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■■■ 「古事記」解釈 [2021.6.19] ■■■
[169] インターナショナル視点での住吉3海神
住吉3神(底筒之男神 中筒之男神 上筒之男神)は、神社に祀られるだけでなく、船の帆柱受材である筒の下部に祀られる神(船魂)として、広く信仰を集めて来た。
封入されるご神体は、夫婦雛・髱・賽(2個)が基本らしい。ただ、筒である以上、普通に考えれば女神として扱われる筈だ。船の神格はたいていは女性であるし。
そのためか、男神とわざわざことわっている。

そうなると、夜の航行が避けられない外洋航海を考えると、神名の"筒"とは方位を読むための星座を示しているとの説にも説得力を感じてしまう。船神と航海/航路神は本来的には別概念ではあるもの、荒海を越えた漂着も頻繁だったとすればあり得ぬことではなさそうだし。

航路神とすると、当然ながら、潮の干満は第一義的に重要な情報であり、上弦の月-満月-下弦の月の陰暦は航海暦とされていた筈で、三相一体概念があっておかしくなく、そこらが海人信仰の3神ということかも。

志賀島の安曇3神とペアで誕生したにもかかわらず、発祥の地は全く異なる。
 住吉大社@摂津
    (御祭神:底筒男命 中筒男命 表筒男命 息長足姫命/神功皇后)

  <摂社>
  大海神社(御祭神:豊玉彦命 豊玉姫命)
  船玉神社(御祭神:天鳥船命 猿田彦神)
  若宮八幡宮(御祭神:誉田別尊/応神天皇 武内宿禰)
  志賀神社(御祭神:底津少童命 中津少童命 表津少童命)
ここで言う住吉とは、大阪湾を臨む上町台地の海側にある墨江津の地名。
[16]大雀命/仁徳天皇の巨大御陵の地域でもある。
📖難波之高津宮
実際、その時期に開港されたと記載されている。
  定墨江之津
その北側の台地突端が御津と呼ばれた難波津。国際交易の拠点とすべく、この辺りは大工事が続いたのである。
  掘難波之堀江 而 通海
   …《推定》上町大地横断運河[草香江(河内湖)〜大阪湾]
  又 掘小椅江
他の三海神の場合、安曇や宗像(胸形)のように氏族が奉斎しているが、湊を統治する津守連家は存在するものの、神社祭祀を司る特定氏族が指定されていない。国家としての航海守護に特化ということで登場することになったことを意味しているのかも。(墨江津は遣唐使船の船居/母港化したようだし。)
  山上臣憶良在大唐時憶本郷作歌[「萬葉集」巻一#63]
  いざ子ども 早く日本へ 大伴の 御津の浜松 待ち恋ひぬらむ

航海と言っても内海のことではなく、もっぱら、外海での大陸との通行。その焦点は、東シナ海〜対馬海峡にあり、交易の前提としての軍事=外交問題の神と考えることもできよう。

実際、[14]帶中日子天皇/仲哀天皇の大后 息長帯日売命/神功皇后に住吉神が憑依し、財宝がある西方討伐の詔。神が名を明かした訳で。
  是 天照大~之御心者 亦 底筒男中 筒男上筒男三柱大~者也
  《原註》此時其三柱大~之御名者顯也


古事記の記述では、出自は安曇神と一対だし、名称もそれぞれ住善と安住を意味していそうなので、安曇神を祀る志賀海神社と博多湾で向かい合っている社も創建されたようだ。
  @筑前 那珂@筑前 博多住吉
従って、ここだけ見れば、博多湾が阿波岐原の地と考えたくなるが、禊をするなら淤能碁呂嶋と無関係の地ということは有りえまい。国生みは淡(阿波)路⇒四国(阿波の地)という流れなのだから。
  📖筑紫の日向の橘小戸の阿波岐原は何処か 📖淡島と水蛭子に関係する地
そのように考えると、住吉社の本貫地は和布刈神事伝承地の下関の可能性の方が高かろう。
  @下関 一ノ宮 📖穴門之豊浦宮 & 筑紫訶志比宮
そして海峡圏と難波が連なるネットワークが出来上がったということか。
  @壱岐 芦辺住吉東触…八千戈神@相殿
  @対馬 島下
  @播磨 加西泉河内
    …(酒見社)"住吉大神上坐"[「播磨國風土記」賀毛郡河内里]

