表紙 目次 | 2014.6.9 中国の料理文化圏小生は、勝手ながら、中国の4大料理圏を以下のように考える。 (1)<北方民族料理圏> [→] (2)<江南料理圏> [→] (3)<亜熱帯モンスーン料理圏> [→] [→] [→] (4)<雲貴高原料理圏> [→] (選外)山東(魯)料理 (選外)四川(川)料理 [→] 尚、西蔵(チベット)は除外しの話。 さて、これを「酒」の観点から眺めてみたい。 現代の酒の消費という点では、上記の1〜3はまさしく一大文化圏を形成しているのは間違いないと思う。麦芽利用の酒は植民地化されるまでは作っていなかったようであるが、巨大装置産業化しているビールの生産地(ブランド)はそこに偏っているからだ。 ---啤酒--- (1)<北方民族料理圏> 【東北】遼寧省瀋陽、黒龍江省哈爾浜市 【北京/天津】北京市 (選外) 【山東/山西/河北/河南】山東省青島市 (2)<江南料理圏> 【上海/江蘇/浙江】上海市 (3)<亜熱帯モンスーン料理圏> 【福建/広東】広東省広州市 北方民族の飲酒愛好度は、馬上杯の習慣から見て、かなり高そう。但し、その場合に用いられる正式な酒は西域から入ってきたワインではないか。ワインが無い地域では、ミルクベースの酒が開発されたようである。 ---特殊酒--- (1)<北方民族料理圏> 【西北】奶酒(内蒙古自治区) 現在はワイン製造も行われているようだが、ずっと作っていなかったようで、馬上杯に用いるのは西域からの渡来品だったと思われる。従って、蒸留酒に果汁を入れた類似酒で我慢していたのではあるまいか。その系統の酒の最たるものが、北京発の桂花陳酒と言えよう。 ---果酒と葡萄酒--- (1)<北方民族料理圏> 【東北】 紫梅酒、香梅酒(黒龍江省尚志市) 五味子酒(吉林省長白山) 熊岳苹果酒(遼寧省蓋州市) 山楂酒(遼寧省瀋陽市) 山葡萄酒(吉林省通化市) 【北京/天津】 桂花陳酒、紅/白葡萄酒(北京市) (選外) 【山東/山西/河北/河南】 紅葡萄酒(山東省煙台市) →金奨白蘭地[ブランデー] →味美思[ベルモット] 白葡萄酒(山東省青島市) (2)<江南料理圏> 【上海/江蘇/浙江】 杏露酒(上海市) (3)<亜熱帯モンスーン料理圏> 【福建/広東】 茘枝酒(福建省漳州市) 楊梅酒 (選外) 【四川】 紅桔酒、広柑酒(四川省達州市渠県) 葡萄酒のように、果汁発酵という手間と技術を要する醗酵酒は滅多にないようである。果酒とは、穀物蒸留酒に付香した、アルコール度を低くしたリキュール類が主流のようだ。コスト的にそれがベストということなのだろう。 リキュールという点では、果実以外のものについても、そこそこ盛んである。 ---薬酒--- (1)<北方民族料理圏> 【東北】 人参酒(吉林省) 【北京/天津】 蓮花白酒、虎骨酒(北京市) 玫瑰露酒(天津市) (選外) 【山東/山西/河北/河南】 至宝三鞭酒(山東省) 竹葉青酒(山西省汾陽市杏花) 元魚酒(河北省) 【湖北/安徽/江西】 霊芝酒(江西省贛州市全南) (3)<亜熱帯モンスーン料理圏> 【福建/広東】 菊花酒 五加皮酒(広東省広州市) 【広西】 三蛇酒、馬鬃蛇酒、蛤蚧酒(広西チワン族自治区) ここまでは前段。ここから、中国のお酒の本流を眺めてみよう。当然ながら、穀類醸造酒を指す。どうしても米酒になろうから、上海/江蘇/浙江辺りが本場と言えよう。北の非稲作地帯でも、高黍等があるが、麦のように発芽による糖化はできないだろうから、米同様に「麹」(CH.:曲)を使う必要があるので、簡単に酒製造ができる訳ではない。特に、中原は良質な麹ができなかったそうだし。 ほとんどがモチ性の米を利用しており、食事用はもっぱらウルチだから、酒米として栽培されていることになろう。 ---黄酒(醸造酒)--- (1)<北方民族料理圏> 【東北】 大連黄酒(遼寧省大連市)・・・高黍?+麦麹? (選外) 【山東/山西/河北/河南】 即墨老酒(山東省即墨市)・・・高黍?+麦麹 杏花黄酒(山西省汾陽市)・・・糯粟+麦麹? 