることは、極めて難しい。技術融合テーマは典型だ。必ず個別学会の既存主流派が担当する。名目上は異質分野への学際型展開だが、実質上は既存分野が他分野の成果を取り入れる試みにすぎない。そのため、本当の融合は起こらず、革新技術は生まれにくい。 「権威者」の行動を変えるためには、先ずは、現行の科学技術の流れに対して、「アンチ」を唱える建設的な批判者を育てる必要があろう。主流派の問題点が指摘されれば、新しい技術の動きが見えてくる。 もちろん、批判者の存在だけでは、実行が伴わないから、異端的な研究者や、新進気鋭の研究者にも、チャンスを与える仕組みが必要となる。 こうした動きの第一歩は、テーマ採択における「公正さの担保」である。通常ほとんど開示されない、プロジェクト採択についての情報を公開すべきである。とりあえずは、テーマ審査員名簿公開、十分な数の審査員を任命するだけでもよい。これだけでも、変化が始まる。極めて小さな動きに見えるが、どのような視点でテーマを採択するか、プロセスが透明化し始める。「権威者」を裸にし、テーマ採択での力量が見えるようにすれば状況は変わる。もし、審査員の能力が低ければ、最先端で競争する研究者は改革に動くだろう。 現在の閉鎖的仕組みは、自律的改革抑制体制と考えた方がよい。 重要なのは、外からの仕組み改定ではない。内部からの自律的変革を促す施策である。 例えば、異端の存在を許す仕組みが重要といっても、外部がそのような仕組みを作ってもなかなか機能しない。自由な研究と多様性確保のために、研究者の終身雇用体制を維持すべき、との主張が蔓延しかねないからだ。これでは、イノベーション風土作りと逆行しかねない。 ・・・ 過去記載の ・「科学研究費問題(1:流用)」へ (20030204) ・「科学研究費問題(2:人件費)」へ (20030205) ・「科学研究費問題(3:新制度)」へ (20030206) 教育の危機の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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