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2009.6.3
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素人が教授するハーブ入門[3:芹葉系]…


 芹系の香りは、水辺の清々しさを彷彿させる。
 続いて、緑豊かな野辺のイメージが湧いてくる。
 まさに疲れた頭への心地よい刺激剤。

↑(C) 素材屋小秋−季節の挿絵イラスト館−
 アニス風味のお酒にしばし立ち寄ったが、本道のハーブに戻ろう。紫蘇系の葉の学びと同様なやり方で、芹系を学ぶことにしよう。但し、フレッシュな葉茎の香りだけを対象とする。乾燥品や種は扱わないので、ご注意されたし。
  → 「1:紫蘇系」「2:アニス風味酒」 [2009.5.20/27]

 「芹」と言えば、普通はハーブのイメージは無く、葉野菜の一種だ。芳香はそう強いものではないし、紫蘇と違って、その特徴的な香りを活かして薬味的に使うこともないからだ。しかも、大量に食べることが多い。
 ただ、癖がある野菜であることは間違いない。その理由は、かすかな苦味にある。他の春野菜でも苦味を感じるが、芹の苦味は独特。これが好きな人も少なくなかろう。と言っても、「良薬口に苦し」的な賞賛を浴びている訳ではないので、芹はご遠慮という人も少なくなさそうである。他にいくらでも野菜はあるのだから。

 当然ながら、芹類のハーブを賞味するということは、この手の苦味に直面するということ。かなりバリアは高い。
 従って、少しづつ、異質な苦味と香りに触れていくのがよさそうである。ステップ・バイ・ステップで進めば、慣れも生まれよう。

 早速、開始。

●ステップ1● “和”の芹系野菜の葉茎茹で料理

 以下の野菜を茹でて、削り節と醤油など、ご自分の好きな味で食べてみよう。ここは準備体操のようなもの。わかっていても、意識的に、改めて味わってみることをお勧めする。
   ・葉みつば: 香りが淡すぎ、癖もないから、ハーブの勉強にはならない。不要。
   ・根みつば  >>> (2008年6月3日)
   ・  >>> (2007年11月27日)
   ・明日葉  >>> (2008年10月7日)
   ・人参の葉: 無理に試すことはない。胡麻和えは如何。  >>> (2008年6月10日)
 上記すべてが苦手ということはなかろう。もしそうなら、芹系ハーブを楽しむのはあきらめるしかないだろう。しかし、刺身の飾りが好きなら一縷の望みはある。少量を薬味のように使えば、結構イケルのかも。
   ・浜防風  >>> (2008年9月30日)
 ついでながら、牡丹防風(1)もある。沖縄ではサクナとかチョーミーグサと呼ばれるハーブだ。(2)本土と違って肉料理の先進地域なので、先島辺りでは臭い消し用に使うことが多いようだ。今は、観光食材化しているようで、東京の沖縄料理店ではサクナとして登場することもあると聞く。ただ、一般には、健康食品「長命草」として知られている。


●ステップ2● 定番香味洋野菜の生食

 洋野菜というと、塗炭に、駄目な人がでてくる。そんな方は、無理して食べることはないが、少しは試してみたら如何。和野菜が平気なら、洋野菜も慣れれば美味しくなってくると思うのだが。
 洋野菜は、生で、そのまま味わおう。食べにくいようだったら、マヨネーズ、ドレッシング、ディップをつけてもよい。
 冬ならバーニャカウダーも嬉しいものだ。 → 「アクアパッツァのお勧め」 (2008年7月2日)
   ・セロリ[Celery]:   >>> (2008年10月21日)
   ・パセリ[Parsley]: 葉と茎  >>> (2008年4月8日)

 尚、セロリは食べやすくしたものもある。セロリを食べなれない人はこちらがよいかも。売られているとは限らないが。
   ・ミニセロリ: 小型化品(多分日本の品種改良品)
   ・ホワイトセロリ: 癖ある香りの抑制品
 さあ、ここで、芹系の香りを楽しもうという気になったか確認すること。
 GOということなら、次は、もう少し手をかけた料理をしてみよう。


