→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2021.7.28] ■■■ [208]針葉樹の意味は何だろう 「古事記」でも3種しか登場していない。 現代日本では、自然林は2割を切ってから随分と経っており、人工林とは針葉樹植林を意味しており、主流は3種だが、両者は一致しており、流石である。 我々のイメージでは王者は杉となろうが、花粉症発生の悪者扱いを受けることが多くなっている。 ただ、信仰的には広葉樹の常盤木感覚に対抗する樹木であるから、代表は松と考えるのが妥当だろう。📖神々しい御方を待つ木 そう思って「古事記」を眺めると、太安万侶の感覚の鋭さには舌を巻く。 針葉樹のなかでは、松が目に付くのは実は当たり前。更地化すると、最初に生えてくるのが松だからだ。しかし、そのため松林が存在していると考えてはいけない。里山と同じで、ヒトが面倒を見ている結果、残っているのであって知らん顔をすると消滅してしまう。赤松林の茸も手が入っていないとすぐに無くなるのである。 だからこそ、意気盛んだった頃を彷彿とさせる一本松の気高さが賞賛されたりもするのである。 ただ、海岸べり岩だらけの地の様な場所だと、この棲息条件に合う植物が渡来しないこともあり、黒松林が持続できることもある。過酷な場所なので、黒松だけが長寿に映ることになるが、条件が緩くなるとその地を譲ることになり、決して安定的な訳ではない。岬の一本松という情景は珍しいものではない。・・・ 《倭建命薨去譚@[12]景行》 到坐尾津前一松之許 先御食之時 所忘其地御刀不失猶有 爾 御歌曰: 尾張に 直に向かへる 尾津の岬なる 一つ松 吾兄を 一つ松 人に在りせば 太刀佩けましを 衣着せましを 一つ松 吾兄を そのあたりの情感表現は、「古事記」成立後ではあるが、以下が優れている。・・・ 同月十一日登活道岡集一株松下飲歌二首 市原王作@宴席744年 一つ松 幾代か経ぬる 吹く風の 音の清きは 年深みかも [「万葉集」巻六#1042] 山岳地帯の針葉樹林としては、檜&榲[=杉]が記載されている。 同時に蘿[=地衣類(生物学的には苔ではない。)]を付けているのが秀逸。針葉樹林は光を求める樹木の競争地帯で、適応した日陰植物以外に下生えの余地が無いことが少なくないので、地表が苔で覆われた様相を示しがち。樹木が殺菌物質も発生させるので、地表も単相のことが多く、広葉樹林帯と風景は様変わりである。・・・ 《八俣遠呂智譚》 彼目如赤加賀智 而 身一有八頭八尾 亦 其身生蘿 及 檜 榲 其長 度谿八谷峽八尾 而 見其腹者悉常血爛也 船材が杉になったことが記載されており、垂直に一本立ちする特徴に着目した巨木の調達が始まっていたことを示唆している。・・・ 《本牟智和気王譚》@[11]垂仁》 故率遊其御子之状者 在於尾張之相津 二俣榲 作二俣小舟而 舟遊びにわざわざ尾張の湊に行くとも思えないし、山越えさせてまで奈良盆地に取り寄せる必要があるものか気になるところだが、尾張の山岳部で異形の杉樹が発見されたので、是非とも献上ということか。 ○○杉という異形信仰はかなり後世のことだから、分岐部を船首にした非構造船のカタマランで、板を渡すことで平坦な座敷を設けることができたのであろう。 宮殿の材に檜が使われるようになったのはいつ頃か定かではないが、杉材が使われているなら、その時代に檜材も利用されていたと考えて間違いないだろう。 宮地名に檜が登場している。・・・ 《建小廣國押楯命譜@[28]宣化》 建小廣國押楯命座檜埛之廬入野宮 《天國押波流岐廣庭天皇譜》@[29]欽明》 天皇 娶檜垧天皇之御子 石比賣命 生御子・・・ 見慣れない漢字が2種使われているが、都の奥まった場所という意味であろう。場所は明日香の南で📖、ほとんど開墾されておらず鬱蒼とした地だったということか。 --- 📖[分類の考え方]コニファー類@2014 --- [key:J:固有種] <真性針葉> 【日本の二葉松】赤松 黒松琉球(赤)松 【日本外の二葉松】台湾赤松 【海外の三葉松】大王松 【日本の五葉松】這松 五葉松 【海外の五葉松】朝鮮五葉 ストローブ松 マケドニア松 ヒマラヤ五葉 【日本の二十葉松】落葉松[落葉樹] 【渡来の5本束二十葉松】ヒマラヤ杉 レバノン杉 【海外の多数葉松】鬼松 <細船状葉 羽型> 【樅・白檜曽】 📖卒塔婆に使う木@2012 【栂】 【栂椹】 <唐檜> <南洋杉> <槙・梛[広葉]> <高野槙J>📖正真正銘の木@2012 <檜葉> 【超細葉】杉J 鼠刺 【細長葉】広葉杉 曙杉 沼杉[落葉樹] 【鱗葉】檜 椹 明日檜J 黒檜 匂檜葉 児手柏 伊吹 貝塚伊吹 姫榁 <糸杉> <榧> <一位> 📖呪術木@2012 (C) 2021 RandDManagement.com →HOME |