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オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2009.9.30 |
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海藻料理を考える…海藻料理に凝るのは日本人くらいではないか。 特定の海藻を食べる地域はあるが、何でも食べようとする民族は珍しい。 海藻食は大昔から。 枕草子84段には、「布」として登場する。コレ、オバサンの駄洒落話で、なかなか読ませる、というか愉快。ただ、優秀な奥さんを持つビジネスマンは、心穏やかならず。 【宮仕えの清少納言、たまの宿下がりのお話】 里へまかでたるに、 うるさくされるので、居場所を秘密にと頼んできた。 あまりうるさくもあれば、このたび出でたる所をば、いづくとなべてには知らせず。 そこへ、別れても延々とつきあっている、則光がやってきた。 左衛門の尉則光が来て、 お熱の中将に居所を明かせと迫られた話を聞かされた。 「昨日宰相の中将の参り給ひて、『いもうとのあらむ所、さりとも知らぬやうあらじ。いへ』と」 その場しのぎに、知らぬことにして、海藻をモグモグして誤魔化したという。 「いみじう問ひ給ひしに、さらに知らぬよしを申ししに、あやにくにしひ給ひしこと。」などいひて、 わびて、台盤の上に、布のありしをとりて、ただ食ひに食ひまぎらはししかば、中間にあやしの食ひものやと、人々見けむかし。 その後、「又、うるさく言われているが、どうする」との手紙。 文を持て来たり。みな寝たるに、火とりよせさせて見れば、 「『いもうとのあり所申せ、申せ』とせめらるるに、ずちなし。さらにえ隠し申すまじ。」 「いかに。仰せにしたがはむ。」といひたる あれだけ言っても、わからんのかということで、海藻を紙に包んだだけで返信。 返りごとは書かで、布を一寸ばかり、紙につつみてやりつ。 無粋な則光は、この意味がわからずにやってくる。そこで、歌で教えてやった。 ・・・海女が潜っている場所などわからんでしょ、言うなと、メを送って、メくばせしたのに。 かづきするあまのすみかをそことだにゆめいふなとやめを食はせけむ しばらくしたら、則光が、いい仲だったじゃないか、体裁だけでも続けようよ、と・・・。 なほ契り聞こえしかたは忘れ給はで、よそめにては、さぞとは見給へとなむ思ふ。 そんな関係なら、歌を浴びせるようなことをしないでも、と言うのである。 おのれを思さむ人は、歌をなむよみて得さすまじき。 そこで清少納言は、又、歌でお返し。 ・・・兄妹関係が崩れてしまったら、誰も、未だに流れ続けているとは見ないでしょうに。 くづれよる妹背の山の中なればさらに吉野の川とだに見じ 当然ながら、疎遠に。返事などなし。 まことに見ずやなりけむ、返しもせずなりにき。 「布」の読み方は、訓はヌノで、普通はフかホ。メとは古い時代の呼び方らしい。いかにも伝統食材らしさ紛々。 上記の話でわかるように、メはよく食べられていたようだ。口の中に入れて噛み続ける必要があったようだから、現代で言えば、硬い、アラ“メ”か、カジ“メ”に近い感覚か。昆布も流通していたと思うが、呼び方はヒロ“メ”だろう。“コンブ”とは、北の海で採取する人達の呼び方ではないか。昆布は当て字臭い。輸出や儀式には、こちらの名称の方がよさそうだし。 若布は、幼い布という程度の意味だろうが、それは柔らかさを褒めているのではなく、味が薄いという見方では。それほど人気はなかった気がするが。 この辺りの研究者もいそうだが、調べていないので、以上、いい加減な話である。 ともあれ、昆布出汁で味を簡単に出すようにしたことで、「布」を噛んで旨みを愉しむ習慣は消えていったのは間違いないのでは。
