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■■■ 「古事記」解釈 [2022.9.17] ■■■
[624]「古事記序文講義」(3:本質論は正調漢文で)
「古事記序文講義」は、序文こそが、本の中味を示しているといの姿勢。要約や経緯等が記載されているのだから、当然と云えば当然。

それに、現代の書籍でも、序文を立ち読みして購入するか決めたりする位で、そこから本の全貌を措定するのは理ににかなっていると云えよう。

しかし、小生は、「古事記」にはその手は通用しないと考えて来た。

現代のセンスなら、血みどろの皇位継承の戦いや、従属しない輩の騙し討ち、歯止めなき女性遍歴、と云ったお話満載であって、外交の話を欠くし、政治的に重要な決断を記載しようと考えて編纂されているとは思えないからだ。
序文から受ける印象と、本文の内容の落差はとてつもなく大きいと言わざるを得ないのである。
それだけでは無い。
本文は本朝初の文字化された倭文だが、序文は、中華帝国のほぼ公的形式を踏襲した漢文だからだ。古事記上梓の精~を示しているのは序文の方とは、言い難かろう。

・・・「皇道の本源」を語りたいが故に漢文を重視しているとして、ここで完としてもよいが、読み違え問題を考えると、そういう訳にはいかない。

小生は、序文とは、完成した「書」を天皇に奉じるに当たって、形式的に不可欠な飾り文と見なしたが、そのような輕い扱いをすべきではないということになるからだ。
序文は、その当時の実感を反映した、"真っ当な"文と見なす訳だ。

換言すれば、天武天皇の詔とは、「皇道の本源」的な書を仕上げよ、ということだが、太安万侶はそれに120%応えたことが序から読み取れる、と「古事記序文講義」は主張していることになろう。それこそが、第一級の質で書かれた漢文たる由縁と考える訳だ。

「古事記序文講義」の構成は以下のようになっており、「古事記」序文の各句は、中華帝国の天子への上奏の際に用いてかまわない、漢文書式にすべて完全に適合しており、句以外の文章についても上表文様式通りであるとの細かな説明がなされており、中華帝国で通用する質の高い文章で書かれているのは間違いなさそうだ。
しかし、本文はすべて漢字表記だが、漢文ではないので誰も読めない。そこまで拘る必要は無い。このことは、「古事記」の対象読者たる天皇・皇族層・統治機構に関与している貴族層と主要中堅専門官僚は概ね、中華帝国漢文による標準的表記方法に熟達していたと考えるのが自然だろう。
そうなると、漢文序文と倭文本文が違うという感覚は、現代人なら当たり前のことではないかと思うが、この当時はそうではなかったことになる。
つまり、朝廷は熱狂的状況だったことになろう。
そのなかで事態を冷静に眺めていたのは太安万侶だけ。稗田阿礼と相談しながら、淡々と「古事記」を書き上げていったと見ることもできそう。

そうなると、「古事記」についての見方も変えざるを得なくなろう。天武天皇の思想に合わせて大胆に編纂された内容と見ざるをえなくなる。その妥当性はなんともいえないが、驚くべき熱狂が生まれていたとすれば、そう考えてよいのでは。

こんな風に考える切っ掛けになった📖、○○・仁徳(神功⇒崇神)について確認(皇后 or 帝王)した上で、その辺りの見方を別途書いていこうと思う。

【「古事記序文講義」の構成】
<序>著者(山田孝雄)
<序>編纂兼発行者/版元(宮司)
  --- 口繪(解説附)---
<古事記序文>
<古事記の本質>
❶≪國家の經緯の歷史を略敍≫
 - 國家成立の事 -
 ① 神祇のあらはれたまうたこと
  ②我が国家の成立
    國土國民はすべて血統的一體である。
  ③皇統の源流 三種~器の起源
 ④ 天孫降臨
 ⑤ ~武帝の宏業
 -     -
 ⑥ 崇~帝の敬~
 ⑦ 仁徳帝の人民愛撫
 - 中興の業 -
 ⑧ 成務帝の國郡制定
 ⑨ 允恭帝の氏姓を正された事
❷≪古事記撰進の事情≫
 天武天皇の威徳を賛美
   ・天武天皇の勅を奉じてこの撰錄が着手せられた。
   ・元明天皇がその御遺業を完成しようとして勅を下された。

