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オジサンのための料理講座  ↓イラスト (C) SweetRoom

2013.9.22

 

ネバネバレシピ…

ハイキング帰りに、お客の姿が全く無いお蕎麦屋さんで一休み。まだまだ暑い日の3時頃だったか。
純米浦霞の冷に、鮪山賭けで。

そこに、スタイリッシュな登山者姿の二人連れがご入店。
とりあえず、生ビールと枝豆をオーダー。
席に落ち着いて、おもむろに周囲を眺め、小生の注文品に気付いたご様子。
そこで、突然、ネバネバ食品の話題になったのである。この話しが実に長い。老人性会話ということではなく、とんでもなく「知的」でinformative。しかも、しばしば、科学的にわかっていてネという枕詞がつく。

ただ、矛盾した話をしたり、およそ非科学的としか思えないものもちりばめられているから、まあ、一種の酒呑み話。だが、少々度がすぎる感じがした。
もちろん、小生にしても、いい加減なことはしょっちゅう言う。しかし、それは一種の言葉の綾。「精神上健康にはコレが一番。」と言いつつ、冷酒3杯となったりする訳だから。ガイドラインによれば、もちろん健康を害する量である。

冷静に見れば、ネバネバ食品が体にどう働くかなどわかったものではないというのが小生の見方。
でも、「健康にイイゼ。」と思っていなけりゃ、食べる気になるまい。その手の食物と見なしている訳。一種のプラセボ期待。まかりまちがっても逆プラセボだけはこまるナと思っている。

そう考えるのは、代表的物質ムチンの特徴を知れば、コリャ、簡単に影響がわかる訳がないと思うからだ。・・・
 ・粘液的な性状を示す糖蛋白の巨大高分子である。
   -分子量は100万以上で1000万クラスも。
   -結晶化不能と思われる。(構造解析困難)
   -鎖のパーツはペプチド。
   -多数の糖がペプチドの水酸基に結合している。
   -分子量で見ると過半が糖である。
   -従って、水溶性食物繊維的な特性を示す。
   -熱で分解し易いが、蛋白分解酵素耐性を持つ。
 ・当然ながら、
  食べたところで、そのまま吸収されることは無い。
   -分解物はありふれたペプチドと糖である。
 ・ヒトにとっては不可欠な成分。
  細胞内で合成され外部に放出される。
   -ヒトには19の関連遺伝子があるとされる。
   -つまり、様々なタイプが存在することになる。
   -ヒトのすべての表皮を覆っている。
   -分泌する粘液にも必ず含まれている。
     (もちろん唾液にも。)

なにせ、さまざまなタイプがありすぎ。それぞれどのような違いをもたらしているかわかっている筈がなかろう。その状態で健康視点で特性を判定したところで、どこまで意味あるものになるのかはなはだ疑問。
前述した蕎麦屋講話によると、ムチンを食べるとヒトの粘膜が保護されることが科学的に裏付けられているとか。まあ、そういうこともあるのだろうが、ヤム芋系など、口の周囲がむず痒くなる。皮膚への付着に気付かないと炎症をおこしたりすることさえ。この現象こそ、粘膜保護の証拠と言うつもりなら別だが、逆の兆候と見るのが普通では。それを無視して、健康に良いことが科学的にわかっていると吹聴するのはいかがなものか。

繰り返すが、小生の場合は麦トロが好きだから、これを健康にプラスと勝手に見なして食べているに過ぎない。実際のところはよくわからない。しかし、毎日食べるようなものではないから、神経質になる要無しということ。
ただ、ヤムイモ主食の方々に健康上の問題が指摘されていないし、塩分少な目のレシピになるようだから、ヒトに向いた食の可能性が高そうとは言える。もっとも、生芋食ではなく、加熱調理されるのが普通だから、ムチン大量摂取食と見なす訳にはいかないが。(主食はヤム芋よりタロ芋の方ではないかという気もするが。)
  ヤム→ 山芋 (2007.9.4)
  タロ→ 里芋 (2007.10.23)

まあ、胃酸に強い水溶性繊維を大量に食べれば、それなりの影響が出るのは間違いない。常在菌との相性もありそうである。しかし、ムチンには色々な種類もあることだし、すべてを一くくりにして健康寄与度を検討できるものかはなんとも。(例えば、唾液中のネバネバ成分に効果があるからといって、それを単純に他のネバネバ物質に当てはめるのは乱暴極まる理屈だということ。)

しつこいが、ネバネバ食品は好きなら健康にプラス。嫌いならおよしになった方がいい。・・・それが、小生の見方。
例えば、ネバネバの典型であるオクラだが、世界の食を眺めると加熱調理レシピだらけ。ネバネバを消すようにしている訳であり、日本のような「生ほど良し」的な発想は見かけない。
  → OKRA (2008.2.5)
だからといって、海外を見習う必要もないが、一般にはネバネバは好まれる特性で無いことは十分理解しておく必要があろう。

日本で好かれる理由は、おそらく蒸し暑い気候に合うから。それこそ、ズルズルと吸い込むように食べれる点が嬉しさのポイントだと思う。食欲が落ちていてもそれなりに食べれるということ。

と言うことで、前置きが長くなったが、ネバネバレシピといこう。
くどいが、あくまでも個人的な好みの問題。そのおつもりで。
尚、納豆と蓮根もネバネバ系だが、除外した。ネバネバを愉しむために食べるようなものではなさそうだから。

○お勧めはなんといっても海藻。
いかようにもアレンジ可能。「ヌメリ感」を愉しむのだから、シンプルな酢の物が妥当では。納豆的な糸引き所望の場合は、スルメを入れた松前漬けがよかろう。自作用キットも売っているし。
  → 海藻料理を考える (2009.9.30)

○ネバネバとイカとの相性を試すのも悪くない。
何故かわからぬが、ネバネバ系食材にはイカを使いたくなるのである。
例えば、イカ刺にオクラを混ぜるという手。
煮物なら、里芋とご一緒に。

○ただ、ネバネバ葉野菜系の場合は、さっぱりとした鶏出汁のスープをお勧めしたい。強烈なネバネバ感が消えて食べ易くなる。モロヘイヤなど、結構上品なものに仕上がる。
但し、ネバネバを愉しむという本来の嗜好には反する。
  → 蔓紫 (2009.4.14)
  → 明日葉(2008.10.7)

○なんとしてもネバネバ命でいこうと考えるなら、3品酢の物しかあるまい。
長芋千切り、オクラの薄切り、ナメコ。

○本当は、夏を愉しむということで、ジュンサイの酢の物をあげたいのたが、今や季節に関係ない食材の感じがする。その夏ももう終わってしまったようだが。


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