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■■■ 「古事記」解釈 [2021.12.4] ■■■
[337]中巻末15代天皇段所収歌14首検討
上〜中巻[15代天皇]での婚姻に係わる歌のなかで、一番力が入っているのが15代の、意味不明な長歌ではなかろうか。ただ、わからないと言っても、歌垣的センスが残る妻問い的な風情とは無縁であり、新時代に入っていることを示していると考えてよさそう。 📖「萬葉集」冒頭歌選定は「古事記」の影響

○速須佐之男命 櫛名田比賣…大蛇生贄救済
○大穴牟遲~⇒大國主~ 須世理毘売@根国…無歌(難題解決)
○ 〃 八上比賣@因幡…無歌(兄弟神と争奪戦で勝利)
○八千矛~ 沼河比賣@高志…求婚で一晩中戸外立ち続け
○邇邇芸命 木花佐久夜毘売+石長比売無歌(繁栄=短命)
○火遠理命 豊玉毘売命@綿津見神の宮…無歌(一目惚され)
○初代[神武]天皇 伊須氣余理比賣@美和…ホト突で誕生した姫
○倭建命 美夜受比売@尾張…婚約後東国平定行
○15代[応神]天皇 宮主矢河枝比売@近淡海…"この蟹や"の歌は意味不明
○皇太子大雀命 髪長比売@日向…応神天皇が呼んだ美人を獲得
○16代[仁徳]天皇 K日賣@吉備…正妻を欺き逢瀬
○ 〃 八田若郎女(異母妹)…独身はもったいないゾと声掛け
○ 〃 女鳥王(異母妹)…媒酌役の弟に取られた上に皇位簒奪疑惑

尚、この段では、酒樂と"すすこりが 醸みし御酒"の歌が目立つが、前者は少名御神尊崇歌であり、この段の固有性を欠く。このことは、後者の主題である、噛み酒法脱却の新醸造方法を目立たせるために敢えて持ち出したと見ることもできよう。
   《上巻》@出雲・八尋和邇…7+2首 📖
   《中巻初代天皇段》…13首 📖
   《中巻10代天皇段》…1首 📖
   《中巻倭建命関連》…15首📖
   《中巻15代天皇段》…14首
<反逆すれど敗退した忍熊王 琵琶湖で最期…1首
<天皇凱旋で母・臣が寿ぐ>…2首
   📖石立たす少御神と酒宴
<国見寿ぎ>1首
<妃獲得の喜びを宴席で表明>…1首
<皇子に呼び寄せた女を譲り渡す>…4首
<吉野勢力が皇子褒め>…2首
<渡来製造法の酒に酔う>…1首
<崩御後の皇位争奪闘争>…2首

---⑮品陀和気命/大鞆和気命/応神天皇
[_39]【忍熊王】反逆失敗で入水辞世@琵琶湖
    いざ吾君 振熊が 痛手負はずは 鳩鳥の 淡海の湖に 潜きせなわ
[_40]【神功皇后】天皇勝利凱旋の酒宴
    此の御酒[美岐]は 吾が御酒ならず
    御酒(奇[久志])の司[加美] 常世に坐す 石立たす 少名御神[須久那美迦微]の
    神祝き[加牟菩岐]
    寿き狂ほし[本岐玖琉本斯] 豊寿き[登余本岐] 寿き廻ほし[本岐母登本斯]
    奉り来し御酒そ[麻都理許斯美岐叙]
    浅ず飲せ ささ(囃子)

[_41]【建内宿禰】酒楽之歌崩御後実質天皇位の皇后を補佐し祭祀進行
    この神酒を醸みけむ人は その鼓臼に立てて
    歌ひつつ醸みけれかも 舞ひつつ醸みけれかも
    この御酒のあやに歌愉し ささ

[_42]【天皇】行幸で国の繁栄を寿ぐ
    近淡海の国に越え幸でます時 宇遅野の上に御立たして 葛野を望けまして
    千葉の 葛野を見れば 百千足だる 家庭も見ゆ 国の秀も見ゆ
[_43]【天皇】矢河枝比売を迎えた大御饗酒宴での喜びの発露
    この蟹や いづくの蟹 百伝ふ 角鹿の蟹 横去らふ いづくに至る 伊知遅島 美島に著き 鳰鳥の 潜き息衝き しなだゆふ 佐佐那美道を すくすくと 我が行ませばや 木幡の道に 遇はしし嬢子 後方は 小蓼ろかも 歯並は 椎菱なす 櫟井の 丸邇坂の土を 初土は 膚赤らけみ 底土は に黒き故 三栗の その中つ土を 頭著く 真火には当てず 眉画き 濃に書き垂れ 遇はしし 女 かもがと 我が見し児ら かくもがと 我が見し児に 現たけだに 向かひ居るかも い副ひ居るかも
[_44]【天皇】皇子に美女を譲り渡した時
    いざ子ども 野蒜摘みに 蒜摘みに 我が行く道の 香はし 花橘は 上枝は 鳥居枯らし 下枝は 人取り枯らし 三栗の 中枝の 穂積り 赤ら乙女を いざ挿さば 好らしな
[_45]【天皇】皇子に女を譲り渡して後悔
    水溜る 依網の池の 堰杙人が 差しける知らに 沼縄繰り 延へけく知らに 我が心しぞ いやをこにして 今ぞ悔しき
[_46]【(太子)大雀命】天皇から女を譲り受けて喜んだ
    道の後 こはだ乙女を 雷の如 聞こえしかども 相枕枕く
[_47]【(太子)大雀命】得た妃の性情を喜んだ
    道の後 こはだ乙女は 争はず 寝及惜しぞも 愛思ふ
[_48]【吉野之國主等】16代天皇の帯刀剣褒め
    品陀の 日の御子 大雀 大雀 佩かせる太刀 本剣 末ふゆ 冬木の 素幹が下 木のさやさや
[_49]【吉野之國主等】<獻大贄之時>皇嗣即位前に新酒贈呈
    檮の生に 横臼を作り 横臼に 醸みし大御酒 美らに 聞こし以ち食せ 麻呂が父
[_50]【天皇】渡来名酒多飲酩酊時
    すすこりが 醸みし御酒に 我酔ひにけり 事無奇酒 笑奇酒に 我酔ひにけり
[_51]【大山守命】反逆失敗で川に流され救助要請
    千早振る 宇遅の済に 棹取りに 速けむ人し 我がもこに来む
[_52]【宇遅能和紀郎子】反逆者大山守命討伐成功時
    千早人 宇遅の済に 渡り瀬に 立てる 梓弓真弓 い伐らむと 心は思へど い獲らむと 心は思へど 本方は 君を思ひ出 末方は 妹を思ひ出 楚なけく 其処に思ひ出 悲しけく 此処に思ひ出 い伐らずそ来る 梓弓真弓

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