言うまでもないが、日本酒で。 ■磯の海藻の乾きモノ■ 現代の“布”を考えてみた。「酢昆布」や、「おしゃぶり昆布」等、色々な商品があるが、たいていは旨みを海藻に注入したもののようだ。やはり、海藻そのものの旨みを堪能したいものだ。それには、油の力を借りるのがよさそうである。 ・コンブ 少量の菜種油(キャノーラ)を暖める。 昆布を一口大に切り軽く揚げる。 揚げすぎると不味くて食べれない。 油はペーパーでよく拭き取る。 ・ノリ 板海苔を食べ易い大きさに切り、オリーブオイルを刷毛で塗る。 フライパンで焼く。 軽く上質の塩を振る。 ・ハバノリ 火で炙り、適当に切るだけ。 ■刺身風■ ドロドロと溶ける類の海藻を固めて食べると、調味料の威力が発揮される。上質の気に入った醤油を使おう。 ・“おきうと”(エゴノリ) 切って山葵醤油で。 ■独立したツマの色モノ■ 海藻だけで赤紫、緑、白が出せるのは面白い。市販物は混合されており、ゴチャゴチャ感は否めない。できれば、別々の山で供したい。 ・トサカノリ(“海藻サラダ”) 3色の海藻を水で戻す。 生姜おろし醤油で。 ■南の海藻の酢のモノ■ 昔はどうだったのかわからないが、沖縄特産品一色になっている海藻を外す訳にはいくまい。 ・モズク 塩モズクを洗い、食べ易い長さに切る。 三杯酢[柚子絞り汁+醤油+米酢]をかける。 柚子皮の千切りを載せる。 ・海ぶどう 海ぶどうは水に漬けて塩分をとる。 梅干を練り、米酢、味醂、出汁と混ぜてから、かける。 ■炒めモノ■ 海藻だけでは、流石にオカズにならないから、炒め物をつけよう。できる限りシンプルにしたいので、若布がよかろう。乾物の戻しで十分。 若布だけでは今一歩なので、なにか海のモノを一緒に炒めたくなるが、雑魚や烏賊だと、海藻の主張が弱くなってしまう。やはり、香味野菜がよかろう。玉葱、韮、大蒜は強すぎるから、葱か。 ・ワカメ 葱と一緒に炒める。 ■煮モノ■ コース料理にするなら、煮物も欲しくなる。潮感が弱くならないようにしよう。 ・ヒジキ(あるいはコンブ) 薩摩揚と一緒に煮る。 ■玉子焼■ 蛋白質が僅かすぎるので、卵か豆腐を使いたい。蒸し豆腐は失敗することも多いので、玉子焼がよいだろう。 ・アオノリ 卵を出汁でわり、酒を少々加え、水で戻した青海苔を沢山入れる。 厚焼きにする。 ■ご飯■ 海苔をご飯に散らすとか、海苔のお握りという手など、好きな方法を選べばよかろう。 ・わかめ 塩味の乾燥品ふりかけとご飯を混ぜる。 ふわっと、碗によそうのが美味しさの決め手。 ■味噌汁■ 海藻を愉しむなら、フノリは除けまい。糊の感じがするから、嫌いな人もいそうだが。 ・フノリ 味噌を溶いたらフノリを入れる。 煮込まない。 ■茶と甘モノ■ 昆布茶で、甘さを賞味しよう。 ・寒天(天草) 寒天をつき、黒蜜をかける。 以上、奇をてらった訳ではない。海藻の特徴をとらえて、適当にメニューを作って、コース料理風に仕立てただけ。 まあ、頭の体操である。ただ、どれも、良質の海藻なら美味しい。 --- 参照 --- (1) 「クロハギンナンソウ/エゾツノマタ」 ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 http://www.zukan-bouz.com/kaisou/kousou/suginori/kurohaginnansou.html (2) 「コトジツノマタ−海藻海草標本図鑑」 千葉大学海洋バイオシステム研究センター 銚子実験場 http://www-es.s.chiba-u.ac.jp/kominato/choshi/algae/kaisou/aka/kotozi/kotozitunomata.htm (3) 「秋田県独特の食べ物」「ぎばさ」角館町観光協会 [2008年01月21日] http://kakunodate-kanko.jp/blog/2008/01/post_676.html (4) 「おさかなランド香川 イギス」 香川県農政水産部水産課 http://www.pref.kagawa.jp/suisan/html/suisan/kagawanosakana/igisu/igisu.htm (枕草子) 84段 国語の先生の為のテキストファイル集 http://homepage2.nifty.com/zaco/text/ko/makura3-1.txt 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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