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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.7.16] ■■■
[382] 盲目開眼譚
盲目開眼は誰にでもわかる直截的なご利益なので、世間的には、すぐに話が広まる。従って、様々な伝承がある筈で、「今昔物語集」が収載対象にしている本に掲載されているのはもともと厳選譚だろう。

  【天竺部】巻二天竺(釈迦の説法)
  [巻二#38]天竺祖子二人長者慳貪語
 天竺に親子二人の長者がいた。
 両家とも大いに栄え、財宝豊かだったが、
 極めて慳貪で、布施する心が無かった。
 乞食が来ても、門内に入れず、追い払わせていた。
 そのうち、父の方の長者は罹病。すぐに死んでしまった。
 そして、盲目の乞食の女の腹に宿ることになり、
 盲目で生まれてきた。
 七才になった。母子共に乞食として生活。
 乞食の子が、子の方の長者の家に行くと
 門番不在なので、家の中に入ってしまい
 長者の居る前の庭に出て怒りをかった。
 その時、門番が戻って来て、乞食の子を投げ飛ばした。
 地面に叩きつけられ手が折れ頭は裂けてしまったので
 子供は大声で泣いた。
 母がとんできて抱きしめ泣き悲しむ。
 釈尊はその情景を見て哀れみ、やって来て
 乞食の子にに告げた。
 「汝は、この長者の父である。
  前世、慳貪深く、布施する心が無く、
  乞食を厳しく追い払っていた。
  今、その報いを受けているのだ。
  それは極く軽い苦しみにすぎない。
  この後、地獄に堕ち、
  無量劫の間、苦しみを受けることになる。
  哀れなことだ。」と。
 そして、近寄って、頭を撫でたのである。
 すると、乞食開眼。


拘拏羅太子譚は、人為的に抉られた失明なので、同類と見ない方がよかろう。
  【天竺部】巻四天竺 付仏後(釈迦入滅後の仏弟子活動)
  [巻四#_4]拘拏羅太子抉眼依法力得眼語📖好眼鳥
  「大唐西域記」巻三 叉始羅國タクシャシラ 五、南山堵波及拘浪拿太子故事
 十二因縁の法の説法を、国中の人達が聞き
 一人一人が貴んで流す涙を集め
 拘拏羅太子の眼を洗うと抉られた目が再生。


天竺での盲目開眼譚として、「今昔物語集」編纂者がよくご存じだった筈の「三宝絵詞」上巻#13"施無"は収録されていない。主題は孝養だが、テーマの詰め込みすぎで、開眼の繋がりが今一歩だから、翻案もしずらいからだろう。
 天竺の長者 施無の孝子は、
 盲目の両親が仏道修行での入山で面倒を見ていたが、
 国王が鹿と誤認し射殺してしまった。
 加護する帝釈が天眼で見つけ、薬を与え矢を抜き蘇生させた。
 国王は以後殺生を止める。老夫婦も開眼。


さて、本朝の方だが、功徳は様々。
現在は、観音、地蔵、薬師参詣やご霊水で洗うタイプがご利益ありとされているようだが、古くは経典読誦も多かったようだ。・・・

  【本朝仏法部】巻十二本朝 付仏法(斎会の縁起/功徳 仏像・仏典の功徳)
  [巻十二#19]薬師仏従身出薬与盲女語📖伝教大師の薬師仏像
  霊異記下11二目盲女人帰敬薬師仏木像以現得明眼
 盲目の女人が薬師如来像に開眼を祈った。
 像の胸から脂の如きものが出てきたので、
 それを食べると開眼。


  【本朝仏法部】巻十三本朝 付仏法(法華経持経・読誦の功徳)
  [巻十三#18]信濃国盲僧誦法花開両眼語
  験記下91妙昭法師📖柿の実
 盲僧妙昭は長年に渡り「法華経」信奉。ついに開眼。

  [巻十三#26]筑前国女誦法花開盲語
  験記下122筑前国の盲女
 筑前太宰府官人の妻が、突然、目が見えなくなった。
 泣き嘆くだけだったが、
 前世の報いと考え、相談の上法華経修習。
 後世の功徳のため日夜法華経読誦。
 その4〜5年後のこと。
 夢に貴僧が登場し、両眼を撫でてくれた。
 その後、両眼が開き元通りに。
 本人、夫、息子、眷属皆感激。
 近隣の人も遠くの人も、国では、この事を聞いて尊ぶこと限りなし。
 女人はますます信仰心厚く、昼夜常に法華経読誦。
 さらに、書写奉り供養恭敬した。


  【本朝仏法部】巻十四本朝 付仏法(法華経の霊験譚)
  [巻十四#33]僧長義依金剛般若験開盲語📖金剛般若経
  霊異記下21沙門一目眼盲使読金剛般若経得明眼
 僧長義は片方の眼が見えなくなった。
 大勢の僧に金剛般若経を3日3晩読誦させると開眼。


  [巻十四#19]備前国盲人知前世持法花語📖前生蚯蚓の僧
  験記上27備前国の盲目法師
 比叡山根本中堂で子供の視力回復祈願。
 前世の報いだったことを知る。


  【本朝仏法部】巻十六本朝 付仏法(観世音菩薩霊験譚)
  [巻十六#23]盲人依観音助開眼語📖観音ノ寺参詣
  霊異記下12盲男敬稱千手観音得明眼
 盲目の男が薬師寺東門で日摩尼の御名を唱えていた。
 人が来て、男の眼は治る。


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