●ステップ3● セロリの中華風料理

 セロリの茎はスープや煮物に使うとよいが、セロリの香味だけでは物足りないので、この手の料理から始めない方がよい。目的は、あくまでも、セロリの効用を官能的に理解することだから。
 そうなると、最適なのは、中華風の炒め物料理。普通は、生姜や葱を入れ、片栗粉でトロミをつけて冷えないようにする料理だが、今回は、目的に合わせ、他の香りを入れずに作ろう。そして、セロリ風味を堪能する訳だ。
 ■■■ イカとセロリの炒め物 ■■■
 ・鶏スープの素を少量の紹興酒で溶かし、塩・胡椒を振り、よく混ぜておく。
 ・イカの冷凍ロール身を解凍し、筋肉繊維に直角に、一口大になるように切る。
  (予め、イカの表面に格子縞の浅い切り込みを入れるとよい。)
  (新鮮な生イカも冷凍も味はほとんど同じ。冷凍モノが廉価で便利。)
 ・セロリの茎を筋に直角になるように、細切りする。
  (気になる場合は、セロリの筋を取る。)
  (切ると変色が始まるので、この作業を先に行わないこと。)
 ・すぐに、フライパンでサラダ油を熱し、イカとセロリを同時に入れ混ぜながら強火で炒める。
 ・炒まったと感じたら、味付け紹興酒をふりかけ、さっと混ぜれば完成。
 ・熱いうちに頂こう。
  (紹興酒のロックはどうか。)

 セロリの葉は捨てる人が多いようだが、すべて使おう。明日葉同様に、天麩羅にすれば食べやすいし、佃煮にもなる。しかし、ここでは、いかにもハーブらしい使い方をしてみよう。肉臭さがセロリで抜けてしまうことを実感できれば成功。肉、葉、汁のすべてでセロリ風味を堪能できれば満点。
 ■■■ セロリ香味の蒸し豚 ■■■
 ・豚モモの塊を購入し、塩・胡椒を振り、揉みこんで、冷蔵庫で最低1時間保管。
 ・皿にセロリの葉を敷き、肉を置き、さらにセロリの葉で覆う。
 ・鍋に蒸し蓋を設置。水は少なめにして加熱する。
 ・鍋から蒸気が出ている状態で、皿を入れ、セロリの葉の上から紹興酒を注ぐ。
 ・あとはじっくり蒸すだけ。
  (水が無くならないように注意すること。必要なら、湯を継ぎ足でばよい。)
 ・皿を取り出して冷まし、肉を薄切りにして、辛子等をつけて頂く。
 ・葉は、刻んで、ラー油等、好きな味つけをするとよい。
 ・皿と鍋に残った液体も煮凝り風にして食べ尽くそう。
   -水分が多そうだったら少し煮詰めて適当な量にする。
   -塩・胡椒で味を調整する。
   -一度沸騰させ、火を止め、液体が静かな状態で粉ゼラチンを加え、よく混ぜる。
   -カップに注ぎ、粗熱がとれたら冷蔵庫で1時間以上冷やす。
    (具を入れたいところだが、これはセロリ味の勉強だから、我慢。)


●ステップ4● フレッシュ香菜の東南アジア料理

 さてここで、いよいよ異質な芳香に入ろう。多少はセロリに近そうと言えそうな、生の葉茎は3つある。
   ・コリアンダー[Coriander]/香菜/パクチー  >>> (2008年9月23日)
   ・ワイルドセロリ[Wild Celery]/中国セロリ/スマリッジ[Smallage]
   ・スープセロリ[Soup Celery]/芹菜: 軟化させたようなセロリ
 このうちでは、香菜[パクチー]は急速に入手し易くなっているし、束で売られているから、試すのには最適。もちろん、東南アジア風料理でいこう。
 この場合、不可欠なのが、調味料のナンプラー(魚醤)だ。信頼できるものを購入しよう。
 以下のいい加減な、“パクチー(香菜)+ナンプラー”を用いた3品料理を作り、これがまあまあ美味しく食べれたなら、様々なハーブ料理に挑戦できる力があるということ。
 ■■■ 香菜卵焼 ■■■
   ・溶き卵に、ナンプラーと砂糖を少々加え、香菜微塵切りを入れ混ぜる。
   ・塩・胡椒を振り入れ、軽く混ぜてから、フライパンで焼く。
 ■■■ 香菜ダレ厚揚げ ■■■
   ・玉葱を微塵切りし、香菜は細かく切り混ぜる。
   ・砂糖を少々加えたナンプラーで和え、レモン果汁を垂らす。
    (チリ風味も欲しいところだが我慢。)
   ・味を見て、必要なら、醤油を数滴落とすと食べやすくなる。
   ・厚揚げをプライパンで軽く焼き、サイコロ状に切り、味付け玉葱・香菜を乗せる。
 ■■■ 蝦子麺焼ソバ香菜のせ ■■■
   ・蝦子麺を購入。
   ・鶏スープの素を湯で溶かしておく。
   ・麺を湯に入れ、すぐに笊にとり、湯分を切る。
   ・フライパンにサラダ油をとり、千切り生姜を入れ香ばしさを出す。
    (芳香だけでは味に飽きがくるので、多少の刺激は必要である。)
   ・モヤシを入れ炒める。
   ・火が通ったら麺を投入する。
   ・さらに、スープをかけ、麺をよくほぐしもやしと混ぜる。
    (葱類が欲しいところだが、香菜だけに拘ろう。)
   ・スープがなくなってきたら、ナンプラー、塩・胡椒、で味付け。
    (ナンプラーばかりで単調と感じるなら、オイスターソースにしても。)
   ・皿に麺を盛ったら、ザク切り香菜を山盛りかぶせる。
 まあ、これにはよく冷えたビールか。


