表紙 目次 | ■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2015.7.15 ■■■ 印度瞑想樹 「六榕寺」の話[→]をしたついでにもう一つ。 新宿御苑に行かれたら、一度は必ず見ておくべき木々をご紹介しておこう。誰でも名前は知っていても、ほとんど見たことがないので。 もっとも、じっくり観賞してその珍しさを愛でようということでなく、日本文化とはこのようなものであることを実感するために。 御苑は広いが、この木々が存在するのは大温室だから迷うことはない。しかも、硝子製の大きな説明板があり、存在していることはすぐにわかる。 しかし、読んだからといって、すぐに対象の3本の木々が見つかるとは限らない。通路数mを行き来して、しばらく銘板を探すことになるかも。存在感があまりに薄いからだ。 おっと、樹木名を記載し忘れた。無憂樹、印度菩提樹、沙羅双樹である。それぞれ、釈尊の、誕生の時、悟りを開いた時、入滅の時を象徴する聖木とされているのはご存知の通り。 実物を見た瞬間、自分がどう感じるか。ココが肝。 単に、言語の響きというか、教え込まれた情緒が頭に叩き込まれていることがわかる筈である。はっきり言えば、感性が劣化していることに気付くということ。 と言っても、わからない人の方が多いかも知れぬ。 多分、知識としては知っているだろう。 例えば、沙羅双樹は日本では育たないから、「夏椿」を「シャラノキ」と称して植えるのが普通だと。 しかし、どこが似ているのかネ。小生にはさっぱりわからぬ。教えて欲しいものである。 菩提樹は更なり。もっとも葉だけが似ているとされるのだが。 温室のインドボダイジュの余りに貧相な様子を見れば状況は一目瞭然。はたして、花を咲かすことができるのか危ぶまれるようなお姿。日本では、たとえ温室でも、まともに育てるのは大変な仕事なのだ。だからこそ、全く異なる木を菩提樹とした訳である。もっとも中国の人々がそう呼んでいたとの言い訳があるのだが。 何故、言い訳などと言いがかりをつけるのだ、とお怒りになる方もおられるだろうが、それなら、何故に、本物を「本菩提樹」と命名しなかったのかネ。わざわざ「印度菩提樹」と言う理由はどこにあるのか。 すでに菩提樹という言葉に、仏の悟りと死後の冥福を意味する聖木としての情緒感を植えつけているから、それを傷つけたくないということでは。 まともに考えるなら、本物は「印度瞑想樹」と命名したいところ。印度は仏教国ではないのであり、仏教以前から、この木は聖木なのだから。その観点で考えれば、日本のボダイジュは聖木に値しない。 気候を考えれば当たり前の話。日本のボダイジュの下で瞑想する気になる訳がないからだ。冬はとても無理だが、夏の蒸し暑い状態でまともな木陰ができるのは楠くらいのもの。 そう言えば、おわかりになる方もおられよう。 「印度菩提樹」はとんでもない大木。その木陰で木の精霊を感じながら思索に耽ることこそ、質的に最高の宗教行為。それは、釈尊以前からのインド亜大陸の伝統宗教文化そのもの。 そして、釈尊は、そうしたイチジク系巨木の神聖性の本質を喝破したのである。 身分や貧富、土着民や旅行者、はたまた動物やヒトだろうが、すべての生きモノに分け隔てなく恵みを与える樹木だということを。 新宿御苑の貧相なインドボダイジュを眺めて、そんな感覚が湧いてくる筈がなかろう。 → 無花果の話[2008.7.29] → 白色乳液を出す聖なる樹木[2014.9.1] 尚、「印度瞑想樹」とする場合は、印度菩提樹よりは、「ベンガル菩提樹」の方が妥当だと思われる。 そちらは、ヒンズー教の聖樹の"banyan tree"だから。 しかしながら、同じイチジク系聖樹である「優曇華樹」は少々力不足。 イチジク系以外では、「無憂樹」や「ベル之木」(毘羅婆,ベンガル語:Bel)も巨木聖木だが、前者はなんとなく春めいた艶っぽさがありそうだし、後者も性的イメージが強そうなので瞑想の場には不向きだと思われる。 ---イチジクの仲間--- 【印度以西系】 ●印度(天竺)菩提樹/Sacred fig or Bodhi tree/菩提樹 or 思惟樹 ●ベンガル菩提樹 or バンヤン樹/Indian banyan tree or Bengal fig/孟加拉榕 [園芸品種] コップ菩提樹/Krishna's cup tree or Krishna Fig 〇ベンジャミン/Weeping fig/垂葉榕 〇印度護謨之木/Indian rubber plant/印度橡膠樹 〇柏葉護謨之木/Fiddle-leaved fig/琴葉榕 〇エジプト無花果/-/西克莫無花果 〇-/Moreton Bay fig/澳洲大葉菩提樹 【蔓性】 〇大崖石榴[オオイタビ]/薜茘・・・常緑性 愛玉子 or オーギョーチ@台湾&SP 〇薜茘葛[イタビカズラ] or 蔓無花果/珍珠蓮:日本変種か 〇姫崖石榴[ヒメイタビ] 【一般的なイチジクとイヌビワ】 ●無花果/common Fig/無花果 ●-/-/薛茘 ●-/-/象耳榕 ●-/Mistletoe fig/三角榕 ●犬(狗)枇杷/Japanese fig/矮小天仙果 or 假枇杷 毛犬枇杷 【高木】 ●房成無花果/Red river fig tree or Cluster fig ・・・[優曇華樹,倶那含牟尼仏 or 烏暫婆羅] 〇椋犬枇杷[ムクイヌビワ]/澀葉榕 〇細葉椋犬枇杷[ホソバムクイヌビワ]/菲律賓榕 〇紅頭犬枇杷[コウトウイヌビワ]/黄果豬母乳 〇浜犬枇杷[ハマイヌビワ]/白肉榕 〇大葉犬枇杷[オオバイヌビワ]/Hauli tree 〇宜蘭犬枇杷[ギランイヌビワ]/幹花榕 ・・・台湾の地名 【気根型巨樹】 ●赤榕[アコウ]/Japanese sea fig ・・・半常緑性 日本変種か ●大葉赤榕[オオバアコウ]/大葉雀榕 ●ガジュマル/Chinese banyan or Malayan Banyan/細葉榕,正榕 or 榕城 ●パラクシャ[毘陀羅]/Palaksa tree or Wavy-leaved fig/高山榕 or 大叶榕@海南島 ●菩提樹擬/Mock Bodhi tree/假菩提樹 ---科之木/椴系--- ●菩提樹/-/南京椴 ・・・落葉高木 中国原産 ●夏菩提樹,西洋菩提樹 or リンデンバウム/European linden/ェ叶椴 ・・・落葉高木 欧州原産 ●冬菩提樹/Small-leaved lime/小叶椴 ●西洋科之木/"common" lime ・・・シューベルトの歌曲の「菩提樹」 ●科之木/Japanese lime/華東椴 ---ホルトノキ(南蛮渡来の木)系--- ●数珠菩提樹 or 印度数珠の木/Blue fig or Blue marble tree/圓果杜英 「日本の樹木」出鱈目解説−INDEX >>> HOME>>> (C) 2014 RandDManagement.com |