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YOKOSO! JAPAN 2008年9月18日 |
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観光資源を考えてみた…地方の観光産業振興を見ていると、日本経済が沈んでいく原因が見えてくる気がする。当事者は、時代に合わせた展開をしているつもりであり、真面目に取り組んでいるが、外から見ればどう見たところで時代感覚喪失にしか見えない。おそらく、このことがわからないのではなく、わかりたくないのだと思う。一番の曲者は、「時代に合わせた」取り組み。今までのやり方から脱皮しようという話に聞こえるから、やる気のある人が頑張るのもわかる。しかし、いかんせんカンフル剤でしかない。健康回復に繋がらないのである。 この手の、「時代に合わせた」取り組みは以下のステップから始まるものが多い。ビジネスマンからみれば、一時代昔のやり方だ。 (1) 先ずは、○○型の旅行がこれからの流れということで、勉強会を開催する。 (2) 成功例を視察する。 (3) それに合いそうな自分達の保有資源を探す。 (4) 専門家のアドバイスを求める。 (5) どのように進めるか関係者が集まって議論する。 構造的に沈滞しているのは理由がある訳で、こんな小手先の企画で乗り切れると考えること自体がピント外れである。たいていは、走り初めると、やれお金が足りない、人がいない、等々の問題がでてきて、意見が割れ、中途半端なもので終わるのが関の山。 議論にしても、斬新なアイデアが出てくることは皆無に近い。たいていは、勝手な主張と、その批判の繰り返し。病根を取り除こうという意識は無いのだから、当然だと思う。 要するに、流行に乗り遅れるなという古典的な取り組み以上のものではない。エコ、学習型、なんだろうが、たいして変わらない。 そのお蔭で、すべての地域で、たいして代わり映えもしない企画が一斉に立ち上がる。マクロ需要が増えるなら意味があるが、そんな代物ではないから、微減を続けているパイを、同質の競争で取り合うというだけのこと。勝てない競争を続けようというに過ぎない。 こんな話をするのは、長崎観光の話をしたら、意味を取り違える人がいたから。もう少し丁寧にご説明すればよかったかも。 → 「地域観光政策がさらなる経済低迷を引き起こす 」 (2008年7月24日) 間違ってはいけないが、長崎は観光資源が豊富なのである。にもかかわらず、低迷している。これはは交通アクセスが悪いからではない。活かす方策を生み出す知恵がなかっただけのこと。 例えば、大浦天主堂だけでも十分な集客力があると思う。 しかし、ここは、今も信者が集まる信仰の場。だからこそ貴重なのである。にもかかわらず、これを考慮した動きになっていない。外から見れば、文化の香りを消すような観光政策を追求しているようにしか映らないのだ。つまり、観光産業低迷は当然の結果としか思えないのである。 五島列島の集落毎の教会を考えれば、もっとわかり易いかも。交通が不便だろうが、訪れて見たい人は少なくないだろう。だが、信者にとっては、騒がしいだけの観光客は迷惑千万だろうし、そんな人で溢れてしまえば評判は早晩地に落ちる。従って、どのようにすれば、魅力的な観光事業ができるかは、そう簡単な話では有り得ない。直接参考になりそうな例がある訳もないし、それこそ、似た発想の異業種事業から教訓を学んだりしながら、斬新なアイデアを生み出す必要があるのだ。これを行わなければ、観光振興助成金を活用して、他の地方と同じような取り組みを進め、お茶を濁すだけで終わる。 ・・・言いたかったのは、こういうこと。 そもそも、交通至便というだけで観光事業が繁盛する訳ではないのは、東京から1時間もかからずに到着できる熱海の状況を見ればわかる筈だ。 2008年も、大きな和風旅館が更地化した。半額宿泊セールまで始めており、廃業は時間の問題と言われていたから誰も驚かない。さらに、海に面しているホテルも自己破産。こちらも、古そうな建物だから営業続行は無理だろう。近々、もう一件出るとの噂も耳にする。 将来性ゼロで、投資もできない状況にもかかわらず、とりあえず事業を存続させる風土からの決別が、ようやく始まったということ。熱海はようやく曙光が見えてきたかも知れないと感じさせる動きである。 → 「熱海が変わる」 (2008年5月19日) そもそも、赤字垂れ流しで、まともなサービスができる訳がない。しかし、地域がこぞって、それを容認するのが地方の風土。観光振興とは、こうした業者が倒れないように援助しようというものかも知れないのである。この環境下で、まともな事業家は育ちようがなかろう。 常識で考えれば、熱海でなくとも、伊豆半島は海と山の地形であり、温泉まで湧いているのだから、観光業が繁栄して当たり前の筈なのだ。 → 「温泉に浸かり考える」 (2008年1月4日) しかし、そうならないのは、こうした無理矢理存続する事業者が多いからでもある。