表紙 目次 | 「我的漢語」 2014年3月25日 音器白川学のインパクトが大きいのは、文字に呪術性があることを、具体的に古代文字の形象から説明してくれた点。ほんの一部の支配階層しか文字は使えなかったのだから、祭政一致の世界ではさもありなんという感じ。ただ、文字の数は余りにも多く、余り短絡的に考えない方がよさそうではあるが。なにせ、銅鐸一つにしても、用途も、名称もさっぱりわからない位だ。古代を考えるには類稀な想像力が無いとなかなか事情が読み取れないのは明らか。まあ、頭の体操としては悪くない題材ではある。 → 「銅鐸を考える[続々] 」 [2014.2.26] 小生は、銅鼓と銅鐸を似たものと考えるべきでないという見方。 【革】鳴の打音器 ○鼓 銅鐸は、鈴や鐘とは異なる系列に属すと考えた訳である。 【金属】鳴の打音器 ○鐸-鐃 ○鈴-鉦-鐘 ○摺鉦・・・チャンチキ ○銅鼓 現代の音楽学だと、これらは打楽器とされるが、その視点で見れば以下も同類となろう。銅鐸と銅鼓を類似と見て比較検討するなら、ここらも含めないと示威的な分析そのものだと思うが。 【石】鳴の打音器 ○磬・・・石板 現存するのは、技術が発達してからのもの。音器とは、好きな小石を叩くことから始まった可能性もあろうが、ここらは読みようがあるまい。 【木】鳴の打音器 ○n.a. (箱)・・・木鼓もありえよう。 ○n.a. (臼杵)・・・餅搗/脱穀作業の音楽。 ○n.a. (拍子木) どうして、この手の音器の漢字が無いのかネ。 ○敔・・・虎置物の背の刻みを木片で撫ぜ発音。(衆楽完了時) この手の原理のエスニック楽器は時々見かけるが、日本ではポピュラーなものではない。 ○木魚/杢魚, 木柾・・・仏教法具 木だが特殊であるものとして、匏/瓢箪をあげておく必要があるかも知れない。どのような漢字が当てられているのかはわからぬが。 まあ、流石に、土鼓は無理だろうが、土製の音器は珍しいものではない。倭の時代は、土器技術が発達していたから、金属器より重視していた筈である。美麗な馬具が持て囃されるようになると、見捨てられることになったし、「土」での造作には思い入れが強かったのは間違いないから、その変化には相当な時間を要したのではなかろうか。 【土】鳴の打音器 ○土鈴 しかし、土製音器の本流は吹奏タイプだと思われる。ただ、低音も出るとはいえ、貝製音器の代替品にはならなかったのではないか。換言すると、呪術用具ではないということ。勝手な推測だが。 【土】製の吹奏音器 ○壎・・・土笛 吹奏音器の主流はなんといってもフエだろう。 「日本の横笛考」 [2010.3.16-4.13]→ その1、その2、その3、その4、その5、その6、その7、その8 この音器は東アジアの独壇場ではあるまいか。 それもあって、文字が錯綜していて素人にはよくわからない。間違いだらけかも知れぬが、大漢和辞典ベースで適当に並べるとこんなところか。 【竹】製の吹奏音器 基本的には横笛だと思われる。 ○笛 ○管 白川学的には、「⺮+由」は竹ではあるが、「由」が中空を示すから、鳩笛のようなイメージと見なす。余り横笛的ではない。 さすれば、元祖横笛はこちらか。見るからに凄い威力がありそうな文字だから。 ○篪 or [⺮+池][⺮+也]・・・「テキ」でなく、「チ」の横笛 それぞれの文化圏毎にフエがあったというだけのことかも知れぬ。 ○箛・・・馬上でのフエ 孤が光る文字で、モンゴルの広大な景色を彷彿とさせるではないか。 もちろん、西域からの渡来と思われるものもある。上記と同じ可能性もあるが。 ○箶 or [⺮+乎]・・・「胡」の笛 大きさでの分類には熱心なようで、長さや太さの形容では面白くないと見える。これは日本の横笛にも言えそう。見掛けは似ていても、作り方が違っていて、同一の笛とは見なせないのである。音への拘りがある訳で、図絵上では形状や大きさの違いしかわからないが、吹奏すれば誰でもわかる大きな違いが出るということだろう。 先ずはいかにも特殊用途臭紛々な文字のもの。 ○籥・・・短笛 ただ、小さいと言う場合はこちらか。 ○[⺮+約] 中ぐらいのはそのママズバリ。 ○[⺮+仲] ただ、それなりのものは、いわくありげな表示。 ○篁 大き目になると、何を意味しているのかよくわからなくなる。 ○[⺮+産] ○[⺮+喬] 単なる縦笛や、リードをは好かれなかったということだろうか。一本管はもっぱら横笛ということのようだ。 しかし、公的な場面での吹奏になると、多数の小管タイプが基本だった模様。音のハーモニーが場の雰囲気を一挙に変えたからだろう。 ○簫・・・"鳳の翼に象る." ○[⺮+言]・・・大きな簫 いかにも呪術的。南の鳥文化臭紛々。以下は当て字か。 ○笙 or [⺮+直] ○竽・・・大きな笙 ここまで多種多様な文字を当てるとは。南の竹文化の爛熟ぶりが見えるような感じがしてくる さて、呪術用音器といえば、日本では琴である。玉の冠文字であるから、尊ばれたとも言えるのかも。 ということで、その漢字を眺めて〆に代えさせて頂こう。 【絲(絹糸)】音器 ○琴・・・弦押式 ○瑟・・・大きな琴 ○筝・・・可動柱式 ○箜・・・百済のコト ○琵琶 「我的漢語」目次へ>>> 表紙へ>>> (C) 2014 RandDManagement.com |