→表紙 | 2013.7.4 | |
| 戦乱不可避の歴史を抱える国、シリア…シリアこそ、正真正銘のモザイク国家。それこそが歴史を物語る。そして、ここは欧州・アフリカ・アジアへの三叉地。当然ながら戦乱だらけ。それで国情の説明は十分といえるのかも。 試しに、イスム王朝史を眺めてピックアップしてみるとこんなところだろうか。・・・ ・アケメネス朝 ペルシア帝国 ・ギリシア王朝 (マケドニア アレキサンダー大王) ・ローマ帝国 ・ビザンチン帝国 ・サラセン帝国 -ウマイア朝[首都:シリア] -アッバース朝 -ファティマ朝 ・セルジューク朝トルコ帝国 ・十字軍 ・イスラム アイユーブ朝 ・イスラム マムルーク朝 ・モンゴル帝国地方政権 イル汗国 ・ティムール帝国 ・オスマン・トルコ ・フランス占領 ・シリア・エジプト合邦国家 ・シリア・アラブ共和国 当然ながら、少数派にはことかかない。イスラム教徒は分派毎に固まって住む傾向が極めて強いため、文字通りのモザイク模様となる。 ・イスラム教アラウィー派[北西部] ・イスラム教ドゥルーズ派[西南部、レバノン南部] (名目的には上記2派はシーア派分派) ・イスラム教シーア派(十二イマーム派主体) ・イスラム教スンニ系の諸派 -住人・・・大半の人口 -短期滞在者[アルカイダ等の無国籍的原理主義者] ・カソリック系 -ギリシャ派 -シリア派 -ローマ教皇系 ・東方正教会系 -ギリシア正教 -マロン派 -ネストリウス派 ・シリア正教会 ・ユダヤ人 ・隣国系 -クルド族 -アルメニア族 -トルコ族 ・遊牧民のベドウィン ・低地農耕民のファッラーヒーン おそらく、アサド政権を倒すべきと考えているのは、欧米と、サウジアラビア・カタールを中心とするアラブのスンニ派産油国。 後者は政権打倒のためならなんでもありの姿勢。イラン-イラク-シリアのシ−ア派勢力が強固な同盟を結んでしまえば、三分の一がシーア派住民と言われるレバノンをも手中に収める可能性が高い。こうなると中東の生命線をほぼ支配されてしまうことになる。これだけは絶対阻止となる訳だ。その結果、アルカイダを含むイスラム原理主義の無国籍的な武装勢力が反アサド戦線の中心と化している。厄介者が国内から出ていってくれて産油国は嬉しいが、戦乱が収まれば彼らは新たな紛争地域に出向くか欧米でのテロを画策することになるのは自明。 そんなことにでもなったらたまらぬが、オバマ政権はその辺りに関しては放任。実態を知り尽くした訳でもなかろうに。アフガニスタンでのタリバンとの交渉再開条件でも、アルカイダ排除を下ろしたようだし。一体どういうつもりなのか理解に苦しむ。毒には毒ということで、独裁国での反政府活動だけ活用しようというのは理屈でしか成り立たたないと思うが。 一方、イラン制裁を推進中の欧米は、シリア-イラン枢軸許さずということになる。欧州としては、原油積み出しルート等、ここら辺りは権益にかかわるので親欧州政権を樹立したいだろう。 特段の利益も無い米国は、反政府勢力支援に腰が引けていて当たり前だが、アラブ民主化"断固"支持方針をぶちあげた以上、後には引けないようだ。実に馬鹿げた話だが。まあ、バース党を解体することでイスラエルの生存を脅かす組織を無くしたいという気持ちもありそうだが、今からの、武装勢力支援は筋が悪すぎる。遅すぎ、というか形だけ整え、あとはロシアによる調停頼みか。 ・・・という風に見てくれば、多くの人がどう考えているかは、想像がつくというもの。 シリア国内の少数派、スンニ派の首都在住者、シリアと利害関係が無い国々の為政者、といった人達の本音は、人権無視の悪辣な政権であっても、打倒だけは「止めとけ」だろう。 現政権の支持基盤層たるアラウィー派とはもともとは社会の最下層だったようだし、歴史的に迫害されてきた信徒だろうから、最後の一兵まで戦うことになろう。和平のシナリオなく内乱を始めてしまえば終わりようが無い。と言うか、ダラダラと国内での内戦が続くならそれが一番の解決策と考える人もでてこよう。 一番危険なのが、大連立の新政権樹立。まともに機能発揮できるとはとうてい思えないからだ。 絶対少数勢力が、軍と汎アラブ社会主義のバース党によって支配を貫徹してきたのだから、人口上絶対多数を占めるスンニ派内部に統治できるような組織が存在している筈がない。裏組織はすでに原理主義組織主導だ。どうなるかは想像がつく。 しかも、それ以外の少数派を無視する訳にもいかない。ところが、こうした勢力は、常に利害が対立しており、妥協を嫌う体質が濃厚だったりする。 些細な問題でも揉めることになり、議論による合意形成などおよそ夢物語。結局のところ力とカネで動く政治しかできない。 まあ、それでも国内的な内輪揉めで過ごしてくれるなら、万々歳。それこそ、皆さんご勝手にの世界。しかし、そんなことがあり得る訳がなかろう。 それぞれの勢力は力とカネを求めて国外と結びつくことになるからだ。同時に、外部勢力も、隙あらば影響力を行使しようと、鵜の目鷹の目。これが、混乱に拍車をかけることになる。なかには、内乱勃発を仕掛ける勢力もあろうし。 アラブでは、互いに虎視眈々と勢力拡大を狙っているのだから、これを避けることは不可能。 国内を安定させたかったら専制政治しかあり得ないのである。結局のところ、アサド政権よりましな独裁政権を設計するしかない。およそ馬鹿げた話である。 そんなことは許せないとなれば、アサド政権が倒れた後、シリアを分裂国家化するしかないだろう。そうなれば、レバノンも分裂し、イラクやトルコもとドミノ現象。おそらく、サウジにもことは及び、アラブ全域が係わる騒動勃発の可能性が生まれる。 そんな悪夢は御免被りたいというなら、悪辣な独裁政権でもそのままにしておけとなる。それが現実。 (過去記載) アサド政権後がどうなるか気がかり (2012.12.10)>>> イスラエルはどうするつもり (2012.11.30)>>> 中東大動乱がいよいよ現実化か (2012.11.20)>>> 民族紛争から大戦争への道(20071105) 暑い夏になるのか?(20070625) レバノン騒動は他人事か(20050323) 政治への発言の目次へ>>> 表紙へ>>> |
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