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■■■ 日本の基底文化を考える [2018.9.27] ■■■
鳥崇拝時代のノスタルジー[78]
−迦毛大御神[事代主命の地]−

4つの神奈備の3つ目を眺めてみよう。
 ○大物主⇒大三輪 [→]
 ○阿遅須伎高孫根命⇒葛木(葛城) [→]
 ○事代主命⇒雲梯(橿原)
 ○賀夜奈流美命⇒飛鳥(明日香)


1つ目の大物主を大三輪で祀る担当の意富多多泥古命は神君 鴨君之祖。 
葛城神奈備では鴨一族の祖たる阿遅志貴高日子根命勢力の本拠地だった。
続くは、事代主命の地。

【3】橿原 宇奈提(雲梯)
橿原といっても、雲梯と呼ばれる場所は、南の橿原神宮駅近辺の畝傍山ではなく、香久山の方。宇奈提=雲梯とされている訳だが、曽我川の提という意味があるのかも。
雲梯は、「万葉集」には真鳥(鷲)棲む地として登場する。[→鷲鷹類]
[巻七#1344]
真鳥棲む 雲梯の杜の 菅の実を 衣にかき付け 着せむ子もがも
[巻十二#3100]
思はぬを 思ふと言はば 真鳥住む 雲梯の社の 神し知らさむ
ここでの真鳥は、恐ろしい力を持つ神のお遣いということだと思う。2つ目の歌は、恋してると言ったりすれば、神から厳罰を喰らうが、それでもよいというのだから。そんな鳥の棲息地なら、森閑とした森だった筈。そこには、雲で天辺が隠されてしまうような巨木もあっておかしくなかろう。当然ながら、禁足地。しかし、そこに侵入しても、神の力を採って来るゾるというのだ。表面は歌垣的な恋歌に過ぎないが、意味深長な歌である。
ここには神社があるからだ。
河俣神社/高市御縣坐鴨事代主神社(鴨八重事代主神)
"大国主---大物主"に対応した、"阿遅高日子根神/迦毛大御神---事代主神"ではないかと思わせるではないか。
「古事記」では、事代主神の装束の話があるが、この神社の通称は「装束の宮」である。その由来は、住吉神社にある。埴使は、先ず曽我川で水垢離し、神社で装束を改め、畝傍山で埴土を頂戴して、祭祀用の土器を作るというのだ。
三山に囲まれた藤原宮の時代を彷彿させる行事と言えよう。
それに対応する「萬葉集」の歌を引用しておこう。
鴨君足人が香具山の歌一首、また短歌[巻三#257]
天降りつく 天の香具山 霞立つ 春に至れば 松風に 池波立ちて 桜花 木晩茂み 沖辺には 鴨妻呼ばひ 辺つ方へに あぢ群 騒き ももしきの 大宮人の 退 り出て 遊ぶ船には 楫棹も なくて寂しも 榜ぐ人なしに
言うまでもないが、"あぢ"を阿遅高日子根神/迦毛大御神と読む。
飛鳥や鴨の"神奈備"とは違う、3山と大極殿という渡来思想に転換を図ったことで、最終的にその力を削ぐことになってしまったのであろう。

(Wikisource 万葉集 鹿持雅澄訓訂 1891年)
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