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■■■ 「古事記」解釈 [2023.3.29] ■■■
[645]大山津見神の位置
「古事記」上巻からすると、国生み・神生み時代の次が出雲王朝で、かなり厄介だった国譲りの後に、すぐに倭王朝にならず、間に、南九州・南島王朝が挟まっているように読める。ところが、この2王朝は女系で見れば、大山津見神の系譜に繋がっており、山信仰時代が存在していたことを示唆しているように映る。・・・
○伊耶那岐命
└┬─伊耶那美命
┌──┘@妣国[死者の行く先]≒黄泉国
├・・・
├・・・
大山津見[っミ]
└┬△n.a.
├───────┬─┬─┬───┐
○足名椎┼┼┼┼┼┼┼
└─┬△手名椎┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
須佐之男命┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┬─△櫛名田比売│┼┼┼
││@須賀宮┼┼┼┼┼┼
│○八島士奴美神┼┼┼
│└─┬─────△木花知流比売
┼┼○布波能母遅久奴須奴神⇒・・・⇒大国主命
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
└┬─────────△神大市比売│
└─□大年神 □宇迦之御魂神 □・・・
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└△天照大御神┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
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正勝吾勝勝速日天之忍穂耳│┼┼┼
└┬─△万幡豊秋津師比売命│┼┼┼
┌─┘┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
天邇岐志国邇岐志天津日高日番能邇々芸命
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├─────────────│─//─△石長比売
└─┬───────────△木花之佐久夜毘売
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼/神阿多都比売
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┼┼天津日高日子穂々手見命/火遠理命/山佐知毘古/虚空津日高
┼┼└┬△豊玉毘売命[八尋和邇]
┼┼┼天津日高日波限建鵜葺草葺不合命
┼┼┼└┬△玉依毘売命
┼┼┼┼
┼┼┼┼①天皇@倭

ただ、神統譜から言えば、伊耶那岐命 伊耶那美命2神の神生みのなかに、大山津見~が含まれているだけのことでしかない。📖"神生み"構成の解釈は丁寧に
【山野生活圏系4神】
<風~> 志那都比古~[此~名以音]
<木~> 久久能智~[此~名以音]
<山~> 大山津見~ 大山祇神社@伊予今治大三島
<野~> 鹿屋野比賣~/野椎~ 千種神社(草野姫~)@紀伊海南重根
【山野生活文化系8神】…大山津見~・野椎~二~因山野持別而生~
 天之狹土~[訓土云豆知下效此] 國之狹土~
 天之狹霧~ 國之狹霧~
 天之闇戸~ 國之闇戸~
 大戸惑子~[訓惑云麻刀比下效此] 大戸惑女~

しかし、山は重要なようで、伊耶那岐神が斬殺した火神の遺体から生まれる神々も、≪大≫山津見神と関連していそう。📖火神遺骸から生まれた神の名は
正鹿まさか≫山津見神@頭・・・山頂の代表神
淤縢おど≫山津見神@胸・・・恟(懼:幽妖)的山の神
おく≫山津見神@腹・・・深山の神
くら≫山津見神@陰・・・山谷の神
志藝しぎ≫山津見神@左手・・・山林繁茂地の神
≫山津見神@右手・・・山端の神
はら≫山津見神@左足・・・山麓の神
≫山津見神@右足・・・入山口の神

多くの神々の信仰が基調とはいえ、山信仰が常に根底にある社会だったということか。

そんなことを考えていると、これは、"虚妄にして誇大"で"奇怪多し"📖だが、"七王朝(夏〜晋)を経て来た"「山海経」の世界に限りなく近いとも思えてくる。しかし、大陸に於ける山信仰が何を意味しているかははなはだ曖昧なところがあるのでどう考えるかは」難しいものがある。📖
…木石謂山也。或云夔,一足,越人謂之山繅[=糸+巢/巣]也。或言獨足魍魎,山精,好學人聲而迷惑人也。 [「國語」魯語の韋昭 注]
従って、山神の名前も確定していない。
山蕭,一名山臊,《神異經》作猩參(㺑),《永嘉郡記》作山魅,一名山駱,一名,一名濯肉,一名熱肉,一名,一名飛龍。如鳩,青色,亦曰治烏。巣大如五鬥器,飾以土堊,赤白相見,状如射侯。犯者能役虎害人,燒人廬舍,俗言 [「酉陽雑俎」前集卷十五 諾皋記下]
しかし、鳥信仰と繋がっているように見うけられ、「古事記」のトーンに似ている感じがする。📖
(/鶏, 雉/キジ & , 鶉, 鶴, 鵁/鷺類, 雕/鷲, 鷹/タカ, /隼, /サシバ, 鴟/トンビ, 梟/フクロウ & , /ミミズク, 翠/カワセミ, 鳧/ケリ, /アジ, 鴛鴦/オシドリ, 駕鳥, 鵲/カササギ, /オオヤマドリ, /ヤマドリ, 鳩, /ムクドリ類の八哥鳥, 鸚/鸚鵡, /錦鶏, 鴆/Pitohui[有毒], 鳳凰/極楽鳥)
そして、注目すべきは山神は一本足姿だったりする点。これをどう見るかは、なんとも言い難いところがあるが、もともとの二本足姿が2つに分割され、山神と海神となったと考えることもできそう。(「古事記」の久延毘古/山田之曾富騰[案山子]とは、それを意味しているのかも。)

・・・極東の端てに位置する列島には、儒教によって表から消し去られた夏〜晋代の各地の山信仰がママ残っているというのが、太安万侶の見方ということではあるまいか。

---【参考】"国史"の見方--- 📖「記・紀」は神の概念が異なる
國常立┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○天御中主
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○伊奘諾┼┼┼┼┼┼┼┼高皇產靈
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
△天照大神┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼△栲幡千千姬
正哉吾勝勝速日天忍穗耳┼┼
┼┼└─────┬──────┘
┼┼┼┼天津彥彥火瓊瓊杵

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