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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.2.29] ■■■
[244] 逆罪者提婆達多
提婆達多は、厳格な生活規則を追求すべきと考えた禁欲主義者であり、もちろん釈尊の弟子。[→]

ジャータカでは冒頭の鹿譚から[→]、"菩薩 v.s. デーヴァダッタDevadatta/提婆達多"として登場する。
他でも、"蜥蜴王 v.s. カメレオン"[→]だったりと、論敵レベルではなく、教団から抹消すべき対象とされているようだ。「今昔物語集」でも、"獅子 v.s. 鷲"[→動物ジャータカ]として登場する。
仏教勢力を破壊する極悪人と見なされている訳だが、その理由は3つの大逆罪を犯したとされている。
  仏弟子を奪う。
  仏身を傷つける。
  比丘尼を殺す。

そのため大地が破裂して、提婆達多は地獄に堕ちたということのようだ。

人里近辺での修行を嫌い、象の住むような地で肉食禁忌で、ほとんど無一物で修行すべしという主張に、従来型の原理主義的厭世修行者の姿勢を感じたのであろう。肉食禁忌を金科玉条の如くに律法とする姿勢は、もともと狩猟を愉しんでいた精神の裏返しと見たのかも。

「今昔物語集」編纂者は、巻一の頭の《緒元》[#1〜8][→仏伝]に続いて、外道[#9〜16]を取り上げるが、その核は提婆達多のように思われる。
  【天竺部】巻一天竺(釈迦降誕〜出家)
  [巻一#10]提婆達多奉諍仏語
○提婆達多は釈尊の父方の従兄弟。
   釈尊は浄飯王の御子 悉達太子。
   提婆達多は黒飯王
(浄飯王)の子。
《雁遺恨》
 提婆達多がまだ太子だった頃の話。
 雁を射たところ、命中。
 雁は矢が刺さったまま飛んで、悉達太子の庭に落ちた。
 それを見た悉達太子、慈悲の心で哀れみ、
 抱き取って、矢を抜いてあげだのである。
 提婆達多は悉達太子のところに来て、
 「雁を渡すように。」言ったが
 太子は雁を渡さなかったので
 怒ったのである。
 これが、悉達太子と提婆達多の仲が悪くなった始まり。

     不仲な理由は、
     青年時代の、耶輸陀羅姫を廻る求婚争いとの話もあるらしい。
     青年期には釈迦族内でライバル競争に余念なしということか。
     厳格な肉食禁忌主義者なので、青年時代の狩猟好みは腑に落ちぬところ。
     運動神経と武芸では釈尊に優っていたとの伝承があったのかも。
     それに、釈尊は出家してしまったのだから、
     提婆達多が釈迦族の精神的リーダーと目されていた筈である。

《破僧》
 悉達太子が仏になってからは、
 提婆達多は外道の典籍を学習。
 仏を妬み、自分の道を"止事無き"ものと考え
 限り無く仏を言い争ことに。

《別立僧団》
 そうこうするうち、仏は霊鷲山で説法。
 提婆達多は仏の御許に詣で、
  「仏の御弟子は数が多い。
   少し、私に分けて下さい。」と言う。
 仏は許可せず。
 ところが、その時に500の御弟子と語らって、
 密かに、提婆達多の住む象頭山に移住させたのである。
 転法輪を止めたのであるから破僧の罪である。
 天上天下、嘆き悲しみが拡がった。

《提婆達多五法》
 提婆達多は、この後、象頭山で五法・八支正道を説法。
     …南傳上座部佛教律藏/五法…
     盡形壽應為住蘭若者。 至村落者罪
     盡形壽應為乞食者。 受請食者罪。
     盡形壽應著糞掃衣者。 受居士衣者罪。
     盡形壽應為樹下住者。 住屋者罪。
     盡形壽應不食魚肉。 食魚肉者罪。

 舎利弗は「この500の新弟子を取り返そう。」と思って
 提婆達多が深い眠りについているとき、襲ったのである。
 目連は500の弟子を袋に詰め、鉢に入れ、空を飛び、仏のもとに。
 提婆達多の弟子 倶迦利は大いに怒り、
 履物で師の面を打ったので。提婆達多は驚いて目が覚め
 「500人の新弟子が取り返された!」ということで大憤慨。

《害佛悪行》
 提婆達多、仏の御許に行き三十肘の大石を投げつけた。
 しかし、山神が障壁をつくり外れたので、仏には当たらず。
 その石は砕けたので、破片が仏の御足に当たり、親指が出血。
 第二の逆罪である。
 提婆達多は自分の手指に毒を塗り、
 仏の足を礼拝し奉るふりをして、毒を付けようと図る。
 ところが、その毒は即薬となり、傷は癒えたのである。

《阿闍世》
 又、阿闍世王@マガダ国は提婆達多の語により、大象に酒を呑ませ、
 その十分に酔った象を放ち、仏を殺そうと謀った。
 五百羅漢は、それを見て、恐ろしいので空に上昇。
 その時、仏は、御手より五頭の師子の頭を出したので、
 それを見て酔象は逃げ去ったのだった。
 仏は阿闍世王の宮に入り説法、教化し、王の供養を受けた。
 提婆達多は、悪心を増す一方だったが、宮から出るしかなかった。

《打殺比丘尼》
 提婆達多は羅漢の花色比丘尼の頭を打った。
 比丘尼は絶命。これは第三の罪。

《堕地獄》
 大地が破裂し、
 提婆達多は地獄に堕ちた。
 その裂けた穴は今でもあると言われている。


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