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■■■　太安万侶史観を探る　2014.2.27　■■■ 出雲の八千矛文化が広がる スサノヲが大御�~となり、地域限定とはいえ、ようやく王国が誕生した。 　　　○ 太安万侶史観 上つ巻○ 　　【第１期】 日本列島に未だヒトの影無し[→] 　　【第２期】 ついに、日本列島にヒトの営み始まる[→] 　　【第３期】 日本列島に海人文化圏ができあがる[→] 　　【第４期】 社会が発展し、火のイノベーション発生[→] 　　【第５期】 武力と呪術の祭祀政治が当たり前に[→] 　　【第６期】 祭祀社会が広まり国家樹立へ[→] 　　【第７期】 旧文化を包含する習合的御祭宗教が確立[→] 　　【第８期】 貴種と土着部族の婚姻による王国の成立[→] この先は、大穴牟遲ノ�~が、葦原ノ中ッ國の偉大な統括者として「大國主ノ�~」になるまでの神話とされる部分に入る。 当然のことながら、オオナムヂは王国創始者たるスサノヲの血族である。正妻系の６代目だ。系譜からは、どのような婚姻関係かはわからぬが、治水に関係していそうな土着氏族ではなかろうか。出雲では、氏族毎に地味な地域開発が続いていたいうことかも知れぬ。 いうまでもなく、この一帯は、すでにスサノヲがつくりあげた文化圏。つまり、イザナギ-スサノヲという貴種の血をひくことが「王」としての必要条件と化している訳だ。しかし、６代も続けばその条件を満たすだけなら数多くの成人が存在することになる。血族内で熾烈な競争が生まれて当然。それを決するのが、有力土着勢力との婚姻関係の有無。 オホナムヂの場合、兄弟八十�~の末席的扱い。本来なら、とても王位を狙う立場ではなかった。しかし、新しい時代を切り拓いたことで、それを突破したのである。 そのとっかかりが、"気多の前"(因幡国気多郡)に於ける稲葉之素莵の事績。 莵�~が「八十�~は必ず八上比賣を得たまはじ。帒を負ひたまへども、汝が命ぞ獲たまひなむ」と、荷物持ちとしての奴隷的な状態のオホナムヂに言霊を与えるシーンがハイライトである。 言うまでもないが、この莵�~とは隠岐の島に渡ろうとしていた訳であり、日本海越えの大陸との交流に問題が生じていたのをオホナムヂが知恵により解決させたことを暗示していそう。そのような力があるのだから、土着氏族がヒメとの婚姻関係締結に前向きになるのは当然といえよう。 そのため、八十�~との王権争奪戦が始まることになる。 もともと基盤は弱体だったから、伯伎ノ國で敗退したが、お隠れになった別天�~の�~産巣日ノ�~が登壇し、勢力が復活する。先進文化圏の薬石手法を導入できる文化的素養が備わっていたことを意味しよう。それでも、周囲との武力衝突は続き、木ノ國(紀州)の助力を得たりした訳だが、ついに意を決して覇権を握るべく動く。 それがスサノヲという祖先の栄光を得るための根ノ堅洲國行き。旧文化の色濃い社会との共存を図るべく、できる限り穏やかに婚姻関係締結に進もうと動いたのである。要するに、旧来の信仰踏襲に配慮しながら平定したということ。これによって、大量の「生大刀生弓矢」たる軍勢と、「天ノ沼琴」を用いる呪術を手にすることとなった。この結果、地域一帯から、敵対する八十�~勢力を追い払い、圧倒的な優位性を誇ることができるようになったのである。先進文化圏の高天ノ原に上れるほどの力を持てそうとの期待感も生まれたことも、支配力強化にプラスに働いたに違いない。そして、「國作り始めたまひき。」 出雲地域支配がほぼ確立すると、次の一手は高志ノ國(辺境の越)への進出。翡翠玉が採れる川の象徴とも言えそうな名前の、沼河比賣との新たな婚姻関係を成功裏に実現。強大な武力を誇った訳だが、それは大前提化してしまい、イザナギ-スサノヲの系譜を底流にした呪器による信仰統一が進んだと見ることもできよう。ここにおいて、オオナムヂは「八千矛の、�~の命」と称賛されるようになったのである。「矛」を象徴とする小国の連合体という、葦原ノ中ッ國を治める土台が出雲地域に完成したことになる。 後は、もともとの出雲勢力が嫌がるほど、一気呵成に勢力範囲が拡大しただけ。婚姻関係は、須世理毘賣、八上比賣、沼河比賣、多紀理比賣、�~屋楯比賣、鳥耳ノ�~とほぼ全方位。それぞれの系譜は、葦原ノ中ッ國をカバーするまでに。ここに至って、「大國主ノ�~」が生まれたと見てよかろう。宗教的にも、武力的にも、圧倒的な力を持つ「王」が代表権を握る国家連合が誕生したことになる。 (使用テキスト) 旧版岩波文庫 校注:幸田成友 1951---底本は「古訓古事記」(本居宣長) 新編日本古典文学全集 小学館 校注:山口佳紀/神野志隆光 1997 　古事記を読んで−INDEX >>>　　　　HOME＞＞＞ 　(C) 2014 RandDManagement.com