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■■■ ジャータカを知る [2019.6.1] ■■■
[83] 樹木精霊
🌳ジャータカでは、樹木自身に神格は与えられていないが、そこにはほとんど一体化しているように見える、妖精(fairy/sprite/nymph)あるいは精霊(spirit)が住んでいるとされている。

輪廻観ではヒトが樹木に転生するとは考えられていないようだし、ジャータカでもそれを踏襲していそうだが、例外的に前生が樹木精霊となることがあるようだ。
例えば、釈尊の弟子カッサパKassapa/迦葉の前生はベンガル菩提樹の妖精(sprite)。・・・
[#537]大須陀須摩譚
カニバリズムの話だが、6種のモンスター魚が登場することで取り上げた。[→海豚]
本生譚としては長文で、Treeという語彙が50以上も記載されており、樹木を重視する姿勢を打ち出しているようにも思える。

同じく、弟子の女性出家者ウッパラバンナーUppalavaṇṇā/蓮華色比丘尼の前生も樹木の精霊(spirit)。・・・
[#414]不眠班譚
樹木の精霊は、一晩中眠らずに修行し続けたのに感心する話だが、もちろん、修行者は前生の釈尊。

マ、ジャータカは釈尊の前生を語るの経典だから、弟子をことさら取り上げたい訳ではない。上記の本生譚は例外的である。
ともあれ、注目すべきは、釈尊が《前生、私は樹木の妖精/精霊だった。》と語る話が存在すること。アニミズムを積極的に肯定していると見てよいだろう。

すでに取り上げた話だが、釈尊の前生という観点ではこんなところが目にとまる。・・・

[#475]PHANDANA攀達納樹譚[→獅子]
黒獅子が語った、車輪用に駄目な樹木は、
 ベンガル菩提樹Sál
 アカシアAcacia
 印度菩提樹か?mare's-ear
向いているのは灌木。もちろん、怒りの対象の樹木の伐採をを大工に勧める訳である。
 花没薬樹Plassey tree
釈尊の前生は森に住む神(deity)。一部始終をみていたのである。

[#018]死者供物譚[→羊]
山羊を生贄にする話だが、樹木の妖精(fairy)は前生の釈尊。

[#205]恒伽魚譚[→]
ガンガー川とヤムナー川の美しさを巡る競争で判定者亀が自分が優るとトンデモ発言。その一部始終を見ていたのが堤に生えている樹木の妖精(fairy)
単なる観察者であるが、それが前生の釈尊。

[#272]虎譚[→]
肉食動物の雄たる虎と獅子が仲違いするが、結局、両者は友情を確かめあうというお話だが、ここには樹神が絡む。両者が存在するから、森の伐採が進まないことをご存知だったのである。
この賢い樹木の精霊(spirit)は前生の釈尊。

但し、全体で見ると、樹木の役割は、"賢い目撃者"として事象発生の因果関係を読み解くことが中心である。
換言すれば、釈尊も樹木から見られていることになる。
[#278]水牛譚[→]
勝手し放題の猿が結局殺られる。
樹木の精霊(spirit)が美徳の主と判断した水牛は前生の釈尊。

知られずに勝手な行為をしていると思っていても、木々がその行動をしっかりと見ており、本当のことはお見通しと主張している訳だ。
[#105]弱樹譚…死をおそれる象[→象]
[#38]青鷺譚[→鷺]
[#139]二重失敗譚[→ガンジス魚]
[#187]四美譚[→鵞鳥]
[#209]鷓鴣譚[→岩鷓鴣]
[#283]工匠養豬譚[→猪]
[#492]木工養豬譚[→虎]
[#361]色高譚[→虎]
[#412]綿樹頂譚[→エピオルニス]
…名称無記載樹木ではなく、綿樹cotton-tree=カポック(or パンヤの木)Kapok/吉貝(木棉)。
  [#530]珊乞闍仙の詩や[#543]槃達龍譚にはSilk-cotton treeが出て来る。カポックではなく黄花棉擬Buttercup treeらしいが。

もっとも、[#437]腐肉豺譚では、ジャッカルと山羊の話だけで木は一本も登場しないが、釈尊が最後に、林の老木に住む神性(divinity)は私と語る。その真意は測りかねる。

尚、[#031]雛鳥譚には三十三天にSilk-cotton tree林が登場するし、神々のCoral treeも引かれているが、話の筋とこれらの樹木がどうかかわるのかよくわからない。もちろん、精霊とは関係ない次元では、時に有用樹木名称がでてくる。例えばMyrobalan plantとPepper shrubという具合。[#512]瓶譚

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