見込みが無いとわかったら、早く撤収して頂き、新しい取り組みを始めてもらわないと、地域全体が経済低迷の被害を受けることになる。いくら表面的に流行を追ったところで、旧態依然たる赤字事業者が主流のままでは、観光産業の衰退はいかんともしがたい。 そんなことは、現実を直視すればわかる筈である。 バブル経済の頃から見れば、宿泊者数は半減しているのだ。施設も人も余剰。この問題を片付けない限りどうにもならない。問題を先延ばしにすれば、いつまでも低迷が続くだけのこと。そして、雇用が徐々に失われていき、人は出て行き、町は寂れ、観光客も避けるようになるだろう。荒療治でも、駄目なものは早く切ることをしなければ、果敢に挑戦できる力がある事業者は生まれないし、投資は呼び込めない。税金でつくるハコものだらけで、活気もなく、人もまばらな地域になるだけだ。 それを避けるには、核となる観光資源の価値を高め、事業者の収益性を回復させること。これが、最優先事項。 ところが、冒頭に述べたように、これを避け、小手先の新しい取り組みでお茶を濁そうとする。ヒト・モノ・カネを浪費し続けて、マクロでの収益性をさらに落ち道を進もうというのである。 そう言えば、伊豆にも、長崎と似た問題を抱えていそうな街がある。下田である。一寸、眺めてみよう。 この町にも、小さいながら造船業(下田船渠)があった。相当前に、事業清算となったから、観光業で生きていくしかなかろう。それこそ背水の陣で観光産業に賭けると思っていたが、やはり小手先の取り組みに終始した。 そして、厄介なことに、東伊豆での観光の旗振り役でもある、鉄道/観光事業者が不調なのである。(1) [東伊豆は他に比べれば交通費が嵩むのが特徴。JR東京-伊豆急下田(167.2Km)=3780円+2680円(156分)。東京-新幹線新富士(146.2Km)=2520円+2410円(72分)と比較すると感覚がわかる。] と言って、伊豆の自動車道の週末の込み合いは半端なものではない。下田に着くのに何時間かかるかわかったものではないのが実情。そのため、長崎同様、交通をなんとかすれば起死回生と考える人は少なくない。 しかし、道路ができたからといって、結果はほとんどかわらないのではないか。 今でも、下田に行こうという気がある人はどうだろうが行くからだ。 例えば、釣り人。熱海でを訓練して、下田で本格版というのはよく耳にする話。南からの海流が流れてくるから、ここは外せないのである。 下田の従来の温泉場とは違う、強烈なアルカリ温泉も人気だと聞く。“まったり”湯に浸かって過ごすだけのこと。この事業者が頑張った結果である。 要は、魅力を研ぎ澄ませること。実に単純明快である。 ただ、無理筋は駄目だ。南から来る海流が流れ込む海だから水も綺麗で、美しい砂浜あるのは確かだが、そこに大勢の観光客と呼ぼうという観光業を柱にできるものか考える必要があろう。当然のことながら、夏だけ大混雑で、他のシーズンは閑古鳥。大勢の観光客に対応しなければならないサービス産業がどんな姿勢で臨むかは自明である。東京のコストパフォーマンスを大きく下回るサービスを喜ぶ観光客がいるはずがないし、それが、どんな評判を呼ぶかはいわずもがな。 下手をすれば、観光資源を劣化させるかも知れないのである。
ハリスの通訳が攘夷派の浪人に切られた時代の話だ。(麻布十番の善福寺にお墓がある。)もう少し、色々考えたらよさそうなものと思うが。 散策路をとっても、「ペリーロード」と名づけた川沿いの柳並木路、稲生沢川河口の漁船物揚場の「大川端通り」、ヨット群を見渡せる海岸の「ハリスの小径」こと福浦遊歩道、海が見渡せる城山の「下田公園」、フェリー乗り場から水族館を経て大浦へ続く磯沿いには「和歌の浦・赤根島・志多ヶ浦」遊歩道、と揃いすぎる位。(2) 港を眺める遊覧船はあるし、食べ物にしても、下田魚市場の金目は有名である。 これだけの観光資源がありながら、不振なのである。つまり、お金を落としてもらう企画が生まれないということ。事業家が育たない風土を作ってきたとしか思えまい。 --- 参照 --- (1) 西武ホールディングス: “伊豆箱根鉄道株式会社「事業再構築計画」の策定に関するお知らせ” [2008.7.13] http://www.seibu-group.co.jp/shd/data/060713.pdf (2) 下田市観光ガイドマップ http://www.izu.co.jp/~p-boo/shimodamap.html (下田市宿泊客数データ) http://www.pref.shizuoka.jp/soumu/so-810/shinminami/documents/2-0203.pdf (地域の地図) (C) 三角形 井上恵介 →白地図、世界地図、日本地図が無料 「観光業を考える」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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