表紙
目次

📖
■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.8.19 ■■■

鬼と儒の樹木

「卷十八 廣動植之三 木篇」に、槐樹の話が収載されている。・・・

京西持國寺,寺前有槐樹數株,
金監買一株,令所使巧工解之。
及入内回,工言木無他異,
金大嗟,令膠之,曰:
 “此不堪矣,但使爾知予工也。”
乃別理解之,
毎片一天王,塔戟成就。

長安の西[京西]に持國寺がある。
その寺の前に槐樹が数株あった。
監職の金が、そのうち1株を買い、
使っている匠にその樹木をバラバラにさせた。
その匠、内側をひとわたり当たると、
 この木には他と変わった所はありません、と言った。
金は舌打ちして、ガッカリ。
ともあれ、膠でくっつけて元通りにしておけ、と。
そして言うには、
 「そんなことでは、匠の任に値しないゾ。
  工芸の凄さを、お前に知らしめてやろう。」
そこで、今度は、対象の筋目を解釈しながら、
 バラバラに分けていった。
その一片、一片毎に、天王の像が1つでてきた。
そして、最後には、
 塔と戟が成就と相成ったのである。


そもそも、この木は"鬼"の樹木だと、楊元も語っているのである。[→]
小生は、段成式が字としている柯古の"柯"は自分槐樹の枝を指していると見ているせいもある。酒に酔って槐樹の下で寝てしまう夢話を指している訳である。[→]

ともあれ、長安の街路は槐樹だらけだったようである。怪な樹木として登場しており[→]、数々の「長安の奇譚」が伝わっていたのである。・・・【東02 大寧坊】【東08 宣平坊】【西08 崇賢坊】
但し、「卷一 忠誌」では、槐樹上に白鵲到来とあり、到来するのは鬼だけではない。[→]
これは、儒教的立身出世的社会での鬼的樹木イメージと言えなくもない。日本にはその名残がある。[Japanese pagodatree]   「出世記念の木」[2013.7.26]

このような見方をすると、儒教の木とは楷かも。
成式、さらりと一行。・・・

【楷】,
孔子墓上特多楷木。

孔子の墓の上には特に【楷樹】が多い。

説明はこちらで。 「孔子廟の木」[2013.12.22]

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>>    トップ頁へ>>>
 (C) 2017 RandDManagement.com