汾州黄酒(河北省石家荘市)・・・糯粟+麦麹 (2)<江南料理圏> 【上海/江蘇/浙江】 紹興酒(浙江省紹興市)・・・糯米+麦麹+薬酒 寿生酒(浙江省金華市)・・・糯米+麦麹 恵泉酒(江蘇省無錫市)・・・糯米+麦麹 醇香酒(江蘇省蘇州市)・・・最上級糯米+麦麹 丹陽封缸酒(江蘇省丹陽市)・・・糯米+麦麹? (3)<亜熱帯モンスーン料理圏> 【福建/広東】 沈缸酒[客家酒](福建省竜岩市)・・・糯米+米麹 福建老酒/四半酒(福建省福州市)・・・糯米+玄米麹 連江元紅(福建省連江県)・・・糯米+米麹 苜莉青(福建省南平市)・・・糯米+米麹 珍珠紅(広東省興寧市)・・・糯玄米+米粉麹 (選外) 【安徽/江西】 九江封缸酒(江西省九江市)・・・糯米+? 丁坊酒(江西省南昌市)・・・糯米+? 低アルコール濃度の醸造酒は一般に日持ちしないから、高アルコール濃度の蒸留酒にする方が主流になるもの。日本だと、清酒一本槍なので、その感覚が薄いが。 蒸留酒になると、四川や山東が本場という印象があるが、醸造酒と違って、高黍を用いる酒が多いということだと思われる。量的には、醸造酒を凌駕していると思われる。 ---白酒(蒸留酒)--- (1)<北方民族料理圏> 【西北】 西鳳酒(陝西省鳳翔県) 【北京/天津】 二鍋頭酒・・・高粱+? (選外) 【山東/山西/河北/河南】 孔府家酒(山東省曲阜市) 汾酒(山西省汾陽市)・・・高粱+大麦/豌豆麹 (2)<江南料理圏> 【上海/江蘇/浙江】 洋河大曲(江蘇省泗陽県)・・・高粱/大麦/小麦/豌豆+? (選外) 【湖北/安徽/江西】 白雲辺(湖北省松滋市) 【安徽/江西】 古井貢酒(安徽省亳州市)・・・高粱/小麦/大麦/豌豆+? 【重慶/湖南】 白沙液(湖南省長沙市) 酒鬼酒(湖南省吉首市) 【四川】 五粮液(四川省宜賓市)・・・五穀[高粱/玉蜀黍/粳米/糯米/小麦]+? 剣南春(四川省綿竹市)・・・高粱/玉蜀黍/粳米/糯米/小麦+? 瀘州老窖特曲(四川省瀘州市) 全興大曲酒(四川省成都市) 郎酒(四川省瀘州市) (4)<雲貴高原料理圏> 【雲貴】 茅台酒(貴州省仁懷市)・・・高粱+小麦麹 董酒(貴州省遵義市) 【広西】 桂林三花酒(広西チワン族自治区桂林市) さてここで、有名な袁枚(1716-1797)の「随園食單」を眺めてみよう。第六節の前半「飯粥單」は流石という感じがしたし。[→2014年5月20日] それなら、酒も読んでみようとなろう。しかし、第六節の後半「茶酒單」は凡庸な感じがしないでもない。全く知らない酒の名称を並べられても、さっぱりということもあるからにすぎないとも言えるが。一応、その評価を見ておこうか。 余性不近酒とのことだから、どこまで当たっているのかはわからところだが、自信家だから一種の謙遜的な記述なのだろう。大いに飲もうとの喜びが理解できない訳もなかろうし。 先ず、紹興酒より、落ちるとは思えないものをあげている。 ・滄酒---清 ・潯酒---冽 ・川酒---鮮 お眼鏡にかなったのは以下の酒だそうだ。 ・金罈于酒 ・コ州盧酒 ・四川郫(音皮)筒酒 ・紹興酒 ・湖州南潯酒 ・常州蘭陵酒 ・溧陽烏飯酒 ・蘇州陳三白酒 ・金華酒 焼酎(白酒)の場合。・・・ 余常稱紹興為名士、燒酒為光棍。 光棍であるからこその酒。 ・山西汾酒---狠者 ・山東高粱 現代でも汾酒は知られているし、孔子の祭祀に酒を用いただろうから山東の白酒が高級なのは当たり前ではあるが、他にはないのだろうか。 と言うか、卓越した外交官としての周恩来が、国酒と称して、賓客をもてなすのに使った貴州の茅台酒はどうなんだろう。海外品評会で賞される以前は、ほとんどの人にとって名の知れぬ酒だったということか。どこの国でも、よくあることだが。 不入流品は以下。 ・蘇州女貞 ・福貞元燥 ・宣州豆酒 ・通州棗兒紅 口を通せば俗となるのは、 ・揚州木瓜 ハハハ。 こうして眺めてみると、地域毎に酒に対する姿勢の違いがありそう。 (1)<北方民族料理圏> ・ただただ、酒をよく飲む。 ・時代の流れに合わせた選択。 ・強い酒で豪快さを見せたい体質がありそう。 (2)<江南料理圏> ・蒸留酒も醸造酒も。 ・しかし、軽い酒を愛好していそう。 ・見栄を重視するから、地域ブランド好きだろう。 (3)<亜熱帯モンスーン料理圏> ・「糯米+米麹」で作られる正統な米醸造酒好き。 ・アルコール度の強い酒は避ける。 (弱い可能性あり。) ・酒盛り発想でなく、あくまでも食としてのお酒か。 (酒情報参照先) 中国酒大全 - 中国の酒・名酒 @恋する中国 - 中国文化と中国人 文化論の目次へ>>> 表紙へ>>> (C) 2014 RandDManagement.com |