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■■■ ジャータカを知る [2019.6.2] ■■■
[84] 動物補遺

🐼ジャータカに登場する動植物を網羅的に眺めてきたが、あくまでも全体像を把握したいがため。学問的貢献をする気など無いから、厳密性などほとんど気にしていない訳だが、余りにおかしなところや重要なヌケがあるのも面白くないので簡単に点検してみることにした。
動物が沢山登場する本生譚は、[#322]DADDABHA墮落音で、世界がブッ壊れるというもの騒がせな兎の一言から始まる伝言ゲームのような話で、「兎→鹿→猪→水牛→野牛→犀→虎→象」という順番と記載したが[→犀]、日本語の紹介バージョンは様々なパターンがあるようだ。英訳を見ると以下のように並んでいる。
  ○兎hare
  ○鹿deer
  ○猪boar
  ●箆鹿elk
  ○水牛buffalo
  ○野牛wild ox
  ○犀rhinoceros
  ○虎tiger
  △獅子lion
  ○象elephant
適当に並べた創作ではない筈で、棲息地域を考えると、箆鹿はいかにも唐突。そもそもユーラシア寒冷地の針葉樹林帯棲息種だ。角が大きい鹿の一種ということではなかろうか。
尚、肉食獣が走るのはもっぱら狩。ライオンが驚いて疾走することは滅多になかろう。象をわざわざ追うこともしないし、気分を損ねて突進されれば避けるだけ。この譚では危険を避けるために疾走する被食タイプの草食動物だけ並べるのが筋。せいぜいが、象の後に、最終的にナンナンダと言いだす役割を与える位にするのが常識的シナリオだと思う。
ただ、虎だけは結構神経質というか、猫的な気分屋の性格があり、隠れていた水辺や茂みから猛然と走り出すことがある。そういう点で入っていてもおかしくはない。

さらに多くの動物が記載されているのは、[#536]KUṆĀLA"クナーラ"[鳩那羅]譚。
  ○象elephant
  ○瘤牛gayal
  ○水牛buffalo
  ○鹿deer
  ●ヤクyak/
    …おそらく、標高4,000m以下での飼育は難しい。黒牛の一種だろう。
  ○(斑紋)羚羊spotted antelope
  ○犀rhinoceros
  ●箆鹿elk/駝鹿
    …上述
  ○獅子lion
  ○虎tiger
  ○豹panther
  ○熊bear
  ○狼wolf
  ハイエナ[鬣犬]hyena/鬣狗
    シマハイエナ[縞鬣犬]triped hyena/条紋鬣狗はインド亜大陸にも棲息している。
  ○獺otter
  ●kadalī antelope
    …n.a. 羚羊の一種なのだろうが。[→]
  ●(欧州)山猫wild cat/歐洲野
    …インドには小型山猫はいるが、これは大型の山猫を指すのかも。[→猫(]
  ○(長耳)兎long-eared hare
  ---
  ●鶚[ミサゴ]osprey/鶚
    …単なる類と見た。[→鷲鷹・隼]題名にはMAHĀ-UKKUSA/大鶚が残る。
  ●山鶉partridge/斑翅山鶉
    岩鷓鴣[→]とみなした。
  ○エピオルニスelephant-bird/象鳥
    …マダガスカル島で17世紀頃絶滅。
  ○孔雀peacock
  ●高麗雉"common" pheasant/雉鷄
    …雉ではないと見る。野鶏の一種では。
  ◎(インド)郭公Indian cuckoo
  Kuṇāla bird
    …印度郭公としたが、別らしい。珠鷸[タマシギ]Painted-snipe/彩鷸とか。

----- 参考 -----
《曇無讖[訳]:「大般涅槃經(大乗・北本)」卷第一 壽命品第一に登場する動物》
〇如是我聞。
●爾時復有拘陀羅女。善賢比丘尼。
●爾時【復有一恒河沙】菩薩摩訶薩。 
●爾時【復有二恒河沙】諸優婆塞。 
●爾時【復有三恒河沙】諸優婆夷。 狐狼鵄梟G鷲烏鵲  狗  牛
●爾時【復有四恒河沙】毘耶離城諸離車等。 象 馬
●爾時【復有(應有六恒河沙)】毘舍離王。 象(六牙) 馬
●爾時【復有七恒河沙】諸王夫人。
●爾時【復有八恒河沙】諸天女等。
●爾時【復有九恒河沙】諸龍王等住於四方。 和修吉龍王 難陀龍王 婆難陀龍王
●爾時【復有十恒河沙】諸鬼神王。 毘沙門王
●爾時【復有二十恒河沙】金翅鳥王。 降怨鳥王
 【復有三十恒河沙】乾闥婆王…那羅達王
 【復有四十恒河沙】緊那羅王…善見王
 【復有五十恒河沙】摩羅伽王…大善見王
 【復有六十恒河沙】阿修羅王…婆利王
 【復有七十恒河沙】陀那婆王…無垢河水王 跋提達多王
 【復有八十恒河沙】羅王…可畏王
 【復有九十恒河沙】樹林神王…樂香王
 【復有千恒河沙】持呪王…大幻持呪王
  :
 【復有二十恒河沙】大香象王 羅象王 金色象王
    甘味象王 紺眼象王 欲香象王

 【復有二十恒河沙】師子獸王…師子吼王
 【復有二十恒河沙】諸飛鳥王…鳧 鴈 鴛鴦 孔雀
    乾闥婆鳥 迦蘭陀鳥  鸚鵡
    翅羅鳥 婆伽鳥 迦陵頻伽鳥 耆婆耆婆鳥

 【復有二十恒河沙】水牛 牛 羊
 【復有二十恒河沙】(四天下中)諸神仙人…忍辱仙  (閻浮提中一切)蜂王…妙音蜂王
●爾時閻浮提中比丘比丘尼一切皆集。
●爾時拘尸那城娑羅樹林。
●爾時四天王釋提桓因。
●爾時釋提桓因及三十三天。
●爾時欲界魔王波旬。
●爾時大自在天王與其眷屬無量無邊及諸天衆。
●爾時東方去此無量無數阿僧祇恒河沙數微塵等世界。
●爾時娑羅雙樹吉祥福地。 毒蛇  蝮 蝎

----- 参考 -----
闍那崛多[訳]:「佛本行集經」賢劫王種品
  《野獣》
伊泥耶獣
鹿
水牛
那羅迦獣
野牛
白象
師子  等
  《飛鳥》
鸚鵡
拘翅羅

孔雀
迦陵頻伽
命命

山鷄
白鶴
遮摩迦鳥
蘭摩  等
  《虫@池 水性》


黿




蜂  等
  《小鳥》




白鷺
鶿鴛鴦  等


----- 参考 -----
反仏教を旗幟鮮明に打ち出した唐詩人も、仏教経典の動物づくしの影響はモロに被っていたようだ。
   「陸渾山火和皇甫堤用其韻」 韓愈《昌黎集》
   :
  虎熊麋豬逮猴猿
  水龍龜魚與黿
  鴉鴟雕鷹雉鵠
  𤏶孰飛奔
   :


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