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■■■ ジャータカを知る [2019.6.23] ■■■
[105] カンダハーラ司祭官
タイ(とビルマやカンボジア)では釈尊前生譚は、ジャータカ巻末の10譚[#538〜547]はMahanipata Jataka(タイ語:Thotsa Chadok)として皆が知るお話になっているようだ。確かに、547では多すぎて、普通の頭の持ち主には馴染みの詩篇を覚えることもできないから、この程度がベストかも。(パーリ語では元々は22番目の本生譚とされていた。長老派仏教団では本生譚最後の箇所の意味。どの譚からかは不明。)
一部、順番が違っているが、どの行為にハイライトを当てるかを考えた結果の入れ替えだろうか。

巻末の2譚は眺めた。・・・
《10》慈悲深いWetsandon王子の寛大な行動
  [#547]ヴェッサンタラ王子VESSANTARA/毘輸安呾囉王子譚
    [→布施太子]
《5》賢きマホーサダMahosadha王子の洞察に基づいた行動
  [#546] THE MAHĀ-UMMAGGA/大隧道譚
    [→賢者マホーサダ]

続く3譚は検討したほどではないが、触れたことがある。・・・
《9》eloquent sage) 雄弁なヴィドゥラVidhura-Pandita王子の現実的行動
  [#545]ヴィドゥラ賢者VIDHURAPAṆḌITA/比豆梨賢者譚
    [→乾闥婆] [→河海豚、"淡水棲"] [→コブラ]
ナーガ王妃は賢者ヴィドゥラの心臓を欲しがったので、ナーガ王が命じた夜叉の将軍に捕捉される。
《8》偉大な婆羅門ナーラダNaradaの平静沈着な行動
  [#544]マハーナーラダカッサパMAHĀNĀRADAKASSAPA/大那羅陀迦葉梵天譚
    [→羽穗草]  [→山羊]
邪見に染まった王をなんとかしようと。
《6》竜族Phumithata王子の道徳的行動
  [#543]ブーリダッタ竜王BHŪRIDATTA/槃達龍譚
    [→コブラ]
人間界に転生したいが地下の王宮では難しいと考え、地上のヒトの世界で瞑想することに。

せっかくだから、その前も見ておこう。・・・
《7》名誉あるカンダクマーラCanda-Kumara王子の忍耐行動
  [#542]カンダハーラ司祭官THE KHAṆḌAHĀLA/康達哈羅司祭官譚
PupphavatiのEkaraja王の息子カンダクマーラ王子は王の代理役を務めていた。知恵に基づく高邁な意見を述べるということで、王家の司祭の婆羅門カンダハーラは裁判官に任命されていた。しかし、王の見立てとは違い、本当の所有者を認めずに、賄賂を支払った者を支持する男だったので、ごく自然に王子とは敵対関係が生まれていた。
ある日、素晴らしい天国の夢を見た王はその婆羅門に天国に行く道を尋ねた。その答は膨大な犠牲。・・・王の息子、王妃達、交易担当王子、牡牛、駿馬、これら動物の4つの肉塊。そして、それに見合った宗教儀式が必要、と。
そこで、愚かな王は都の外での大規模な血の供犠の準備をするように命令を出した。
王子は、罪なき犠牲者のためなら喜んで自分が死ぬから、そのような殺戮をしないように父王に頼んだ。しかし、軍隊は行動に移り準備が完了してしまった。
そして、王子が、血の供犠の穴に連行された時のこと。カンダスーリヤCanda Suriya女王が神々に向かって叫んだのである。それに応えた帝釈天は王権の象徴である天蓋を一気に破壊させたから、神聖な儀式は中止に。怒った群衆が婆羅門カンダハーラを襲い殺してしまった。王は亡命の道しかなく、カンダクマーラが王位を継承した。

中華帝国でも、天子のお抱え祭祀者のこの手の行為は珍しくなかったと思われる。個人問題に映るが、腐敗が始まると組織維持のために行くところまで行くしかないだけのこと。一旦、弾みがついてしまえばどうにも止めようがないのである。
一方、微々たるものでも、良い方向に進んでいれば、愚鈍な王でも有能な善政統治者の看板が付くもの。

尚、残りを頭から順番に記載するとこうなる。・・・
《1》躄のテーミヤTemiya王子の拒絶行動
  [#538]ムーガパッカMŪGA-PAKKHA/躄譚 [→友情護呪]
父王の殺生命令を、膝で抱かれて見ていて、王位継承せずに済む算段として選んだのは、どんでもない演技だった。
《2》失踪したマハージャナカMahajanaka王子の逞しき行動
  [#539]マハージャナカ王子MAHĀJANAKA/摩訶伽那迦譚 [→緊那羅]
母の胎内にいる時、父王と共に殺害されるところを逃れ、王国奪回の旅へ。
《3》献身的なサーマSuvanna-Sama王子の博愛的行動
  [#540]サーマSĀMA/摩賢者譚
修行者の両親は視力を失ってしまったのでサーマは唯一の助けとして世話にあたっていた。果物集めと鍋での水汲みのためMigasammata川に行くのが日課。たまたまそこに、ベナレスの王Piliyakkhaが鹿狩りに来ていた。サーマは動物を飼っていたので、王はサーマは神かナーガだろうと思い、倒してから尋ねようと。
放たれた毒矢は脇腹に命中し、サーマは誰に敵対したこともないのにどうして撃たれるのかと。王は、聖なる存在者に悪行をなしたことを知り両親を連れてくることに。
そこで、女神バウソダリBahusodariが助けることにして、サーマは治癒、両親の視力は回復。
《4》高貴なニミNimi王子の絶対的決断に伴う行動
  [#541]ニミ王NIMI/尼彌王譚
Videhaのニミ王は、疑念を抱くようになり、聖なる生活と布施のどちらが実り多いのか知りたがっていた。
そこで、Śakra神が答えた。前者だが両方とも重要と。
神々はニミ王に会いたがったので、帝釈天は戦士マタリを派遣して連れてくることにした。先ずは地獄、それから天の神々が集うSudhamma Hallに。そこで7日間暮らしたが居住は拒否し、人の世界に戻った。そして、人々に神々の世界の幸福について語り、人々がそんな世界に往けるように施しをした。

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