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■■■ 「古事記」解釈 [2022.6.16] ■■■
[531]花木代表は櫻・柊・藤
太安万侶は<櫻>について積極的に取り上げていないように見える。しかし、倭の花木の代表と考えていた可能性は高かろう。花一般という概念は考えにくいから、なにかを指すとすれば桜しか考えられ最有力ということで。

但し、いかにも、特別扱いの花として取り上げているのは、桜ではなく、草本の山百合。種と言うより、狭い地域に棲息する限定版なのだと思うが。一般種としての花木としては、<櫻><柊><藤>が並んでいると見てよさそう。
要するに、この3種が倭国独特の花木とされていると考える訳である。

3者のなかでは、"ひひらぎ"花は白色なのでえらく地味に思ってしまうが、入冬を告げる点で目立つ花木である。棲息地は、日本列島(関東以南〜先島)と台湾山地だけで、大陸には無い。(と云っても、日本の場合、移入された異種の西洋ヒイラギだらけ。その上、交配雑種系も普及しており、植生の実態はよくわからなくなっている。)

現在、柊という漢字が使われており、中国語辞書にも収載されているが、"冬の木"という解字は見掛けない。漢語では木本名になる訳がないから、当たり前である。ただ、棘葉が特徴だから、"疼く"を示唆しているとも云えよう。(棘葉という点では、大陸には枸骨という薬用でしられる"モドキ"種がある。)
それはともかく、この文字は日本国で発声した後世の当て字ということになる。椿-榎-ひさぎ⇒萩-柊という四季ラインで設定されたと考えるのが自然だ。(楸=赤目柏)
この遊び半分に映る当て字はかなり古くから使われていた可能性もありそうだ。しかし、太安万侶がそのような文字を使うことは有り得ないので、よくわからない。

<花>
木花"知流"比賣
  [父]大山津見神
  [配偶者]八島士奴美神(須佐之男命・櫛名田比売の子)
  [子]布波能母遅久奴須奴神
深淵之水"夜禮"
  [父母]布波能母遅久奴須奴神 日河比売
  [配偶者]天之都度閇知泥神
  [子]淤美豆奴神
"比比羅"木之其花"麻豆美"神 📖ヒイラギ矛も威力あり 📖疼く木
  [娘]活玉前玉比売神
木花之"佐久夜毘賣"
木花之榮 榮坐"宇氣比弖"貢進・・・
天神御子之御壽者 木花之"阿摩比能微"坐・・・
  [本名]神阿多都比売
  [父]大山津見神
  [配偶者]天津日高日子番能邇邇藝命
  [子]火照命 火須勢理命 火遠理命


<萩>=芽子/鹿鳴草/胡枝子 📖秋の草花とされていた木
<楸>=久木/赤芽柏
秋の代表が登場してこない。


ふぢ花> 📖政治的に褒めねばならぬ木
一宿之間 織縫 衣褌 及襪沓
亦 作弓矢 令服其衣褌等 令取其弓矢
遣其孃子之家者 其衣服及弓矢 悉成藤花
於是其春山之霞壯夫 以其弓矢 繋孃子之厠
爾 伊豆志袁登賣 思異其花
藤蔓で弓矢、繊維に解して衣服・靴下・靴を作っていたことになるが、粗末なものしかできまい。
(後世の「枕草子」では"めでたきもの"として松にからむ紫色の花房の情景があげられている。小生のセンスでは、男女間のからみと見るが、この時点では、両者とも縁起モノとされていたのだろう。)


波那多知婆那はなたちばな
[歌44]いざ子ども 野蒜摘みに 蒜摘みに 我が行く道の 香はし 花橘は 上枝は 鳥居枯らし 下枝は 人取り枯らし 三栗の 中枝の 穂積り 赤ら乙女を いざ挿さば 好らしな
これは別途扱おう。


<照葉木系>
  📖眞賢木・麻都婆岐(真椿)・柃・眞拆
  📖呪術木
【いちさかき/ヒサカキ姫榊/柃木
(ま)さかき】/真賢木/楊桐/榊/紅淡比
【まさき】真拆/正木/柾冬衞矛
つばき椿/海柘榴/山茶花 📖山茶表現に見る和的体質


酸木すのき系>
さしぶ鳥草樹/烏樹/小小坊シャシャンボ/南燭 📖小小坊登場には仰天

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