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■■■ 太安万侶史観を探る 2014.7.15 ■■■


日本古代史本として古事記を読む

「太安万侶史観を探る」ということで、ようやく古事記上つ巻の記載が完了した。
雑駁な話を続けてきた訳だが、日本の古代史2万年を描いたことになる。天皇家の視点での流れではあるが、それ以外の見方はフィクションの世界にならざるを得ないから止めた方がよかろう。

くどいが、ここで、古事記の意義を再度確認しておこうか。

古事記は、様々な言い伝えで混乱している状況を突破するために、一人のハイブローなインテリゲンジャが書いたもの。
「国史」とは180度異なる。・・・
「国史」の普通の作り方だと、多人数の専門家を集め、担当年代別にグループを編成。各グループは、国家が定めた思想性に基づいて、資料を寄せ集めてドラフトに練り上げる。そして、グループ代表が集まり、それらを合体させたものを調整することになる。冗長な箇所を削り、用語を統一し、思想性的に問題ないか権力上層部の意見を聞きながら文章推敲がなされるだけ。文体は重々しくなろう。

「太安万侶史観を探る」としたのは、このように編纂された「国史」を無視して、個人が勝手に描いた歴史書を読もうということ。
この姿勢は、極めて重要。

と言うのは、自分なりの歴史観を構築したいなら、思想性をオブラートに包んだような、全集モノは適当ではないからだ。学んでいるような気になるが、暗記から一歩も進んでいないのが普通。ただ、それはそれで、自分が属すコミュニティの常識を知ることができるのだから、意味が薄い訳ではない。そんな性格の本だから、ヒト、資料、時間、おカネをふんだんにかけて完成させた著述であっても、残念ながら、読む方は、木を見て森を見ずで終わる。そして、コミュニティの思想をそのまま受け入れることになる訳だ。

それに不満を感じる人は、その手の本を避けるのが賢い態度といえよう。
自然科学でいえば、編集者がまとめたオムニバス書を読むのはかんがえものということ。面白いし、部分的には役にも立つが、所詮はバラバラと集めたもの以上ではない。本気でその分野で新しいテーマを探したいなら、先ずは総論(レビュー)の熟読から。と言うより、全体像がわかっている先生の話を聞くのがベスト。
つまり、歴史観を得たいのなら、個人が責任を持って書き下ろした、「軽い」通史本から入るべきである。

当然ながら、通史書は読み通す必要がある。そうでないと、全体像が自分の頭に浮かんでこないからである。肝にめいじておくべきは、興味ある特定の事象だけピックアップするような読み方をしたら台無しという点。
西洋史的な世界通史本を読む際、まさか、いくつかある有名な本を並べて、逐一比較検討しながら読み進めることはしないだろう。

言うまでもないが、優れた通史本を読めば、ほぼ自動的に歴史観が見えてくる。だからこそ、その見方に疑問も浮かんでくる訳だ。そして、自分なりの考えがまとまってくるのである。

前置きが長くなったが、古事記から読み取った、2万年前の日本の歴史を振り返ってみよう。

 (I) 日本列島入植開始
アマ信仰の海人が日本に来訪。ムス霊祭祀を大切にしており、海で用いる矛(:ヤス)と巨木が標章だったようだ。
 【第1期】 日本列島に未だヒトの影無し
          → 冒頭での日本的主張
 【第2期】 ついに、日本列島にヒトの営み始まる
          → 「初の天降」の史的意味
 【第3期】 日本列島に海人文化圏ができあがる
          → 「国生み」は意味深
 【第4期】 社会が発展し、火のイノベーション発生
          → 「神生み」は熟考すべし

 (II) 部族文化が誕生し列島交流活発化
祭祀が高度化し、魂概念から呪術が生まれることで、部族祖神と様々な自然神が混交する祭祀社会の原形ができあがった。珠はその象徴の役割を果たしたのだろう。
 【第5期】 武力と呪術の祭祀政治が当たり前に
          → 「黄泉の国」期から世の中一変
 【第6期】 祭祀社会が広まり国家樹立へ
          → 「葦原ノ中ッ國」集権化の挫折
          → 古事記の神話的見方の例

 (III) 都市国家的部族連合の成立
土着部族集団が連合を形成。文化的には統一されてはいないが、祭祀的類似性が追求された結果、先進的な出雲を核とした国家を樹立。面的な支配ではないが、婚姻関係での結びつきなど、氏族社会の基盤は確立したと見てよいだろう。
 【第7期】 旧文化を包含する習合的御祭宗教が確立
          → 八百萬神祭の開始
 【第8期】 貴種と土着部族の婚姻による王国の成立
          → 妻隠み八重垣文化が花開く
 【第9期】 国家連合の誕生
          → 出雲の八千矛文化が広がる

 【第10期】 内部抗争はあるもののついに倭国樹立
          → 大國主ノ~は象徴的地位へ

 (IV) 渡来先進部族と土着部族の王国樹立
生産性の高い稲作技術を確立し、面的支配を進める、初の国家誕生。祭祀、政治、軍事、等が組織的に行われる仕組みが一部できあがる。それを可能にしたのは、祭祀形式の標準化である。異なる部族文化を祭祀によって融合させた訳である。
 【第11期】 天孫高千穂盆地に進出
          → 古事記から見た山信仰
          → 高千穂峰降臨の見方 (1), (2), (3)
          → 祭政分離の萌芽
 【第12期】 遠洋航海貿易民と
          高地盆地農耕族が文化的に合体
          → 南九州500年王国樹立


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