■■■ 鳥類/哺乳類の分類 2013.5.11 ■■■ バッタの類縁とは 節足動物と名付けたのは、節があって、そこに対となる肢が付随するから。それはわかるが、それなら頭と尾を繋ぐ脊椎に、上肢・下肢の2対しかない動物以外に、多肢動物があってよっそうなもの。何故、無いのかといえば、すべてが4肢動物の発展系だからだろう。 脊椎動物では、魚のような水棲の場合は鰭がいくつかあり、それが陸棲になると、鰭のうちの2対が上下肢になるとのストーリーは実にわかり易いし、納得できる話だ。 【哺乳類の体躯】 U U ]■ = ━━━━ 〜 U U 【頭部】 1対の顎(歯と舌が内蔵する場合も) 【首部:頭と胴体のジョイント】 【胴部】 2対の肢と一本の尾 ・水棲の魚の体躯が、首と胴の分別がはっきりしてくる。 ・鰭が4肢1尾に変わる。 ところが、脊椎ではなく、体の外側の「殻」というか、外骨格で支えられる構造になると、突然にして、肢は何対だろうがありえるとなる。理屈がどこかおかしくないか。初めに水棲ありきなら、それは何だというところから出発しなければおかしかろう。 にもかかわらず、素人からみても大いに違和感を覚えるにもかかわらず、バッタとムカデが近しい関係にあるということになっていたのである。こういう恣意的なものの見方がどうしてできるのか、理解に苦しむ。 思うに、化石で分析し易いのが、頭の部分だからではなかろうか。 ○バッタ(昆虫-六脚)とムカデ(多足)--1対の触覚+2対の顎+0対の顎足 ○エビ(甲殻)----2対の触覚+1対の大顎/2対の小顎+3対の顎脚 ○サソリ(鋏角)-----0対の触覚+0対の顎+(1対の触肢)+1対の鋏脚 突然、触角が2対だから、似ていると言い出しているようなもの。それに加えて、「顎」とか「鋏」いう用語がえらく紛らわしい。ここだけ、恣意的に素人がわかる用語にして、差異を目立つようにしているという感じを受ける。言うまでもないが、脊椎動物の「顎」とは口角部の上下運動をする部分である。脊椎という体躯に、上手くつなげて力が出るような構造になっている。「殻」動物にはこれは無理である。外郭に付属して力をかけるしかない訳で、それは明らかに「肢」である。運動は上下ではなく、左右となる。要するに、各節に一対付属するのは、「顎肢/顎脚」、「鋏肢/鋏脚」、「歩肢/歩脚」ということになる。脊椎動物のアナロジーで言えば、上肢が下肢と連動した歩行運動でなくなるようなもので、鳥であり、鼠からヒトに至る系列がそれにあたるから、ここは重要なのだと思うが、それより触角の類似性に注目することになっているらしい。 ともあれ、バッタがムカデに一番近いと言われても、片や【胴部】に付属する3対の脚と2対の翅という構造で、他方は多数の節からなる【腹部】に、それぞれ1対の脚が付属する。同じ家系の生物と言われても、以下のように余りに形態が違いすぎて納得し難い訳である。 【バッタの体躯】 U▽U▽U ]]■ ━━━━━━ ━━━ U△U△U 【頭部】 0対の脚 【胸部】 3対の歩肢+2対の翅 【腹部:多節の名残】 0対の歩肢 【エビの体躯】 --- UUUUU ・・・・・ ]]]■ ━━━━━━ ━━━○ --- UUUUU ・・・・・ 【頭部:3節】 3対の顎脚 【胸部:5節】 5対の歩肢 【腹部:6節と尾節】 6対の退化気味の歩肢と尾扇 【ムカデの体躯】 -・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ■━━━━━━━━━━━○: -・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【頭部】 無脚(1対の触角と口器) 【胴部】 毒牙でもある顎肢付最前節(歩肢無)+1対の歩肢付中間節多数+曳航肢付尾節 【サソリの体躯】 > UUUU ■━━━━ ━━━○ > UUUU 【頭胸部】 4対の歩肢+1対の触肢/1対の鋏脚 【腹部】 0対の歩肢+尾部 これを見れば、素人的には、【頭部】+【胸部】+【腹部】という全体構造が同じだから、バッタとエビはかなりの類縁と言いたくならないか。ムカデには歩行に無縁な曳航肢が尾節にあり、見た目には頭の触覚と同じような印象。尻と頭の区別がつかないのである。頭と胴が見た目では境がないということでもあろう。しかも、中間節の数は様々とくる。