表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.4.27 ■■■ 酉陽雑俎的に山海経を読む俯瞰的に「山海経」全18巻を眺めると、その目次はこうなろう。・・・ < I >山系毎の特徴[山5経] [01南]江西〜浙江の生態 [→] [02西]峡西〜甘粛の生態 [→] [03北]山西〜河北の生態 [→] [04東]山東の生態 [→] [05中]河南〜湖北の生態 [→] < II>地域毎の信仰風土[海外4経] [06南]祝融文化圏 [→] [07西]蓐収文化圏 [→] [08北]禺彊文化圏 [→] [09東]句芒文化圏 [→] < III >外側中華圏の国々[海内4経] [10南] [→] 浙江の国 福建の国 四川の国々 [11西] [→] タクラマカン沙漠の国々 新疆南〜チベット北〜四川西の国々 [12北] [→] 蒙古〜アルタイ山脈の国々 シベリア南部の国々 [13東] [→] 朝鮮半島渤海側〜遼東+満州東部の国々 渤海沿岸〜黄海の国々 < IV >中華帝国外縁マッピング[大荒4経] [14東]禺䝞の領域 [→] [15南]不廷胡余の領域 [→] [16西]弇茲の領域 [→] [17北]禺彊の領域 [→] < V >補足[海内・・・終巻] [→] [18東]朝鮮半島沿岸的倭の註記 [18西]沙漠都市国家の註記 [18南]奥四川の註記 [18北]奥シベリアの註記 [18末尾]帝系譜・・・別頁にて後述 先ず、[I]山系の特徴だが、足でかせいだ情報と言われている。 ここで、問題になるのは、"誰がなんのために"という点。それについては何も書いていない。これだけの書物が簡単に作れる訳がないから、政治的意図が見えてもよさそうに思うが、自明ではないのである。 そのため、宇宙観を得るために編纂された書に映ることもあるようだ。陶淵明のように、道教の風土で生まれ育つと、直感的にそこから世界観が得られるみたいだし。・・・ ---流觀山海圖 俯仰終宇宙 不樂復何如 [讀山海經其一] ただ、まるっきりの政治的作り話ではなく、現地情報を収集し、編纂整理したものであるのは間違いなさそうである。もちろん、入山できぬ山としておきながら、情報が記載されていたりもして実にご愛嬌ではある。逆に、そんなことがあるから、この書の編纂方針に網羅性がありそうと気付く訳だし、それなりに情報の粒度を揃えようという努力も感じる訳である。 ともあれ、中央の空想的地勢図に断片的な情報を当て嵌めて仕上げようとの意図は全くなさそう。そういう点で、読みがいがあると言えよう。 残念ながら山の同定は難しい。そのため、正確性の判断はつけようがないが、感覚的には距離数値はかなり正確と見た。(山の周囲にある道が直線である訳もなく、高低や回り道を勘案しての見方での話。)しかし、現在名称を想起させる山を中心にして、今の地図に当て嵌めるのは避けた方がよいだろう。特に、注記情報によりかかるのは、洞察力を鈍らすので避けたいところ。 ということで、どの辺りの話かは、大雑把に推定するのが一番。 それが、上記に記載した地理的範囲である。 浙江、福建、四川といった南側の地誌を細かく記載する姿勢に欠けていると見ただけのこと。 代替案が色々考えられるなら別だが、この手の判断はたとえいい加減であっても、直観的な仮説だから、それを前提に読み進んだ方がよい。もちろん、矛盾がひどすぎると感じたら、その時点でご破算。それだけの話。 こんなことを言い出すのは、[II]海外4経を読むと、文化の中心は「南」だったと指摘していそうな気がしてくるからだ。それで、南地域から記載が始まるのかと、妙に納得感が生まれたり。マ、この辺りの受け取り方は、感性によって大きく異なるかも知れぬが。 中華帝国は中原が中心との常識を破る書籍といえそう。普通は、北方勢力の圧力で、漢民族が南に押し出され、南朝の成熟した中華文化が花開いたと考える訳だが、古代で見れば文化的には「南」が圧倒的に優位だったとの歴史観が提示されていることになる。南の文化は憧れであり、北が模倣していた時代があったのである。 つまり、中華帝国樹立には、地域毎の信仰を独立させず、一元化する必要があり、その大きな役目を担っているのがこの[II]海外4経ということになる。 実際、[I]山経でも政治的対立が見えないという訳ではない。西経は黄帝系の話が散りばめられているのだが、南経の方は炎帝だけ。それが、[IV]大荒経になると、もっぱら黄帝系が語られるようになる。(西だけ黄帝が登場しないようだ。)・・・書籍のなかで黄帝系と炎帝系が陣の取り合いをしているようにも思えて来る。 このことは、旗色がはっきりしていない勢力の神や奇怪な鳥獣魚トーテムに関する神話はすべて抹消されたことを意味しよう。ほとんど残滓だけが、記載されているのである。 こういうことになろうか。・・・ [I]山経で中核地域の信仰風土を完璧に整理。その外縁の国々については、[II]海内4経で大ぐくりにまとめた上で、[III]海外4経で実際の国々の一覧という具合。 そして、中華帝国樹立路線がほぼできあがり、官僚的支配機構に合うように"地理学"的に再編したものが[IV]大荒4経となる。これは地誌書ではなく、外側に位置する様々な国を、概略9x9の方系イメージのなかに位置付けただけのもの。中央の黄帝の下のヒエラルキーに組み込むためのものであり、できる限り系譜や事績を記載することになるし、信仰を定着させるため、各国支配民の姓名も決めたのであろう。と言っても、過渡期だから、配下に収まらない国々も少なくないが。と言うか、征服対象をはっきり示した書であろう。 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |