→INDEX

■■■ 今昔物語集の由来 [2020.10.2] ■■■
[460] 京都の天皇
"学校教育"日本史で、イの一番に暗記させられるのは、遷都先名称での時代区分。「今昔物語集」はそれとは発想が異なるようで、京都遷都については関心が薄い。ただ、南都と北京では、天皇称号の微妙な表現の違いがあり、権力構造が変わったことを感じ取っていたのかも知れない。

天皇記に当たる巻は欠巻にしております、と称していそうだから、天皇の記載が少ないのは当然ではあろうが、限定的であるものの天皇譚は収録されている。ところが、どう見ても、その取り上げ方が偏っている。

そこで、京都の天皇に関係する譚を眺めてみたくなった。

まず、天皇名不詳というか、書けそうにない譚が2つあるのでそれから。

なんと、天皇と盗人がグル。・・・
  【本朝世俗部】巻二十九本朝 付悪行(盗賊譚 動物譚)
  [巻二十九#_1]西市蔵入盗人語📖"羅生門"
かぐや姫に天皇も求婚。・・・
  【本朝世俗部】巻三十一 本朝 付雑事(奇異/怪異譚拾遺)
  [巻三十一#33] 竹取翁見付女児養語📖竹取翁

いかにも象徴的なお話である。これを踏まえてということでもないが、編年で眺めてみたい。
  50代[737-806年]桓武天皇
  51代[806-809年]平城天皇
  52代[809-823年]嵯峨天皇
  53代[823-833年]淳和天皇
  54代[833-850年]仁明天皇
🙈55代[850-858年]文徳天皇
32才で崩御。ナンダカネ譚が2ツ。
  【本朝世俗部】巻二十八本朝 付世俗(滑稽譚)
  [巻二十八#24]穀断聖持米被咲語📖仙境
天皇の篤い信仰を受けていた神泉苑の仙人は穀断の嘘がバレてしまった。
  【本朝仏法部】巻二十本朝 付仏法(天狗・狐・蛇 冥界の往還 因果応報)
  [巻二十#_7]染殿后為天狗被乱語📖天狗 📖鈴鹿山
行幸先で鬼は后との艶事を見せつけた。この染殿后は藤原冬嗣の二郎の后として別途紹介されている。📖藤原氏列伝
両者合わせると、なかなかに含蓄深き話かも知れぬと深読みしたりして。
業平の描く世界かも知れないと見たりする訳である。モデルは清和天皇らしいし、学習テキストの解釈とも違うだろうが、世の在り方への不快感吐露として読むのである。帝は、現実がどうなっているのかご存じなかろうということで、帝の代理として、詠み人不詳歌を引いた、と。
昔、帝、住吉に行幸し給ひけり。
我見ても 久しく成ぬ 住吉の 岸の姫松 幾世経ぬらん
おほん神、げぎやうし給ひて、
睦ましと 君は白浪 瑞垣の 久しき世より 祝ひ初めてき [「伊勢物語」117段]
  56代[858-876年]清和天皇
57代[876-884年]陽成天皇[868-949年]
一般的には歌で知られる。・・・
釣殿の皇女にに遣はしける
筑波嶺の 峰より落つる 男女川川 恋ぞつもりて 淵となりける [「後撰集」恋三776⇒「小倉百人一首」#13]
と言うか、この歌しか伝わらないので、流石、定家ということになる。希に見るトンデモ天皇とされ廃位に。皇統廃絶。ところが、この歌のお相手はその画策者の家柄。しかし恋は真摯そのもので、これこそ真の希代。
  【本朝仏法部】巻二十 本朝 付仏法(天狗・狐・蛇 冥界の往還 因果応報)
  [巻二十#10] 陽成院御代滝口行金使習外術語📖陽成院
妖術に興味。危ない天皇ということになる。
  【本朝世俗部】巻二十七本朝 付霊鬼(変化/怪異譚)
  [巻二十七#_5]冷泉院水精成人形被捕語📖陽成院の御殿
陽成院時代造成の池等が少し残っており、翁の水の精が出たというだけだが。
  【本朝世俗部】巻三十一本朝 付雑事(奇異/怪異譚 拾遺)
  [巻三十一#_6] 賀茂祭日一条大路立札見物翁語📖陽成院の御殿
穏やかなお方である。長寿もむべなるかな。
  58代[884-887年]光孝天皇
🤚59代[887-897年]宇多天皇
  【本朝世俗部】巻二十七本朝 付霊鬼(変化/怪異譚)
  [巻二十七#_2]川原院融左大臣霊宇陀院見給語📖源融 📖平安京の妖怪屋
宇多院の住居に源融が幽霊となって現れただけ。
代表的なのかはわからぬが、御製から。・・・
小八条の御息所に遣はしける
手枕にかせる袂の露けきは明けぬと告ぐる涙なりけり [「新古今和歌」集#1181]
60代[897-930年]醍醐天皇📖醍醐天皇
  【本朝世俗部】巻二十四本朝 付世俗(芸能譚 術譚)
  [巻二十四#_6]碁擲寛蓮値碁擲女語📖碁聖
斎院の屏風に山道ゆく人ある所
散り散らず 聞かまほしきを ふるさとの 花見て帰る 人も逢はなむ[拾遺#49]
  [巻二十四#31]延喜御屏風伊勢御息所読和歌語📖和歌集
  【本朝世俗部】巻二十九本朝 付悪行(盗賊譚 動物譚)
  [巻二十九#14]九条堀河住女殺夫哭語📖"羅生門"
御製。
中将更衣に遣はしける
むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる [「新古今和歌集」#995]
  61代[930-946年]朱雀天皇
  62代[946-967年]村上天皇
  63代[967-969年]冷泉天皇
  64代[969-984年]円融天皇
65代[984-986年]花山天皇📖花山院
  【本朝世俗部】巻二十八本朝 付世俗(滑稽譚)
  [巻二十八#13]銀鍛冶延正蒙花山院勘当語
  [巻二十八#37]東人通花山院御門語
  【本朝仏法部】巻十二本朝 付仏法(斎会の縁起/功徳 仏像・仏典の功徳)
  [巻十二#34]書写山性空聖人語 📖性空聖人
  【本朝世俗部】巻二十九本朝 付悪行(盗賊譚 動物譚)
  [巻二十九#_8]下野守為元家入強盗語
御製。
三条関白女御入内のあしたに遣はしける
朝ぼらけ おきつる霜の 消えかへり 暮待つほどの 袖を見せばや [「新古今和歌集」#1189]
  66代[_986-1011年]一条天皇
  67代[1011-1016年]三条天皇
  68代[1016-1036年]後一条天皇
  69代[1036-1045年]後朱雀天皇
  70代[1045-1068年]後冷泉天皇
  71代[1068-1073年]後三条天皇
  72代[1073-1087年]白河天皇[-1029年]
  73代[1087-1107年]堀川天皇
74代[1107-1123年]鳥羽天皇[-1156年]📖鳥羽院の命
  75代[1123-1142年]崇徳天皇
  76代[1142-1155年]近衛天皇
  77代[1155-1158年]後白川天皇

 (C) 2020 RandDManagement.com    →HOME