それこそ、脊椎動物で言えば、背骨の数がどうにでもなるような生物な訳で、出自が相当に違うと考えるのが自然では。 一方、バッタとエビの関係は、哺乳類でいえば、海豚と河馬が同類というようなもの。イルカは尾鰭のバタフライで泳ぐが、これは魚の尾鰭の横方向運動とは違い、陸上の尾の縦運動である。陸棲である昆虫と、水棲のエビもそんな感覚で眺める必要があろう。翅は肢ではないらしいが、運動を司る主要機構であるのは間違いない訳で、バッタもエビも10脚で移動するのだから、運動能力についてはよく似ているとはいえまいか。エビの小さな脚は水の底では役に立つが、空を飛ぶには不要なのは当然だし。それは、水棲的陸棲の鰐と空棲的陸棲の鳥のような類縁関係と考えることもできそうな気がする。 うだうだ書いてきたのは、素人目には、バッタは、ムカデよりエビに近いように映るということ。サソリやムカデはいかにも遠いということ。にもかかわらず、ずっと、ムカデとバッタが結構近しい関係で、サソリとエビが別グループと覚えさせられた覚えがある。後者は、鋏の存在が大きいのかも知れぬが、素人からすれば、サソリは体が2つに分かれており、3つに分かれている生物と似ているといわれてもネ。でも、まあ、そういうことかと従っていたのである。 バッタは蛹にならないが、昆虫として一括している生物には蛹化するものが多く、その幼虫であるイモ虫は外殻は無いものの脱皮直後は体構造はムカデそっくり。(しかし節の数は決まっていそうだが。)ヒトの胎児が魚のようだというのと同じ話である。それに、よくよく成虫を眺めると、【頭部:5節、うちジョイント部3節】、【胸部:3節】、【腹部:例えば11節】といった構造になっているような気もする。エビの数とは違うので、多節がまとまった流れとして、エビとは違う方向に進化したと見ることができそう。ところがが、そのシナリオは教えてくれない。ストーリーは全く思いつかない無いが、それで正しいという強引な話である。こりゃ駄目である。知的退化と言ってよいだろう。 と言うことは、他になにか理屈があるということ。多分、バッタとムカデの類縁関係を示唆するような化石があるから、素人はその説を受け入れざるを得ない訳である。調べてみると、どうも、デボノヘキサポドゥス(デボン紀の海に住む6本脚だけが発達しているムカデ様の生物)がそれに当たるようだ。確かに、絵を見ると、胸の部分ができかけていると言われればそんな気にもなろう。しかし、たまたま理屈に都合のよい化石だったというだけかも知れない訳である。 常識的には三葉虫の全盛時代があった訳だから、それに一番近そうなのが、最古の部類。いわば、魚類が陸にあがって両生類という展開だから、そのストーリーを作って、その筋でどれが類縁か推測するというのが素人流の発想だが、それとは程遠いやり方がとられていたことになろう。 ともあれ、2010年のネイチャーでの論文で、バッタとムカデを近しいとの見方がくつがえったのである。ようやく逆撫でされるような分類でなくなった訳である。ムカデ、サソリは毒もあり、本能的に嫌われものであり、昆虫や海老・蟹の類とは親近感がまるで違うことからみても、それは古代の荒々しい時代の生き残り生物だろうというのが、普通の人の直感である。それを裏付けてくれたようなもの。 概ね、以下のような"家系図"になっている模様。 □□□□□□□□□U−−−−バッタ(陸棲) □□□□□□U−−◆ □□□□□□U□□U−−−−エビ(水棲) □□□U−−◆ □□□U□□U □□□U□□U−−−−−−−ムカデ □−−◆ □□□U □□□U □□□U−−−−−−−−−−サソリ (参照:化石から想定した古代動物の姿) デボノヘキサポドゥス(Devonohexapodus)・川崎悟司イラスト集 ■■■分類の話■■■ 分子生物学による系統訂正の面白さ (2013.5.7) 東アジアの民俗的分類 (2013.5.2) 舌分類の視点も面白い (2013.4.25) 分類話にこだわる理由 (2013.4.13) 哺乳類から外すべき動物 (2013.4.9) 哺乳類の4分類の詳細化 (2013.4.8) 蹄で見た哺乳類の4分類 (2013.4.4) 哺乳類の4分類化 (2013.4.2) 歯について (2013.4.1) 多摩動物公園の見所−INDEX >>> HOME>>> (C) 2013 RandDManagement.com |