(ちなみに、「從三位住吉大明神大社神代記」では、玉野國渟名椋長岡玉出峡墨江御峡⇒住吉郡神戸郷墨江住吉大神とされ、表・中・底・姫の4宮。この他には、同一國内の西成郡座摩社と菟原郡社、播磨國賀茂郡住吉酒見社、長門國豐浦郡住吉忌宮、筑前國那珂郡住吉社。さらに、紀伊國伊都郡丹生川上、大唐國、新羅國(荒魂)にも大神宮ありと記載されているそうだ。)
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❶冒頭。クラゲのような"原始の海"的世界に神が顕れる。
  造化三神
  📖インターナショナル視点での原始の海
 その世界の名称は高天原。
 海に囲まれた島嶼社会に根ざした観念と言ってよいだろう。
 栄養豊富な海辺での水母大量発生のシーンが重なる。
 天竺なら さしずめ乳海に当たる。

❷神々の系譜が独神から対偶神に入り、
 神世の最後に登場するのが倭国の創造神。

  伊邪那岐命・伊邪那美命
  📖インターナショナル視点での神生み
 高天原の神々の意向で、矛で国造りをすることに。
 矛を入れて引き上げると、
 あたかも潮から塩ができるかの如く、
 日本列島起源の島が出来てしまう。
 島嶼居住の海人の伝承以外に考えられまい。

❸交わりの最初に生まれた子は蛭子。
 
葦船に入れ流し去った。海人の葬制なのだろう。
 しかし、子として認められていない。

 葦と言えば、別天神で"葦牙因萌騰之物"として
 唯一性情が示されるのが
  
宇摩志阿斯訶備比古遅神
  …いかにも河川デルタ域の神。
📖葦でなく阿斯と記載する理由
 そして"国生み[=嶋神生み]"で、
 日本列島の主要国土を生成する。
 📖インターナショナル視点での嶋生み
❹最初の海神は、神生みで登場。
 10柱第一グループの8番目。

  [海神]大綿津見神
  📖インターナショナル視点での海神
❺本格的な船は神生みの最後の方になってから登場。
  鳥之石楠船~/天鳥船
  📖インターナショナル視点での船神
 ここだけでなく、国譲りに再登場。
 派遣された建御雷神はあくまでも"副"。
 正は海を渡航する能力ある神。

❽その後、黄泉国から帰った伊邪那岐命は、
 穢れを払うために禊を。その最後に3貴子が誕生。
 天照大御神を絶賛し、高天原統治の詔。
 物実に使ってしまった筈の玉もレガリア的に。
 その一方、男神には、おざなり的に海原統治の詔。

  須佐之男命
  📖インターナショナル視点での海原統治
❻ところが、この3貴神誕生の直前に、海の3神2組が登場。
 海神名再登場だが、安曇連祖神である。

  底津綿津見神
  中津綿津見神
  上津綿津見神
  📖インターナショナル視点での安曇3海神
❼一組づつ、順次登場ではなく、ペアで3連続。
  底筒之男神
  中筒之男神
  上筒之男神

 こちらの3男神は墨江之三前大神(住吉神)とされている。
❾ 伊都久三前大神(宗像神)
  多紀理毘賣命(胸形之奥津宮)
  市寸嶋比賣命(胸形之中津宮)
  田寸津比賣命(胸形之邊津宮)
❿天孫降臨後
  綿津見大神

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