↑ トップ頁へ |
2003.12.14 |
|
|
***イラクに関する政策論議が盛んだが、大きな流れを見て対応を考える必要があろう。その場しのぎや、情緒的対応だけは避けて欲しい。*** 戦争の時代 6:国連の意義…イラク戦争の背景には、資源争奪戦があることを述べてきた。→ 1米国の方針:、 2:資源争奪戦 そして、イラクと同根の問題を抱える、コーカサス地方の政情を眺めてみた。 → 3:アゼルバイジャンの火種、 4:グルジア政変、 5:アルメニアの成功 イラク、アゼルバイジャン、ロシアといったエネルギー資源保有国は、資源を武器にして地位を高めようと動く。これは至極当然といえよう。 一方、エネルギー資源不足の大国にとっては、エネルギー輸入は国家の生命線である。入手できなければ国の存亡にかかわる。従って、資源保有国が覇権的な動きを始めたり、資源提供を拒む恐れがありそうなら、予防策を打つのは当然の動きと言えよう。大国だからと言って、悠長な姿勢をとれる筈がない。 といって、武力による資源争奪などできない。 そうなれば、「汚い」と呼ばれようが、宗教や民族の対立を利用して、資源確保に動かざるを得まい。自国のエネルギー安全保障がかかっているから必死である。大国であっても、自国の存亡を揺るがしかねない問題だから、鷹揚に構えることなどできない。 これが、現実世界である。 そして、忘れてはならないのは、20世紀は戦争の時代だった、という点だ。現時点でも、ようやく、大国間の揉め事を穏便に解決する暗黙の合意が作られたにすぎない。ミクロで見れば、過去の歪みが至る所に残っている。紛争の種は数え切れないほど多い。大国の軍事圧力でなんとか暴発を抑えているといった状態である。 国家間紛争はどうにか治めているが、内政干渉はできないので、逆に、国内紛争は激化しているともいえる。矛盾は国内紛争として現われてしまう訳だ。国内紛争に対処できる国際的な枠組みは無いから、結局のところ、多くの国で、平定のために軍事独裁化が進んでいる。 こうした状況下で、大国が、対立勢力の一方を支援したり、他国への武力介入を行えば、必ず批判を浴びる。 確かに、大国の一方的な理屈での介入や、胡散臭い目的の武力平定が目に付く。その点では、批判自体は正当だと思う。 しかし、いくら正しくとも、余りに空しい。 批判に応じて、武力介入しなければ、国内圧政問題は放置される。資源国の勝手な振舞いも助長されることは間違いあるまい。そうなれば、大国のエネルギー安全保障も揺らぎかねまい。 武力への批判は正当であっても、解決の代替案がなければ、問題の先送りでしかない。 ・・・現実直視から出発しないと、いつまでも空虚な批判が続きかねないのだ。 強権政治に対抗する武器は、強大な武力しかない。そして、その役割を果たせそうなのは、現時点では米軍しかない。先ずは、この現実を確認すべきだろう。 実際、米軍の力無しには、欧州で発生した残忍な民族浄化は阻止できなかった。米軍介入がなかったら、どうなっていたかを考えると身の毛もよだつ。 さらに、忘れてならない視点がある。 ソ連/東欧の軍事独裁政権崩壊だ。米国の軍事圧力についていけず、スターリニズム国家が崩壊し、東西の壁が一気に壊れたのである。 米国の圧倒的軍事力が、ソ連圏の解放をもたらした、と見ることもできるのではないだろうか。 このような現実を眺めれば、単純な「反米」運動ほど空しいものはない。奢れる米国に対する批判として、心情的には理解できるが、同調する気にはなれないのである。もしも米軍が手を引けば、軍事独裁国が勝手に動き始める。そうなれば、地域紛争は勃発するし、圧政/弾圧政治は蔓延するだろう。その結果、世界中で政情が不安定化し、新たな「戦争の時代」に突入しかねない。 平和を実現したかったら、米国を巻き込んだ国際的枠組みを作る以外に手はないのだ。 といって、米国指導の下にすべての国が従う訳にはいくまい。どうしても、米国も参加する、米国の軍事力に裏付けられた国際的枠組みが必要なのである。当然ながら、そのような組織は国連の安全保障理事会以外にはない。 (任意の多国籍軍を編成したところで、各国の国内支持基盤は安定していないから、いつ分解するかわからない。国連の無力化は目立つが、代替できる組織は無い。) 従って、米国の政策転換時を捉え、安全保障理事会が米軍の活動を支持するしか、解決の道は残っていない。 そのような動きは、決して難しくはない筈だ。 すでに、Shashi Tharoor国連事務次長(広報担当)が、Foreign Affairsの寄稿文で、米国の巻き込み方法を示唆している。この精神を生かせばよいだけの話しだ。 「Why America Still Needs the United Nations」(http://www.foreignaffairs.org/20030901faessay82505/shashi-tharoor/why-america-still-needs-the-united-nations.html) 各国は、米国の要請に応えるのではなく、安保理決議に同意して動けばよいのだ。米国は、国連の直接的な武力行使依頼でなくとも、国連の方針に沿った行動をするだけでよい。米軍が国連傘下に入る必要はない。 たったこれだけのことで、米国が、実質的に、国連のお墨付きを得ることができる。 今、こうした展開が、求められているのではないだろうか。 このように考えると、日本政府のイラクに関する方針選択は極めて重いといえよう。 日本にとって選択肢は2つしかない。国連中心に動くか、米国支援主体か、である。 日本が進むべきは、本来は前者だろう。といっても、独自の行動をとれる立場にないのも事実だ。 米国とは同盟関係にある上、日本は、エネルギー安全保障も、東アジアの平和確保も、米国に頼るしかない。米国支援以外の道はあり得ないように見える。 しかし、米国を説得し、米国と国連加盟国間を日本が取り持つ道が消えた訳ではない。日本は、米国に次ぐGDP2位の国として、加盟国への働きかけを強めるべきだろう。 ・・・日本の仲介は、普通の状態なら理想論にすぎないが、米国が政策転換を考えているなら、その手助け役になれるかもしれない。もしも、少しでもチャンスがあるなら、見逃すべきではない。 といっても、国連の解決能力に期待すべきでない。この間の動きを見ればわかるが、国連はリーダーシップを発揮できる状況にない。 とはいえ、少なくとも、世界が地獄に落ちることだけは防げると思う。それだけで十分ではないだろうか。 ともかく、日本は、米国が国連を見限らないよう傾注するしかない。 これに失敗すれば、突然の「米軍イラク撤退」という最悪のシナリオもあり得る。 そうなれば、間違いなくイラクに内戦が勃発する。ペルシャ湾岸一帯は戦火に見まわれるだろう。コーカサス地域の民族紛争も再燃し、中央アジアにも火が広がる。ドミノ倒しのように、戦乱が広がるのは間違いあるまい。 しかし、日本が本気になって動けば、避けられる可能性がある。 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2004 RandDManagement.com |