→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2022.3.29] ■■■ [452][安万侶文法]ヲは袁にしたかったか このうち、袁は、袁世凱の姓名で知っている文字だが、それ以外に何も思いつかないという、日本ではほぼ見捨てられてしまった文字である。(どこまで文献的にさかのぼれるのかは不明だが、嬀姓袁氏の祖は舜とされており、現代でもこの姓の分布は非漢族にまで広がっている、一大宗族かも。) もともと風体から大陸での部族名称として使われるようになった漢字であり、太安万侶は、わざわざ、ほぼ姓名にしか使われていないような文字を選んだことになる。"遠"とは違い、全くイメージを与えることが無く、使う可能性も低い文字で、いわばアルファベットのように純粋音素表記に使うのにはベストとの判断だろう。・・・ ≪袁[叀+衣]≫=長衣の様子【形容詞…滅多に使われない。】 [呉音]ヲン [漢音]ヱン [訓]無 【固有名詞】氏族 州 実際に、このヲがどのように使われているのかと云えば、もちろん意味ある語彙の読み音素として使われることになるが、ヲは重要な常用助詞でもある。 外野的に言えば、両者を違う文字にしてくれれば読み易くない有難かったのだが、そこまで親切ではない。 尚、格助詞(述語の目的語)以外の用法には2パターンあるとされているようだ。 間投助詞 終助詞/接続助詞(述語と無関係) 一応の知識を頭に入れたところで、実際のところ、どんな記載になっているのか、面倒ではあるが俯瞰しておきたい。・・・ 指下其沼矛以畫者 鹽"許袁呂許袁呂邇"畫鳴 …"ヲ"(オノマトペ音) 先言:「阿那邇夜志愛袁登古袁」 …えヲトコを 後伊邪那岐命言:「阿那邇夜志愛袁登賣袁」 …えヲトメを 先言:「阿那邇夜志愛袁登賣袁」 後妹伊邪那美命言:「阿那邇夜志愛袁登古袁」 (割注)〈訓食云"袁須"〉 [__1]【速須佐之男命】作御歌大神初作須賀宮之時 その八重垣を[曾能夜幣賀岐袁] …詠嘆の歌末辞【間投助詞】 ---①神倭伊波礼毘古命@畝火之白檮原宮/神武天皇 [__8]【豊玉比売】獻歌 via 弟 玉依毘賣山幸彦への愛 赤瓊は 緒さへ光れど[阿加陀麻波 袁佐閇比迦禮杼] [_10]【自軍兵】@東遷戦闘勝利 実の無けくを[微能那祁久袁] [_16]【大久米命】地場婚姻推奨 高佐士野を 七行く乙女ども 誰をし枕かむ [多加佐士怒袁 那那由久 袁登賣杼母 多禮袁志摩加牟] [_17]【天皇】嫁(皇后)選び 姉をし枕かむ[延袁斯麻加牟] [_19]【大久米命】回答 乙女に[袁登賣爾] [_20]【天皇】伊須氣余理比賣との夜を懐かしむ 葦原の穢しき小屋に[阿斯波良能 志祁志岐袁夜邇] ---⑩御真木入日子印恵命@師木水垣宮/崇神天皇… [_23]【少女】謀反の陰謀あり、と告知 御真木入日子はや 己が命を[美麻紀伊理毘古波夜 意能賀袁袁] ---小碓命/倭男具那命/(倭建命)/(大帶日子淤斯呂和氣天皇皇子) [_26]【倭建命】「吾妻はや」と歎息@甲斐国酒折宮 新治 筑波を過ぎて[邇比婆理 都久波袁須疑弖] [_27]【御火燒之老人】 夜には九夜 日には十日を[用邇波許許能用 比邇波登袁加袁] [_28]【倭建命】初夜@所期の地 繊細 手弱が腕を[比波煩曾 多和夜賀比那袁] [_30]【倭建命】伊吹山より敗走@尾津岬一本松 尾張に 直に向かへる 尾津の岬なる 一つ松 [袁波理邇 多陀邇牟迦幣流 袁都能佐岐那流 比登都麻都] 吾兄を 一つ松 