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■■■ 「古事記」解釈 [2022.9.13] ■■■
[620]古事記仮名を万葉仮名と呼ぶべきでない[続]
[続] v.s. 古事記仮名を万葉仮名と呼ぶべきでない📖ということで、<ゐ/ヰ>と<ゑ/ヱ>に触れたが、<を/ヲ>を割愛しているように映るので、追加しておくことに。
もっとも、すでに取り上げているので、余計ではあるが。
   📖[安万侶文法]ヲを"遠"表記にする理由
   📖[安万侶文法]ヲは袁にしたかったか
   ɰo📖"を/ヲ"の補遺
「古事記」歌仮名は基本≪袁≫であるが、≪遠≫も[歌2〜6]とでまとめて使っている。≪袁≫用例が多いので90番以降は捨象したが3桁になって≪遠≫が連続3首でも使用されていて、なんらかの想いがあるようだ。
「万葉用字格」は的確で、この2文字は倭語では非使用音の"n"をカットしていると。・・・
  [略音]hhyoe ヲン
  [略音]hhyoe 〃

万葉仮名でも使われるのだが、この文字をできるだけ使用しようとの気分は全くみられないのは、すでに見ての通り。

助詞の"を"の表記くらい統一してもよさそうに思うが、規格文法を嫌う人が多かったようで、異なる文字を使うことで第一級知識人であることを示したかったのかも。インテリからすれば、それこそが2流と告白しているようなものに映るが、今でもよく見かけるよくあるタイプ。
  <みちのながてを/道の長手を>用例
 道乃長手袁[#888]
 路乃長手遠[#884]
 道之永手呼[#536] 路之長手呼[#781]
 道之長手矣[#3132]
 道乃奈我弖乎[#3724]
もっとも、「万葉用字格」の編纂者は結構真摯に眺めているように思える。漢文時代突入期に入ると、漢文法が身に着いていない歌人など考えられないから、≪袁≫≪遠≫を、歌の末尾の助詞の表記文字にする理由が納得できぬと主張する人が多くなるのは当たり前と判断したのだろう。
  [略音]huo ク …漢音の"コ"の子音脱落
  [義訓]hhi イ …文法上の倭語助詞"を"(音と見なさない。)
  [略音]wu ヲ …漢文助辞(文末と前置詞)

もちろん、訓読文字は倭語の翻訳漢字ということになる。音素文字たる仮名とは違う。しかし、それを承知で、冗談半分で仮名的に使うことが流行ったのは間違いないようだ。
  [正訓][借訓]小 こ〜
  [正訓][借訓]緒 を
  [正訓][借訓]男 をと
  [正訓][借訓]麻 そ/を
  [__][借訓]尾 を

「古事記」が≪袁≫≪遠≫という2種類にしたことの影響は少なからずと見ることもできる。同類と見なして文字替えを行うのである。おそらく、なんらかのニュアンスの違いがあるのだろうが、誰でもが理解できるとは限らない。
つまり、上記の用例では、歌末助詞の"を"の方でなく、長・永や路・道といった表記転換問題。これは現代日本語も相変わらずひきづったママだから、倭語からの一大特徴でもあろう。

「万葉用字格」はそこらの雰囲気を伝えてくれている。
  [正訓][借訓]小  少
  [正訓][借訓]麻  [正訓]
  [正訓][借訓]男  士
以下の記載から熟考していることがわかる。
  [略音]hhion …"をす"は訓ではないとの指摘

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