■■■ 多摩動物公園大人向きコース 2013.4.16 ■■■

   猫族にご挨拶

猫族 v.s. 犬族という対比的見方が好きな方が多い。本屋の動物の棚の大半はこの両者に関係したものといった状況だから当然か。
小生は臍曲りという訳でもないが、猫族 v.s. 鼠族で考えたいタイプ。もちろん、トムとジェリー感覚では無い。犬猿の仲とか、天敵ということでもない。それに、鼠族にしてから、ハツカネズミやモルモットを代表としているのではなく、その究極の種としてヒトを考えている。奇妙に感じるかも知れないが、脳が矢鱈に発達しているのは、ネコとヒトと見ているだけの話。そして、両者は全く違った脳の使い方をしているから、どうしても対照的に眺めることになってしまうのである。
言うまでも無く、猫族は、知覚と運動神経が抜群。一方の鼠族は、その機能を犠牲にして、前肢でモノを弄くって考えることにひたすら注力してきた。その結果、脳味噌の発達方向は違ってしまったが、どちらも脳の巨大化に邁進した動物である。
それでは、犬族はどうなんだと言われそう。答えは簡単で、嗅覚が鋭いことでもわかるが、猫族に属すことになる。ただ、代表の地位を占めるほどには脳の方は発達していない。そう言うと、犬好きの方は怒るかも知れぬが。

と言うことで、東の横綱たるヒトが、西の横綱のネコに挨拶しに行こうではないかという目論見。当然ながら、それ相応の敬意を払うべく、どういう性情の方々なのか考えてから、お会いすべきだろう。まあ、家猫で当たりはついているものの、再確認しておくとよい。例えば、以下の如し。・・・
一番重要なのは、動物園の猫族は観客をじっくり観察しているという点。
檻の中に入れられ、静かにしているように見える動物が多いが、猫族の場合は、周囲にヒトが来れば必ず気にする。五感をフルに回転しているが、それをヒトがわかる仕草として、すぐに表現することは滅多にない。即反応しないということではなく、じっと対象を観察しているのである。ヒトは根気が無いが、ネコは結構な時間じっとしていることができる。小生は、観察しながら、哲学にふけっていると睨んでいる。
従って、狸寝入りの時もある。耳や尻尾の動きを見ると覚醒しているのがわかる時がある。

なにを見ているかといえば、特定した観客が何に興味を持っていそうなのかという点。従って、一緒に遊びたいと思ってきていると判断すると、それなりの行動に出る。
多くの場合、観客は「遊びたい」のではなく、「遊ばせたい」だけのことが多い。これは猫族にとっては侮辱的な働きかけになってしまう。当然のことながら、その欲望を潰してやろうとの行動にである。そっぽを向くとか、見えにくい場所に移動することになろう。面白くないから、プイとどこかえ出て行きたい気分なのである。
もちろん、端からヒトと遊ぶ気分が乗らない個性の持ち主もいる訳で、「五月蝿い」との意思表示をすることもある。ユキヒョウ君だと、「馬鹿野郎!」ということで威勢良くオシッコをかけたり。
一般に、猫族は遊び好きである。老齢化すると気難しくなるので、遊び心を失うようだが、幼児や若い層はいつもタネを探している筈である。ヒトもそのなかに入る。従って、その気になれば「遊んでもらう」ことは可能である。しかし、「遊んであげる」ことはできない。

多摩動物公園の猫族は個性豊かなようであり、それぞれにご挨拶方々、訪れるというのはまさに大人の愉しみと言えるかも。童心に返るだけのことでもあるが。
以下に、推奨コースを記載した。