人に在りせば 太刀佩けましを 衣着せましを [阿勢袁 比登都麻都 比登邇阿理勢婆 多知波氣麻斯袁 岐奴岐勢麻斯袁] 一つ松 吾兄 [比登都麻都 阿勢袁] [_31]【倭建命】伊吹山より敗走思國歌 たたなづく 青垣・・・[多多那豆久 阿袁加岐] [_32]【倭建命】伊吹山より敗走思國歌-無事な人へ 平群の山の 熊樫皮を[幣具理能夜麻能 久麻加志賀波袁] [_34]【倭建命】辞世的草薙剣と美夜受比賣を思って 少女の床の辺に[袁登賣能 登許能辨爾] ---⑮品陀和気命/大鞆和気命/応神天皇 [_40]【神功皇后】天皇勝利凱旋の酒宴 奉り来し御酒そ[麻都理許斯美岐叙] 浅ず飲せ ささ(囃子)[阿佐受袁勢 佐佐] [_41]【建内宿禰】酒楽之歌崩御後実質天皇位の皇后を補佐し祭祀進行 この神酒を 醸みけむ人は[許能美岐袁 迦美祁牟比登波] [_42]【天皇】行幸で国の繁栄を寿ぐ 千葉の 葛野を見れば[知婆能 加豆怒袁美禮婆] [_43]【天皇】矢河枝比売を迎えた大御饗酒宴での喜びの発露 しなだゆふ 佐佐那美道を すくすくと 我が行ませばや 木幡の道に 遇はしし嬢子 後方は 小蓼ろかも 歯並は 椎菱なす 櫟井の 丸邇坂の土を 初土は 膚赤らけみ 底土は に黒き故 三栗の その中つ土を 頭著く 真火には当てず 眉画き 濃に書き垂れ 遇はしし 女 かもがと 我が見し児ら かくもがと 我が見し児に 現たけだに 向かひ居るかも い副ひ居るかも[志那陀由布 佐佐那美遲袁 須久須久登 和賀伊麻勢婆夜 許波多能美知邇 阿波志斯袁登賣 宇斯呂傳波 袁陀弖呂迦母 波那美波志 波那美波志 比斯那須 伊知比韋能 和邇佐能邇袁 波都邇波 波陀阿可良氣美 志波邇波 邇具漏岐由惠 美都具理能 曾能那迦都爾袁 加夫都久 麻肥邇波阿弖受 麻用賀岐 許邇加岐多禮 阿波志斯袁美那 迦母賀登 和賀美斯古良 迦久母賀登 阿賀美斯古邇 宇多多氣陀邇 牟迦比袁流迦母 伊蘇比袁流迦母] [_44]【天皇】皇子に美女を譲り渡した時 赤ら乙女を[阿加良袁登賣袁] (叙)伊夜袁許邇斯弖 伊麻叙久夜斯岐 [_46]【(太子)大雀命】天皇から女を譲り受けて喜んだ こはだ乙女を[古波陀袁登賣袁] [_47]【(太子)大雀命】得た妃の性情を喜んだ こはだ乙女は 争はず 寝及惜しぞも[古波陀袁登賣波 阿良蘇波受 泥斯久袁斯叙母] [_49]【吉野之國主等】<獻大贄之時>皇嗣即位前に新酒贈呈 檮の生に 横臼を作り 横臼に 醸みし大御酒 美らに 聞こし以ち食せ 麻呂が[加志能布邇 余久須袁都久理 余久須邇 迦美斯意富美岐 宇麻良爾 岐許志母知袁勢 麻呂賀知] [_51]【大山守命】反逆失敗で川に流され救助要請 宇遅の済に 棹取りに[宇遲能和多理邇 佐袁斗理邇] [_52]【宇遅能和紀郎子】反逆者大山守命討伐成功時 本方は 君を思ひ出 末方は 妹を思ひ出 [母登幣波 岐美袁淤母比傳 須惠幣波 伊毛袁淤母比傳] ---⑯大雀命@難波之高津宮/仁徳天皇 [_53]【天皇】皇后を恐れ帰郷した妃への恋慕 沖辺には 小舟連ららく[淤岐幣邇波 袁夫泥都羅羅玖] [_55]【天皇】帰郷した妃と再会し悦楽 山県に 蒔ける青菜も[夜麻賀多邇 麻祁流阿袁那母] [_56]【黒比売】帰都に際し、別れを惜しむ 雲離れ 退き坐りとも[玖毛婆那禮 曾岐袁理登母] [_58]【大后】皇后激怒し家出を決意 つぎねふや 山代川を[都藝泥布夜 夜麻志呂賀波袁] 生ひ立てる 烏草樹を[淤斐陀弖流 佐斯夫袁] [_59]【大后】家出皇后帰郷途上時 吾が上れば 