■■■ 霊長類の分類 2013.5.31 ■■■

   ヒトとオランウータンが遠縁な理由

オランウータンがヒトとかなりの遠縁で、チンパンジーの一番の近縁がヒトで次がゴリラ、という分子生物学的分類は感性に反する思う。 [ボルネオオランウータン 2013.5.28]

しかし、この領域外での分子生物学による分岐推定は、進化の考えに大きく寄与してきたのは明らか。なかでも、化石で徹底的に練られてきた形態上の進化のストーリーを明瞭化したことが大きい。産卵の長旅族である鮭や鰻の類縁系図も、祖先が何処に棲んでいたか彷彿させるもので、素人にはえらく納得感を与えるものだった。画期的な成果をあげてきたと言ってよいだろう。
にもかかわらず、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンの類縁関係だけは、当てはまらない。未だに、なんのストーリーもないまま放置されているようなのだ。こまったものである。
このままなら、分子生物学の今までの成果とは幻想と言わざるを得まい。形質をいくら分類してもゲノム上の進化とは無関係であるという証拠が示されたも同然だからだ。
この問題を捨て置き、分類結果が出たことを大成果として喧伝する感覚にはとてもついていけない。下手をすれば、反証をならべていたりして。まあ、それも又学問的には大きな意味はあるのは確かだが、部外者としてはナンダカネという反応しかできかねる。

ただ、オランウータンとヒトが遠縁かも知れないという、状況証拠的なものが皆無という訳ではないようだ。(R. Foleyという学者の説らしい。)サルからヒトまでの生殖の生態を眺めると、そこには大きな流れが存在しているという見方があるようで、これによればヒトとチンパンジーは父系社会型種族の祖先を持っていることになる。そういった社会的なものも、はたしてゲノムのなかに組み込まれているなにかに起因するということがありえるのか、よくわからないが、「ハキリアリ」[>2013.5.14] の社会構成も生殖と大いに関係しているのは間違いないし、農業することが遺伝に組み込まれている訳だから、そうかも知れぬ感はある。
まあ、まだまだよくわかっていないことだらけということではあろうが、だからこそ、想像を働かせれば様々な仮説を生み出せる訳であるが、ニュースを眺めているとどうもすでにできあがった概念を活用した面白生態解説ばかり目立つ。そりゃ拙いぜ。

と言うことで、オランウータンとヒトの遠縁説を、素人なりに吟味してみよう。
一般的には、動物は雄が雌の気を引く訳だが、ヒトの社会はずいぶんと違う。たまたまと思っていたが、それは本質的なものかも知れない。(ヒトの雌は雄の注目を浴びようと一心腐乱。雄が自分の抱える雌の性的魅力度をあげようとする。雄の家系を重視するように活動していると見ることもできる。)遺伝子に組み込まれたなんらかの特徴が、生態に現れた可能性はありそうな感じもする。
人類の古代社会や、隔絶されている地域では、母系制が主流らしいが、安定した大きな社会を形成している場合は父系制になっている。進化のタイムスケールにのらないとはいえ、日本の社会を見ていると、父系制こそが伝統との考え方も結構根強いものがあるし。・・・数十万年前から連綿と続いている生態の記憶を呼び覚まされているのかも。まあ、一種の古代史ロマンのようなインチキ推定でしかないが。

つまり、素人的な見方だと、こういうこと。
○母系社会命の種族
  |
  |→生き残った伝統維持派・・・・・・・・・旧大陸の猿
  ↓
 ○家系の廃止、一夫一婦命の種族
   |
   |→生き残った伝統維持派・・・・・・・・テナガザル
   ↓
  ○家族廃止の個人主義種族
    |
    |→生き残った伝統維持派・・・・・・・オランウータン
    ↓
   ○家父長命の種族(雄のハレム)
     |
     |→生き残った伝統維持派・・・・・・ゴリラ
     ↓
    ○家系不明な父系的社会の種族
      |
      |→生き残った伝統維持派・・・・・チンパンジー
      |   (乱婚状態で父親はよくわからない社会らしいが。)
      ↓
     ○父系制以外の並存容認種族
       |
       |→絶滅した種族・・・・・・・・ネアンデルタール人、等、多数
       |→生き残った種族・・・・・・・ヒト
       |
       =
       ↓
      ○人工的家系の種族(新人類の誕生)

言うまでもないが、最後の「新人類」はオマケ。下記に示すように、すでに新潮流は生まれているから、外せなくなったのである。それが遺伝子と関係するようになるとも思えなかったが、上記が遺伝子の変異に関係しているなら、「新人類」は異なる種として分岐することになるのだろうか。
 (第1ステージ) 性行為が繁殖とは無関係なものに。
     (もっとも、ボノボはすでに挨拶代わりになっているそうだが。)
 (第2ステージ) 同性愛カップル/子供を作らない夫婦が急増。
 (第3ステージ) 他人の精子/卵子の子供を持つ動きの勃興。

  ■■■分類の話■■■
  動物漢字でセンスを磨く方法 (2013.5.29)
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