●●●アフリカの猫族●●●
(1) チーター >>> (2013.3.24)
正門前から園内マイクロバス停留所に行く一歩手前に左右に曲がる道がある。ここを右折。かなり急勾配の坂である。あとは道なりで、突き当たりの崖下が広いライオン園。反時計回りにライオン園を見下ろしながら坂を下れば、右側に枝道があり、チーター舎。
ガラス越に、室内を歩き回るチーターを眺めることができる。目の前でじっと止まって観客側を見ていることもママある。目があったりして。大きな体躯にしては部屋は狭いから、そうそう駆け回る訳にはいかないが、子供にとっては結構な広さとみえ、跳びはねたり徒競走したりと、大騒ぎ。もちろん、そのうち疲れて静かになるが。
この部屋には、観客慣れしているメンバーを登場させているようなので、見飽きることはない。間近で、素晴らしい毛皮を拝見させて頂くだけでも有難いこと。もちろん、メンバー名は掲示されているので、誰に会ったか位は覚えてあげたいもの。
子供5匹がチョロチョロ動くと、誰が誰だか状態だが、明らかに個性がある。縞模様の差異もあるし、その気になればわかるかも。
そのお隣が、広い屋外運動場。網が無いので鬱陶しさを感じないでと眺めることができる。ベンチもあるから、のんびりしたらどうか。室内連絡口辺りをうろうろ徘徊していて、観客に関心を示してくれないこともあるが、それは、そろそろ交代時間かなと考えているのではないかと見た。気分が乗らないと、どうも運動場の一番奥に行ってしまったり、丘の上の方で休んでいるだけのこともあるが、ネコ族なので、ぶらぶら歩いてこちらが関心を示していることを示すと、多少時間がかかることはあるが、どんな輩なのかということで近くにやってくることが多い。興が乗れば、崖そばの木に登ったり、崖ぎりぎりまで歩き回ったりする。

(2) サーバル >>> (2013.3.25)
チーター運動場の反対側が、サーバル君の居場所。休日はジャンプのイベントがあるそうだが、平日は静かそのもの。じっと休んでいることが多く、ゆっくりと歩き回っていても観客には知らん顔。それでも、目線がかち合うことはあるのだが、フンといったご様子でえらく無愛想。好みの観客以外は全く相手にせずといったところ。

(3) ライオン
チーター達とサーバルへのご挨拶を済ませたら、ライオン園の縁に沿って下ると、展望デッキがある。無料の双眼鏡もあるから、ひとしきり眺めることになる。広場の景色は一年中たいした変化はないが、ライオン一族の展開の仕方や、互いの接し方は、時々でえらくかわる。喧嘩が始まり、広大なアフリカゾーン全体に轟くかのごとく吠え続ける時も。そうすると、縞模様の動物(車)が広場に入ってきて、状況を変えるべく一仕事せざるを得なくる。
もっとも、広場に出されなかったから吠えていることもある。仕置きということではなさそうで、いくつものペアが出来上がっている最中に、邪魔者の登場は野暮ということのようだ。まあ、どの世界でも、メスに嫌われるとそんな憂き目。おっと、確か、ライオンは一家の長たる雄ライオンが目が届く範囲を差配する文化と聞いていたが、多摩のルールは違うのかも。ペアになっていると、互いにそれなりの距離を保って、なんとなく所在なさげに過ごしているのが面白い。メスが時々ゴロゴロしたりするのも愉快。(・・・と見てしまうのは、情報不足だったから。解説によれば、1日50回交尾するとのこと。何を考えているのかわからぬが、トンデモないやつだ。)
まあ、その状態の広場になる前だと、好きでもない雄が傍に来ると木の上に登って降りてこなかったり、逃げ回ったりと、広場全体に落ち着きがない。動物観察マニアには見飽きないシーンだろうが、小生はまとまって日向ぼっこというシーンが好みである。野生感覚からはほど遠い感じもするが。
そんな時は、唸り声もあがらない。穏やかに、日がな一日、全員寛いで過ごすことになるのだろう。ライオンバスが通っても、乗客からよく見える台にメンバーが寝ているだけで、お愛想一つ振り撒こうとはしない。猫族は気分屋だし、個性を隠さないから、そういうこともある訳だ。
展望台だけで、もとに戻ってもよいのだが、もう少し先に進んで「サファリ橋」でそこから眺めるのも一興。欄干というか、柵から、落ちることなく頭だけ突き出して眺めることができる構造なので、ライオン一族の展開の仕方によっては、ここからの方が見やすい時も。すぐ下で遊んでいる時もあるし。

と言うことで、ライオン達には挨拶はできないが、雌と雄の姿が全く違う大型猫達の生活の一部を覗き見したことで満足することにしよう。でも、どうしても有料ライオンバスに乗りたいというなら、橋からさらに先に進めばよい。関心を示すとすぐに騒ぐフラミンゴ達のゲージとアフリカ象の運動場横を通りながら、ライオン園を反時計回りに進むだけ。
他の猫族の場所は、アフリカの猫族とは遠く離れているので、ライオンバスに乗ろうが乗るまいが、元来た道で正門から一直線に伸びるメインロードまで戻ろう。