青丹吉 那良を過ぎ 小楯 倭を過ぎ [和賀能煩禮婆 阿袁邇余志 那良袁須疑 袁陀弖 夜麻登袁須疑] [_61]【天皇】家出皇后を気遣う 肝向かふ 心をだにか[岐毛牟加布 許許呂袁陀邇迦] [_63]【口日売】皇后に天皇の使者に会って欲しい旨懇願 もの白す[母能麻袁須] [_65]【天皇】妃への愛一途 言をこそ[許登袁許曾] [_66]【八田若郎女】一途に、貞節をまもり抜く、と 独り居りとも 大君し 宜しと聞こさば 独り居りとも [比登理袁理登母 意富岐彌斯 與斯登岐許佐婆 比登理袁理登母] [_70]【速總別王】愛妻と共に反逆逃避行 倉椅山を[久良波斯夜麻袁] [_75]【人々】木船琴 枯野を[加良怒袁] ---⑰伊邪本和氣命@伊波禮若櫻宮/履中天皇 [_78]【天皇】敗走逃亡中に乙女に道を尋ねた時 大坂に 遇ふや乙女ヲ[於富佐迦邇 阿布夜袁登賣袁] 路問へば 直には乗らず 当麻路ヲ乗る[當藝麻知袁能流] ---木梨之輕太子(⑲男淺津間若子宿禰命@遠飛鳥宮/允恭天皇の皇子[太子]) [_79]【木梨之輕太子】志良宜歌同母兄妹婚決意 山田を作り 山高み 下樋を走せ 下問ひに 我が問ふ妹を [夜麻陀袁豆久理 夜麻陀加美 斯多備袁和志勢 志多杼比爾 和賀登布伊毛袁] [_81]【穴穂命】輕太子討伐 大前小前宿祢が[袁麻幣須久泥賀] [_83]【木梨之輕太子】天田振捕囚後に同母妹の心情への思いを発露 天だむ 軽の乙女[阿麻陀牟 加流乃袁登賣] [_84]【木梨之輕太子】天田振捕囚されても尚つのる同母妹への愛 天だむ 軽の乙女 したたにも 寄り寝て通れ 軽乙女等 [阿麻陀牟 加流袁登賣 志多多爾 理泥弖登富禮 加流袁登賣杼母] [_86]【木梨之輕太子】夷振之片下愛する同母妹の貞節を願う 大王を 島に葬らば[意富岐美袁 斯麻爾波夫良婆] 殊をこそ[許登袁許曾] [_88]【軽大郎女】どうにもならず軽皇子のもとへ 山たづの 迎へを行かむ[夜麻多豆能 牟加閇袁由加牟] [_89]【木梨之輕太子】愛する同母妹の来伊予時 大峰には 幡張り立て 小峰には 幡張り立て 大峰にし [意富袁爾波 波多波理陀弖 佐袁袁爾波 波多波理陀弖 意富袁爾斯] [_90]【木梨之輕太子】心中に当たっての相思相愛確認 斎杙を打ち 下つ瀬に 真杙を打ち 斎杙には 鏡を懸け 真杙には 真玉を懸け [伊久比袁宇知 斯毛都勢爾 麻久比袁宇知 伊久比爾波 加賀美袁加氣] 真杙には 真玉を懸け[麻久比爾波 麻多麻袁加氣] ------------------------- 📖仮名案出の端緒 📖"之"文法の入り口 📖助詞<の>は乃でもよいのか 📖"ア"と"あ"を規定 📖語気詞の扱い 📖特別感嘆詞"然者" 📖接続詞不要の社会 📖ゴチャゴチャ表記の理由 📖構造言語文法は不適 📖句間字と文末字の重要性 📖膠着語の本質 📖日本語文法の祖は太安万侶 🗣📖訓読みへの執着が示唆する日本語ルーツ 📖日本語文法書としての意義 📖倭語最初の文法が見てとれる 📖てにをは文法は太安万侶理論か 📖脱学校文法の勧め 📖「象の鼻は長い」(三上章) 📖動詞の活用パターンは2種類で十分 📖日本語に時制は無いのでは 📖日本語文法には西田哲学が不可欠かも 📖丸暗記用文法の役割は終わったのでは 📖ハワイ語はおそらく親類 📖素人実感に基づく言語の3分類 📖日本語文法入門書を初めて読んだ 📖書評: 「日本語と時間」 📖日本語への語順文法適用は無理を生じる (C) 2022 RandDManagement.com →HOME |