表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.1.24 ■■■ 道教本草「本草綱目」には「酉陽雜俎」からの引用が目立つが、特別な扱いをしている訳ではない。本草的執筆意図なきものでも平然と掲載しており、単に網羅的に収録していることを見せたいだけの書であることがよくわかる。ただ、その後の中薬の基本テキストとされた書なので、成式が選択した動植物では、どのようなものが該当するかを見ておいた。 → 「食材本草」 「蟲本草」 「果物本草」 「木本本草」 「本草草部の核心」 ただ、無機物については、方向性が違うので、その辺りの特徴がわかる事例も。 → 「反本草金石」 「酉陽雜俎」には、道教の本質を語る「卷二 玉格」があり、そこには、"仙藥"32種の名称が記載されており、続いて、"藥草異號"が掲載されている。薬草といっても、石の類も入っており、"凡二十四名"ということで〆られている。 これは、北周 王延[唐 王懸河 編]:「三洞珠囊」卷之四懷四の24種を参考にした文章と見て間違いなさそう。 そこに書かれているのはすべて口訣。言うまでもないが、文書に一切記さず、口伝の奥義のことだが、それを公開したと称している訳だ。もちろん、道教のネタ本である。 口訣なのだから、異説も当然あるゾとばかり、成式は一部を削除し、異なるモノを入れている。 まず、真正道教ネタ本の方から引いておこう。・・・ 第一絳陵朱兒口訣云是丹砂巴越之精上者 第二丹山日魂口訣云是雄黄取洞明者 第三玄臺丹華口訣云是雌黄 第四青要玉女口訣云是空青 第五靈華液腴口訣云是棊、香 第六北帝玄珠口訣云是消石 第七紫陵文侯口訣云是紫石英 第八東華童子口訣云是青木香 第九白素飛龍口訣云是白石英 第十明玉神朱口訣云是眞瑰拾芥者 第十一五精金羊口訣云是陽起石 第十二雲華飛英口訣云是雲母光明白者 第十三流丹日膏口訣云是胡粉 第十四亭Q獨生口訣云是鷄舌香味辛者 第十五碧陵文侯口訣云是石黛 第十六倒行神骨口訣云是戎鹽 第十七白虎脱齒口訣云是金牙石 第十八九靈黄童口訣云是石硫黄 第十九陸虚遺生口訣云是龍骨舐之附舌者佳也 第二十威文中王口訣云是虎腦 第二十一沈明合景口訣云是蚌中珠子 第二十二章陽羽玄口訣云是白附子 第二十三緑伏石母口訣云是磁石 第二十四中山盈脂口訣云是太一餘粮取中央黄者 二十四種合爲八景四蘂五珠絳生神丹也此丹服一兩即頭生九晨之光面有玉華飛映寶曜洞觀天下造詣紫虚出入玉清寢宴晨房也--- 一方、「酉陽雜俎」はこうなっている。 上記対応番号を振って、出自不明情報による推定で中身を書いておいた。・・・ 藥草異號: 丹山魂−雄黄、[2]・・・鶏冠石(硫化鉱物) 青要女−空青、[4]・・・孔雀石 曾青も 靈華液腴−棊、香、[5]・・・樹脂系香料(擬似乳香 没薬) 北帝玄珠−消石、[6]・・・水硫酸ナトリウム/芒消の純粋なもの 東華童子−青木香、[8]・・・馬之鈴草の乾燥根 五精金−陽起石、[11]・・・角閃石 流丹白膏−胡粉、[13]・・・貝殻系炭酸カルシウム 亭靈獨生−雞舌香、[14]・・・丁子 倒行神骨−戎鹽、[16]・・・食塩 白虎脱齒−金牙石、[17] ・・・黄鉄鉱 靈黄−石硫黄、[18]・・・硫黄塊 陸虎遺生−龍骨、[19]・・・大型哺乳類(象類)骨化石 章陽羽玄−白附子、[22]・・・黄花鳥兜の塊根 緑伏石、[-]=磁石[23]・・・磁鉄鉱 母慈石、〃 絳晨伏胎−茯苓、[-]・・・猿之腰掛類の茯苓茸/末都保止[マツホド] 伏龍李−蘇牙樹、[-] n.a. 七白靈、[-]・・・エリンギ類の白霊茸/杏鮑俣I変種か? 蔬−薤白華, 一名守宅,一名家芝。[-]・・・辣韮[ラッキョウ]の鱗茎 凡二十四名。 そうなると、成式先生が削除したものは以下のようになる。・・・ 丹砂[1]・・・硫化第二水銀 雌黄[3]・・・三硫化砒素の塊 紫石英[7]・・・蛍石 白石英[9]・・・石英 眞瑰拾芥者[10]・・・琥珀か? 雲母[12]・・・珪酸塩@花崗岩中 石黛[15]・・・石墨 虎腦[20]・・・虎頭蓋骨特定部位 蚌中珠子[21]・・・烏貝類の淡水真珠 太一餘粮取中央黄者[24]・・・酸化鉄結合礫 禹余糧と同類 水銀、砒素、石英、雲母、石墨は止めた方がよいと考えていたか。虎骨とか、淡水真珠、琥珀のような希少品も避けたようである。 面白いのは、【サルノコシカケ】【エリンギ】【ラッキョウ】が入っていること。 そうなると、伏龍李とは、孔子廟に生えている茸のことだったりして。薬効は芸妓遊びが嫌いになることか。 茯苓には、こだわりがあるのかも知れない。・・・ 成式常見道者論【枸杞】、【茯苓】、【人參】、術形有異,服之獲上壽。 [續集卷二 支諾皋中] 伏苓, 沈約[441-512]謝始安王[蕭逢光468-499]賜【伏苓】一枚,重十二斤八兩,有表。 [卷十 物異] (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |