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観光業を考える 2005年12月26日
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六本木ヒルズと丸の内の違い…

 汐留と品川のビル群を続いて眺めると、どうしてもその差の大きさを感じてしまう。
  → 「汐留のビル街探訪 」 (2005年12月5日)
  → 「品川のビル街探訪 」 (2005年12月19日)

 汐留はなんとかして、独自性を作り上げようと、地域全体を考えながら、それぞれのビル設計者や広場設計者が知恵を絞った様子が見えるのに対して、品川はそのようなものではなさそうである。
 ビルはそうそう簡単に立替などできない。街を作るつもりなら、品川地区はもう少し考えるべきだったのではなかろうか。

 どうしてこうなったのか考えてみたが、要するに、品川駅は、新幹線も停車するし、京浜急行の羽田行もあるから、交通至便でありビジネスマンが働く上では便利だから発展間違いなしという安易な発想があるのではなかろうか。検討ばかりするより、早くビル街を完成しようという力が働いたような気がする。

 一方、汐留は、汽笛一声の頃は栄えたJR新橋駅に近いというだけだから、知恵を絞るしかなかったといえる。

 ビル街のコンセプト案出はそう簡単ではない。

 例えば、丸の内の丸ビルを始めとする再開発は成功していると見ることもでできるが、あくまでも、その視点は集客力である。商業的な繁栄でしかない。

 もともと、この街の素晴らしさは、オフィス機能の対比の面白さにあった。

 明治期のロンドン風建物の「東京駅」に向かい合う形で、大正期のニューヨーク式建物「丸ビル」が聳えていていたからだ。(1)
 赤煉瓦を基調とした外部装飾性の高い建物を眺めると、思わず、赤煉瓦のオフィスが並んでいた時代を想像してしまう。

 消えてしまった「丸ビル」は、外観あっさりフロアは広いという、当時としてはビジネスライクなデザインだったと言えそうだ。
 丸の内ビジネスマンのワーキングスタイルが一新されたのである。
 まさに、時代を切り拓いてきたビルだった。

 さらに付け加えれば、昭和期の「中央郵便局」が横から、明治と大正の歴史を眺める配置になっている。
 こんな風景は滅多になかった。

 ここに立つだけで、オフィスビル街の歴史が垣間見えたのである。

 それでは、平成の「丸ビル」は、どうだということになろう。

 一言でいえば、歴史の“断絶”と言ってよいのではないか。

 これをオフィスビルと呼べまい。ビジネスゾーンとは9〜34階で、下層階はショップとレストランであり、その顔はあくまでも商業ビルなのだ。(1)
 このビルには、オフィスの香りはほとんど感じない。平成のオフィスビルのコンセプトとして、何を提起したのか聞いてみたいものである。
 せっかく昼間に人が集まるし、東京駅という交通至便な一等地だから、集客力を最大限お金に変えようという考え方としか思えないのである。

 実につまらぬ。
 こんなビルで、ビジネスマンの知恵を生かして企業が発展するものだろうか。

 などと語ると、それでは「六本木ヒルズ」はどうなの、と声がかかりそうだ。
 こちらも集客力はピカ一である。ターミナル駅などないから、便利な場所とは言い難い。にもかかわらず、大繁盛である。しかし、丸の内とは違うのである。
  → 「「なんば」と六本木の違い 」 (2003年10月15日)

 表参道とは異なる形で、商業ビルの一形態としての顔をつくったことは間違いない。
  → 「表参道のビル探訪 」 (2005年12月12日)

 もっとも、「六本木ヒルズ」のコンセプトは“エキサイティングな文化都市”(3)ではあるが。

 確かに、この街の核は商業施設ではない。中心に聳える「森タワー」だ。これはまごうことなきオフィスビルである。今や、IPOやTOBの話題には欠かせない存在となりつつある場所でもある。
 新しいオフィスワーカーが働くビルとのイメージが確立したと言ってよいだろう。

 この「森タワー」ビルが優れているのは、デザイン自体が、そんな風情を醸し出している点である。外観は日本調を取り入れ、使い勝手では米国流という巨大ビルと言えそうだ。
 なかでも、この“巨大”さが重要である。日本では、これだけ広い面積のワンフロアはお目にかかれまい。
 これが、これからの時代を切り開くオフィスビルの要件であると語っているのではなかろうか。

 この街が引き締まるのは、「テレビ朝日」(4)の存在も大きい。

 メディア産業の存在というより、ビルそのものの効果である。
 オフィスビルで夜遅くまで働くビジネスマンにとって、顧客なき夜の商店街は冷たく寂しいものだが、ここでは、「テレビ朝日」のガラスビルから、煌々と輝く光が放たれる。このビルはどう見ても夜用なのだ。
 まさに不夜城である。24時間働くビジネスマンの心に響く建築といえよう。
 これこそ、日本を代表する建築コンセプトだと思う。秀逸である。

 日本の新しい世紀を切り開く人達に対する強烈なメッセージが投げかけられていると言えよう。

 --- 参照 ---
(1) http://www.marubiru.jp/04_special/history.html
(2) http://www.marubiru.jp/03_guide/zones.html
(3) http://www.roppongihills.com/jp/facilities/
(4) http://www.roppongihills.com/jp/facilities/tva/index.html


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