❸≪撰錄の事情≫
<序文の解釋>
○上表文:
 事柄を標徴して、明白ならしめ、
  以て天子に告ぐるもの
○13句文章構造:
 "雜(韻を押さない。)筆"之大體[「作文大體」]
  發句*
  壯句 緊句 長句
  傍句*・・・e.g. 然 所以 故 寔知 是以 等々
  隔句
    (輕)・・・上4 下6
    (重)・・・上6 下4
    (疎)・・・上3 下56789等
    (密)・・・上5以上 下6 or 3
    (平)・・・上4 下6 又は 上6 下6
    (雜)・・・上4 下57〜12 又は 上57〜12 下4
  漫句*・・・對のない散文
   送句*・・・句の終につける短い語 e.g. 興 矣 等々
   (*:對のない平仄にかかわらぬ句)
○言は要にあり、理は約に歸す。
○筆は皆四句を一對となす。
 {上}5・6・7言
 {下}然 之 於 而
本文解釈
【「古事記序文講義」指摘の漢文構造】
臣 安萬侶 言
   ❶≪國家の經緯の歷史を略敍≫
0〜7の数字と題は本サイトで使ったもの。
《混沌》
【發句】
【漫句】  
《造化3神⇒二靈(伊邪那岐命+伊邪那美命)⇒群品之祖(国生み・神生み)
【傍句】
【雜隔句】
《洗目(天照大御~+月読命)⇒滌身(海神)
【傍句】
【輕隔句】
《太安万侶の解説》
【傍句】
【雜隔句】
🈚須佐之男命狼藉追放〜天岩戸
🈚出雲(須佐之男命〜大国主命)
《継承の基本思想》
【傍句】
【長句】
【送句】
【長句】
《天孫降臨⇒東遷》
【傍句】
【長句】
【輕隔句】
【緊句】
🈚海神宮(山幸彦海幸彦)
○○・仁徳成務・允恭》 神功⇒崇神
【傍句】
【雜隔句】
[結論]速度・手法は色々だが対応怠らずの歴史》
【傍句】
【緊句】
【傍句】
【長句】
   ❷≪古事記撰進の事情≫
各題は本サイトで使ったもの。
曁飛鳥清原大宮 御大八洲天皇御世

【緊句】
【長句】
殆ど"壬申の乱"
【傍句】
【雜隔句】
行軍賛歌
【漫句】
【緊句】
敵軍殲滅 意気揚々
【平隔句】
【漫句】
完璧な勝利をおさめ、飛鳥浄御原宮で即位。
【傍句】
【輕隔句】
【緊句】
【漫句】
本朝天皇は中華帝国皇帝と同格と言うか、それ以上。
【緊句】
【長句】
【長句】
【長句】
最後はベタ褒め。
【緊句】
【平隔句】
   ❸≪撰錄の事情≫
 📖稗田阿禮に不可思議な点なし
【傍句】
【傍句】
【漫句】
【緊句】
【漫句】
【傍句】
【長句】
【送句】
【傍句】
【緊句】
【漫句】
【漫句】
【壯句】
【漫句】
【緊句】
【傍句】
【漫句】
【傍句】
【漫句】
【送句】
 📖元明天皇は武則天を目指したか
【傍句】
【漫句】
【緊句】
【長句】
【緊句】
【重隔句】
【傍句】
【緊句】
【送句】

【長句】
 📖[附]≪序文≫記載方針
【漫句】
【漫句】
【傍句】
【漫句】
【長句】
【傍句】
【傍句】
【雜隔句】
【傍句】
【長句】
【傍句】
【長句】
【漫句】 📖日下と帯の読み再考
【漫句】
【漫句】
【漫句】
【漫句】
 📖書誌的事項から想像すると
【漫句】
    臣安萬侶 誠惶誠恐 頓首頓首
  和銅五年正月廿八日
  正五位上勳五等太朝臣安萬侶


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