●ステップ5● 細生葉サラダ料理

 ここはサラダが好きな人のための項目。ただ、普通食べているグリーンサラダに、他のフレーバーを加えるような試し方ではなく、芹系ハーブの香りを愉しむもの。
 ただ、新鮮な葉モノが販売されているとは限らないので、たまたまハーブが手に入ったら食べるしかない。
 ここで使うのは、糸のような葉。対象は以下の2種類。言うまでもないが、同時利用は避けること。
   ・ディル/蒔蘿(イノンド)[Dill]  >>> (2008年10月28日)
   ・フェンネル/茴香[Fennel]  >>> (2009年3月10日)
 ディルはスモークサーモンについてくることがあるのでご存知かも。
 一方、フェンネルは種は有名だが、生葉は余り使われないようだ。ただ、それは、本土での話。
 沖縄ではイーチョーバーと呼ばれ、生葉は魚汁の臭み消しにしたり、サラダやお菓子に添えるそうだ。(3)
 那覇・牧志の公設市場辺りにあるテンプラ屋さんの“カタハランブー”(片側が重い) (4)は、サーターアンダギー同様のものだが、家庭では茴香葉入りになるのではないか。(安酒にイーチョーバーの種で香りをつけ飲む習慣もありそうだ。欧州のアニス酒の類推に過ぎぬが。)
 ということでサラダ料理だ。
 ■■■ ディルかフェンネルの魚介サラダ ■■■
   ・ディルならスモークサーモン薄切り購入。
   ・フェンネルなら白身魚の刺身を購入。
    (フェンネルの方が甘い感じがする。)
   ・玉葱を薄くスライスし、水で晒す。(もちろん、晒さずという手も。好き好き。)
   ・水を切って冷やしてあるレタスを大きく千切って皿に敷く。
    (包丁は使わないこと。)
   ・レタスの上に玉葱と魚を乗せ、ディルかフェンネルを千切ってふる。
   ・好みでドレッシングをかける。
    (オリーブオイルや、塩・胡椒だけでも素直な味。好き好き。)
    (もちろん、レモン絞り汁や、バルサミコ酢で頂くと美味しくなる。)
     [!注意!](ワインビネガーは酢がきついので使わぬこと。開けたてでないものは香りも悪い。)
   ・冷えたスパークリングワインで愉しもう。


●ステップ6● パセリ微塵切りを生かした料理

 芹科ハーブの生葉茎の芳香を愉しむ調理の最後はパセリ。ただ、使うのはパセリではなく、イタリアンパセリ。チャービルという手もあるが。
   ・イタリアンパセリ[Italian Parsley]: パセリは縮れ葉だが、これは平葉。
   ・チャービル[Charvil/仏Cerfeuil]: 若干、ピリッとする。
 イタリアンパセリは微塵切りにして使うことが多いが、これに凝るなら調理器具も用意するとよい。拙宅は未購入だが、そのうちに。
   ・Mezzaluna(半月型の包丁)(5)
   ・Trita Prezzemolo(ハンドルを回してハーブを微塵切りにする小型の道具)(6)
 プロバンス料理でも、パセリと大蒜微塵切りソース“persillade”があるように、この手の道具は欧州ではどうしても必要になるのだと思う。当然ながら、イタリアではバジル用でもある。