振り出しに戻ったら、歩いて行くのもなんだから、無料園内マイクロバスでオラウータン舎前まで。10分間隔の運行である。今度は、アジアの猫族にご挨拶といこう。

●●●アジアの猫族●●●
(4) ユキヒョウ >>> (2013.3.17)
オラウータン舎前から、道なりに下に降りればそこはユキヒョウ舎。実によくできた運動場である。
3頭の兄弟が遊び呆けていた時があったのだが、そのうち飽きると、岩の上でゆったりと過ごすことになる。目は見開いているのだが、じっと静かにしているから、この存在になかなか気付かない。景色に溶け込んでいるのだ。
この猫は、なんといっても尾っぽが面白い。興が乗ると、尾が動くのである。一種の会話ということかも。もちろん、尾の第一義的役割は、飛び跳ねる際のバランサーだが。これあっての、ユキヒョウといえよう。運動場の場合、遊んでくれる時は、網で相対して座って、目線を合わせたりすることもできるから、名前を覚えて友人付き合いも可能である。と言っても、若いユキヒョウ君でないと、そうそうお気軽にお付き合いはできないと思われるが。尚、誰が誰かを見分ける能力は個人差で相当な開きがありそう。展示してある解説つき写真をじっくり眺めるとわかるかも。
運動場の先には、ガラス張りのケージもある。えらく狭いのでユキヒョウ君は面白くなかろうが、観客側にとっては間近で美しい毛皮を拝見できるから有難いつくり。

○休憩場所○
一休みして、お茶でもと考えても、すぐ近くには軽食/喫茶施設は無い。そのかわり、オラウータンのスカイウォーク用の離れ運動場がある。来た道の途中に入り道がある。上りだがたいしたころはない。オラウータン君は綱渡りでやってくる距離なのだから。ここは、オラウータンの森と命名されているが、決して、木々で鬱蒼という訳ではない。天気がよければ日向ぼっこ最適地。ベンチやテーブルが備わっているので、ここで一休みがよかろう。ドン詰まりの場所だから、綱渡りが終われば、観客は消えることが多いから静かそのもの。オラウータン君も、その静寂感を求めてわざわざ来るのではないか。それは母親の感覚で、子供は楽しい遠足といった調子かも。そんなことで、係わり合いを避けて過ごすことをお勧めしたい。
ひとしきり休んでから、もう一度、ユキヒョウ舎訪問という手もある。メンバー交代時間だったりすると、違う個性の持ち主に挨拶することもできるからだ。そこまでしなくてもというなら、大人しく、もとの道を引き返し、オラウータン舎前の無料園内マイクロバス乗り場に戻ろう。

(5) アムールトラ >>> (2013.3.30)
オラウータン舎から、バス道ではなく運動場側の細道を進むと、お隣は人懐こいシロテナガザル君のケージ。その先が、元オオカミ舎(「アジアの平原」にご栄転。)で、お隣が虎舎。今は、いつでも親子3頭のようだ。いつまで続けられるものかわからぬが、親か子がわからなくなっても、遊びは楽しいようで、そんなシーンは見飽きない。なにせ、巨大な体躯であるし、姿が美しいからである。さすが北方で生活している獣だけのことはある。
森の中と言うか、水辺に来る動物を狙っている大型猫だから、集団狩りをすることはありえまい。雌は互いに縄張りを持ち、滅多に出会わないようにしていて、雄は複数の雌の縄張りと重複する広い縄張りを持っていると見るのが自然。繁殖時期以外は、雄雌が出会ったら喧嘩になり、雄は逃げるという社会であろう。今の体制がいつまで続けられるのかわからぬが、遠からず、それぞれ独立して生活する体制に移行することになるのだろう。寂しいが、それこそが本来の猫族の姿勢であろう。

帰途は、オラウータン舎前に戻って無料園内マイクロバス利用でも良いが、下り道なので、虎舎そばからバス道に降りて、のんびり歩いていくのもよかろう。道なりだから迷わずに正門出口に行き着く。

(参考とした通俗的哲学書) [原題] "ADAM'S TASK" 1986 by Vicki Hearne;英文学研究者/作家兼動物調教師 [翻訳版] 「人が動物たちと話すには?」 晶文社 1992


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