■■■ 分類の考え方 2013.11.14 ■■■

海藻の素人的自然分類

ハワイで海藻[Limu]料理を食べたことがある方も少なからずおられると思うが、紅藻のオゴらしい。日本では古代によく食べられていた緑藻ミルも食べられているという。
沖縄移民が多かったためか、南伝ポリネシア系食文化なのかよくわからないが、結構好まれているようだ。
日本人が海藻食好みなのは確かだが、これを見ると、海に囲まれた魚食文化が発達している地域なら、きっかけさえあれば海藻を食べたくなる感覚が生まれておかしくないと考えるべきでは。もっとも、最近は、健康にプラスというだけの頭で好む海藻食流行りの可能性もあるが。
  → 海藻料理を考える(2009.9.30)

島嶼でなくても、魚食地域のチリでは、古代から、"cochayuyo"という厚手の昆布のような褐藻[ダービリア/Durvillea系]食が続いているとの話もあるし。当然、ペルーにもそんな食習慣が残っている。こんなことが知られているのは、健康食品として流通しているからでもある。南ニュージーランド辺りでも採られているようだが、マオリ人の食を指すのか判然とせず、素人にはその実態はよくわからない。

しかし、海藻好きの人間が常識的に考えれば、毒物でも無い限り、海人系民族が海藻食を敬遠する筈がないと思う。その文化に目をつける民族がいれば、当然ながら海藻食は広がっていておかしくない。
実際、アジアでは、韓国南部の限られた日本類似の海苔食だけでなく、様々な海藻食がありそう。中国にしても、美味しさを知ったからこそ、日本から伝わった昆布を珍重した訳で、その食文化系列の地域で海藻料理があって当たり前だろう。なにせ、なんでも食べることをモットーとしているのだから。
もちろん東南アジアでも細々だが食べられているようだ。ここら辺りの漁民は、海藻採取を片手間に行える環境に居住していないから、下火になっているのは間違いないとはいえ。(マレーシア、タイ、カンボジア、ベトナム)島嶼のインドネシアやフィリピン[gulaman]になれば、孤立した島によっては独特の食文化が残っている可能性もあろう。

ヨーロッパにしても、北欧や島嶼(アイルランド東海岸、大ブリテン島西海岸)では珍しい食材と見なされてこなかった筈である。なかでも、ウエールズは、日本人から見ると佃煮のようなラヴァーブレッドが流通しているそうだし、Laver and toastは定番食と言ってもよいらしい。もちろん、スープやソースにも使われている。

このような状況を眺めると、日本だけが特殊な文化を築きあげたと、勝手に解釈しない方がよさそうである。
おそらく、日本人が海藻に拘り続けるのは、古代製塩がもっぱら「藻塩草」で、海藻と塩が調味料だったからでは。塩釜神社の藻刈神事(7月4日)はホンダワラ刈り取りだから、その主体はホンダワラで、不足すればワカメやアラメの類で代替だったと思われる。ホンダワラは滅多に食べなくなったが、それは海藻不要の製塩技術が主流でになったからだろう。従って、縁起ものとして、時々食されるだけの地位に落ちてしまったのだと思われる。
一方、北方でしか採れない昆布は、そのアミノ酸の旨みに気付かされて以来、引っ張りだことなり、調味料の王者と化した訳だ。

沖縄に至っては、仲介貿易でその味に嵌り、昆布なしでは暮らせない状態化してしまったと言っても過言ではなかろう。その結果、鰹節好きにもなったのではないか。黴菌による鰹節作りを知っていた筈なのに、積極的に手がけようとはしなかったようだから。それは、塩辛であるスクガラスがあり、魚醤の味を知っていたにもかかわらず、その大量製造には進もうとはしなかったのと同じ姿勢かも知れぬ。中華の肉料理文化濃厚でも、チキンストックというか「湯」を用いることをしないなど、選り好みがはっきりしている。調味という観点では、豚肉のアミノ酸エキスというよりは、もっぱら豚脂の愉しみを追求したかのように見えるし。
実にユニークな姿勢と言えよう。これぞまさしく亜熱帯の島嶼人体質では。

表面上は沖縄には大陸食文化が深く入り込んでいるように見えるが、根は違いそう。
一方、インドネシア風の炒め物「チャンプル」はしっかりと家庭食に根付いており、島嶼的文化の方に親近感を持っているということかも。水田稲作に向いた場所ではないが、わざわざタイ型の蒸留米酒製造技術を持ち込むというのも大いなる拘り。(沖縄オリジナルな黒麹菌使用)いかにも海人らしさ紛々。
従って、海藻食についても、簡単に採れるということがあるにしても、えらく拘りがある筈。だからこそ、アーサー汁が続いているのだと思う。

海藻を自然に分類するとしたら、そんな「拘り」視点が一番ではないか。
試しに考えてみたのが、以下の分類。

■■■「布」【褐】■■■
○コンブ/昆布[古代のヒロメ/広布](→ 20060421)
  アラメ/荒布(→ 20090717)
  カジメ/搗布
  サガラメ/相良布(→ 20081121)
  クロメ/黒布
  ツルアラメ/蔓荒布
  スジメ/筋布
○ワカメ/若布[ニギメ](→ 20070817)
  アオワカメ/青若布・・・広葉
  現代の"ヒロメ"・・・団扇状
  「根元」:マカナシ/海藻根[メカブ/和布蕪]
*ウミウチワ/海団扇:アクアリウム用
■■■「糸・紐」【褐】■■■
○マツモ/松藻(→ 20090828)
■■■「褐藻菜」■■■
布同様に菜になる。
○ホンダワラ/本俵[神馬藻](→ 20070720)
○ヒジキ[鹿尾菜](→ 20070727)
○モズク/藻付(→ 20090605)
■■■「緑藻菜」■■■
アオの嬉しさを楽しむもの。
○アオノリ(→ 20070713)
  平青海苔
  薄葉青海苔
  棒青海苔(乾燥青海苔)
  筋青海苔
  アナアオサ(穴)
  リボンアオサ
  オオバアオサ
  ヒトエグサ/一重草[西日本乾燥アオサ,海苔佃煮]
○ミル/海松(→ 20080229)
○イワズタ
  クビレズタ/括岩蔦[海ぶどう](→ 20090821)
  フサイワズタ/房岩蔦
*(ホソジュズモ/細数珠藻):アクアリウム用
■■■「海苔」【紅】■■■
乾燥したものを焼くスナック的なものが食の元祖では。
○アマノリ[岩海苔](→ 20070824)
  スサビノリ/荒海苔
  ムラサキノリ/紫海苔[浅草海苔]
  ウルップノリ/十六島海苔
○ハバノリ/幅海苔
○トサカノリ/鶏冠海苔(→ 20090612)
■■■「軟藻」【紅】■■■
◇ダルス/Dulse:アイルランド,スコットランド,カナダ等で食用
○アカバギンナンソウ/赤葉銀杏藻
■■■「糊的海苔」【紅】■■■
加工してゼリー状にするのが基本。
フノリのように、そのまま汁で食べることもある。
毒性藻類が付着する海藻もあるようだ。
○エゴノリ/恵胡海苔(→ 20080314)
○オゴノリ/尾胡草
○トゲノリ/棘海苔
○ツノマタ/角又
○イバラノリ/茨海苔(→ 20080320)
○テングサ/天草(→ 20080321)
○フノリ/布海苔(→ 20090724)

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