 そこまで注力する必要はないが、ともかく、パセリと良質の食材でどれだけの味が出せるか試してみるとよい。食材の質が良ければ、簡単な調理にもかかわらず美味しいものができる。手順など余り気にせず、味を見ながら作ればよいのである。
 ■■■ イタリアン風軽い豆スープもどき ■■■
 (肉料理をつけたら、スープ[Zuppa]でなくコントルノ[Contorno])
   ・食材準備。
      -グリーンピース(剥きたての新鮮なもの。時間がたつと硬くなる。冷凍品でも可。)
      -パンチェッタ[Pancetta](生ベーコン)かプロシュート[Prosciutto](生ハム)
   ・以下の材料すべてを鍋に入れひたひたの水を加え煮るだけ。分量は適当。
      (すぐに火が通る。そうしたら弱火にして数分で完成。)
      -豆(常温)
      -生ハムの細切り
      -大蒜の微塵切り
      -イタリアンパセリ微塵切り
      -良質なオリーブオイル 
   ・必要なら、塩・胡椒で味を調整。
      (肉の塩が出てきつく感じられたら砂糖を少々入れるとよい。)
      (煮込みすぎると豆が軟すぎて美味しくなくなる。)
  [!注意!]上記は柔らかい豆だから可能ということ。
      サヤエンドウは硬いので、この手順は通用しない。
      (どうせならサヤインゲンの方がよい。)
      その場合は、先ず、生ハム、大蒜、パセリをオリーブオイルで炒める。
      それに、サヤインゲンを入れひたひたの水で蓋をして弱火で煮る。(最低30分は必要。)
 ■■■ ポルチーニのパスタ ■■■
   ・食材準備。
      -乾燥ポルチーニ
      -パルミジャーノチーズ(チーズおろしが必要)
   ・ポルチーニをひたひたの湯で柔らかくする。
   ・微塵切り大蒜をオリーブオイルでよく炒める。弱火で。
   ・香りがでてきたら細切りポルチーニを加えて軽く炒める。
   ・ポルチーニの出し汁とパセリ微塵切りを加えて加熱する。
   ・塩・胡椒で味を調整する。
   ・水分量が減ったところで茹であがったパスタを入れてからめる。
    (良質のパスタで。手作りの生が美味しいがパスタマシーンが必要となる。)
   ・皿に盛って、チーズを振りかける。
   ・気楽にワインでも傾けながら。


 ・・・と言うことで、芹科の葉茎を使った料理のお勧めはここまで。
 尚、前回取上げたアニス[Anise]も芹科で、普通は種を使う。ただ、生葉も食べるそうだ。
 この他の芹科香味材の定番品しては、キャラウエー[Caraway]/姫茴香やアンジェリカ[Angelica]/西洋当帰がある。こちらも生葉が使えるそうだが、そこまで手を伸ばす必要はなかろう。

 とりあえずステップ6まで、生葉が楽しめたら十分。これで、香りがきつくなる「種」にも挑戦できる素地ができあがった筈。ただ、急がない方がよい。
 あくまでも初心者としての謙虚さを保って、徐々に香りに慣れていこう。

 --- 参照 ---
(1) 「ぼたんぼうふう」 跡見群芳譜
   http://www2.mmc.atomi.ac.jp/web01/Flower%20Information%20by%20Vps/Flower%20Albumn/ch5-wild%20flowers/botanbofu.html
(2) 「沖縄コンパクト事典 ボタンボウフウ」 琉球新報 [2003年3月1日]
  http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-42948-storytopic-121.html
(3) 「イーチョーバー」 おきなわ伝統農産品データベース
  http://traddb.pref.okinawa.jp/dentou/showNousanbutsuGuest.do?action=action_Show&nousanbutsuid=16ityouba
(4) 「沖縄コンパクト事典 カタハランブー」 琉球新報 [2003年3月1日]
   http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-40906-storytopic-121.html
(5) [Video]“How to Use a Mezzaluna”
  http://www.ehow.com/video_2345333_use-mezzaluna.html
(6) 例えば、9.90EURだと、こんな商品。
  [伊語]・・・ http://www.emmeshop.com/trita-prezzemolo-moulinex-acciao-inox-tritaprezzemolo-p-92.html
(セリのイラスト) (C) 素材屋小秋−季節の挿絵イラスト館−
  http://www.koakishiki.com/sashie/index.html


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