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■■■ 「古事記」解釈 [2022.5.5] ■■■
[489]六は軽視されている
「古事記」では、漢数字の六の使用は、6柱・16神・6/16/26王・6字・6歌といった数字表記のみ。七・八とは扱いが随分と違っており、多少は取り上げたが、改めて触れておくことに。
📖千五百や五十の意味 📖文字"七"は文字通りの7 📖文字"八"への気配り

≪六≫
 【語源】「説文解字」では易の數とされている。
   実態は不詳ということか。
   形象的には、祭祀場に思えるが、パオ状にも見える。

  [呉音]ロク
  [漢音]リク
  [唐音]リウ/リュウ
  [訓]む むい むつ/むっつ

「萬葉集」は歌集なので基本音素文字表記。このため、六は数字とは無関係で、単なる<む>音の文字として使われる。書き易い文字だからか、用例は膨大。・・・
[「萬葉集」巻一#4]朝布麻須等六[朝踏ますらむ]
[「萬葉集」巻一#31]與杼六友[淀むとも]
[「萬葉集」巻一#42]妹乗良六鹿[妹乗るらむか]
[「萬葉集」巻一#43]今日香越等六[今日か越ゆらむ]
もちろん、数字6としての文字使用もあるが用例としては稀である。
  六月[みなづき] 六田の淀/六田の川
  [「萬葉集」巻十六#3827]一二之目 耳不有 五六三 四佐倍有来 雙六乃佐叡
  [「萬葉集」巻十六#3838]雙六
さらに「萬葉集」には、すでに触れたように、"十六"という現代で言うところの駄洒落熟語が使われている。太安万侶はおそらくエスプリの効かない表現はお嫌いだろうから、十六は、16神・16王という数字表記しかない。これを獅子とか、死屍と読んだらとの皮肉ならお得意かも知れぬが。
[「萬葉集」巻三#239]十六社者[獣こそば]
[「萬葉集」巻三#379]十六自物[獣じもの]
[「萬葉集」巻六#926]十六履起之[獣踏み起し]
[「萬葉集」巻九#1804]所射十六乃[射ゆ鹿の]
[「萬葉集」巻十三#3278]十六待如[鹿猪待つがごと]

「古事記」では、崩御年齢記載では、大字を使うことにしているため、六の代わりに陸も用いられる。 📖漢数字の大字使用について
一方、「萬葉集」の<陸>の用例としては、有名な地名だけ。・・・
  陸奥みちのく 常陸ひたち
この地名はかなり後世の当て嵌めのようにも映るが、陸自体、古代感覚の土という意味を表現するための文字だから、必ずしも新しい用語という訳ではなさそうである。
≪六≫
 +屮/艸
≪圥[土+儿 or 十+兀] ≒𡴆(地蕈)
  [呉音]ロク
  [漢音]ロク
  [訓]きのこ
 +土
≪坴≫
  [呉音]ロク
  [漢音]リク
  [訓]n.a.
 +阜
≪陸≫
  [呉音]ロク
  [漢音]リク
  [訓]おか(海から陸に上がる。) くが("海所⇔国処"由来の音の変化形。)

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