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■■■ 「古事記」解釈 [2021.7.6] ■■■
[186] 安万侶と阿礼の渾身の一作
😃😆安万侶と阿礼のお好みシーンは《大長谷若建命/[21]雄略天皇@長谷朝倉宮御製←大后歌←伊勢國之三重婇歌》@新嘗祭〆の総員集合豊明節会と見た。📖

説明が言葉足らずで、ご両人が、どうしてここに感激したと見るのか、その理由がよくわからなかったかも。
簡単に言えば、「古事記」はあくまでも口誦叙事詩を文字化した書だから。・・・これではさらに不明瞭かな。

叙事詩の概念が人によって違うので、真意が伝わりにくいが、「古事記」の叙事詩は天竺とは違う点を強調しておきたい。天竺は、フラグメント化された職業社会の寄せ集めであり、それぞれの社会は閉じているので、叙事詩は実際は一様ではない。しかし、だからこそ、ペラ紙の1シーンの一部分の絵を見るだけで、たちどころに人々の個々の頭の中に仕舞い込まれている物語のシーン浮かぶ。それが、属す社会の理念でもあるからだ。
「古事記」はそのような叙事詩とは違う。(国教化させた儒教型神道の考え方は全く異なるが。)

「古事記」が取り上げている叙事詩の場合、宴席で口誦され、皆で楽しむことができてこそのもの。語り部のアドリブと口調が聴衆の心を揺さぶるのである。それは天竺のバラモンの語りとは似て非なるもの。
仏教の読経のように神妙に承る必要などなく、それこそ笑いころげてよいのである。
「今昔物語集」を仏教説話と見てはいけないのは、そこにある。残酷な話や、頓馬な仕草や、爆笑モノのストーリーも満載だが、そこに、いかにもご教訓というかお説教臭芬々の譚が同居しているからこその面白さなのである。
しかも、様々な歌が入り込んでおり、短い言葉なので、どうでもとれるが、象徴的な言葉の矢が飛び込んでくるので、シーンを彷彿させることになり、心に染みるものとなる。天竺のように、理念と繋がる切っ掛けを与えるものとはならない。
「古事記」所収の歌とはその手のモノ。

そんなことを考えると、安万侶と阿礼が編纂作業で一番盛り上がったのは、大長谷若健命/[21]雄略天皇の段であろう。
その内容を整理したことがあるので、少々手を入れた、再掲しておこう。
  📖「萬葉集」冒頭歌選定は「古事記」の影響

「今昔物語集」の構成は、これを見習ったのではないかと思うほどである。

皇位継承争いの残虐な抗争話から始まるが、コンパクトに類似譚を並べることで、印象を高めている。
その上で、白犬賜入妻問に入る。実に愉快極まる。奇物とされるが、紐でつながれて出てきた犬が可愛かったのではないかと思わせるシーンでもあり、それをご都合主義的に妻問用に用いるのだから、大笑いであろう。しかも、それて大成功して一挙に寝所へとは進まず、正式な嫁入りは別途とされ、ガッカリの態となり、アッハッハではなかろうか。

恋物語はこれで終わらず、童女趣味にも映る2譚が連続する。しかも、片方は婚姻の約束だけして、忘れて80年というのだから、これ又、アッハッハ。

もちろん婚姻以外の譚もある。呉原や御名代部設置といった、政事も忘れずに行っているが、王朝の権威を高める筈の行幸譚も2つ連続で収載されているが、威風堂々という訳ではなく、面白話である。とんでもなき凶悪な独裁者として立ち現れたのに、そのような片鱗を露とも感じさせないストーリーであり、気休めコラム挿入感は無いから、アッハッハ狙いと見てもよかろう。

要するに、いかにも宴席での座興話に使えそうな形に整えられているということ。公式文章や漢籍の、儒教国家的な道徳観を被せた、形式ばった文章を学ばされる人達にとっては、このような叙事詩を聴く場とは、まさに息抜きそのものだったろう。そんな一時しか、生命感を謳歌できなくなって来たといのが、安万侶と阿礼の見立てともいえよう。
そんなことで、以下の❶〜⓮には格段の思い入れありと見た。

大雀命/仁徳天皇@難波之高津宮
└┬△石之日売命(葛城之曽都毘古の娘)…皇后
│├大江之伊邪本和気命/履中天皇
││└┬△黒比売命(葛城之曽都毘古の子 葦田宿祢の娘)
││├⚔❹市辺之忍歯王…狩に誘い騙し射殺。遺骸も残忍に扱った。
││御馬王
││△青海郎女/飯豊郎女
│├墨江之中津王
│├蝮之水歯別命/反正天皇
│└───┐↓皇位継承[19]
└┬△髪長比売
├〇大日下王…⑳穴穂命/安康天皇による誅殺
│└┬△長田大郎女
│││
⚔❸目弱王匿った勢力(都夫良意富美)共々撲滅
┼┼…娘[訶良比売]と葛城五村の屯倉を手に入れる。
〇若日下王…娶の詔([次代天皇]大長谷王子)
┼┼┼┼││
┌────┘
┼┼┼
男淺津間若子宿禰命/允恭天皇
└┬△忍坂之大中津比売命(意富本杼王の妹)
├⚔❶]継承本命]木梨之軽王…惨殺
△長田大郎女
├⚔❷境之黒日子王…惨殺(目弱王討伐せずとの理由で)
穴穂命/安康天皇…皇后連れ子目弱王に御頸を斬られて殺される。
│└┬┘↑長田大郎女を皇后に
《無》
△軽大郎女/衣通郎女
├⚔❷八瓜之白日子王…惨殺(目弱王討伐せずとの理由で)
├┐
├─△橘大郎女
└─△酒見郎女
┌─┘ ↓対抗継承候補者すべて消滅。

┼┼┼┼┼🌐❻"呉原"📖突然に呉を特別扱い無歌
大長谷若健命/雄略天皇
└┬△若日下部王(大日下王の妹)
《無》 💑❼ 📖河内行幸白犬の魅力には勝てず
┼┼┼<行幸>@平群
┼┼┼ 道中立腹…志幾之大県主家が天皇之御舎と同形
┼┼┼ 焼家命令…平伏+貢ぎ物 無視
┼┼┼ 白犬献上で止命令…奇物
┼┼┼<妻問>
┼┼┼ 白犬賜入
┼┼┼ 帰宮(婚約のみ。⇒結局、宮で迎える。)

└┬△韓比売(都夫良意富美の娘)
│├┐
白髪命/清寧天皇  ❺御名代白髪部設置無歌
│││
││△若帯比売命
││
《無》

【婚約未履行】…八十歳まで放置
└…△引田部の赤猪子@美和河
┼┼💑❽赤猪子洗衣童女≒三輪の巫女

└┬吉野川の浜に居た童女@吉野宮行幸時
《無》
┼┼┼💑❾舞する嬢子≒神仙…弾琴@大御呉床

🗾❿阿岐豆野行幸 📖枕詞「蜻蛉島」考 📖王朝祭祀歌謡の的確な記載
♕⓫葛城の大猪と一言主大神
💑⓬媛女@道中[求婚:袁杼比売(丸邇の佐都紀臣の娘)@春日]
     …風習としての姫逃亡か[最終的に大団円]

🎵⓭豊楽@長谷≒新嘗祭…伊勢の三重采女
🎵[続]勧酒歌
🎵[続]天語歌3首
🎵[続]宇岐歌 志都歌≒天皇賛歌

御陵は河内多治比高鸇@古市古墳群の外れ📖長谷朝倉宮
ここで事績は完。

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