表紙 目次 | ■■■ 本を読んで [2016.1.8] ■■■ 雑学本を眺めて 珍名の薀蓄本を見かけたので読んでみた。著者は雑学書執筆に長けている方のようである。 「誰かに話たくなる」という吹き出し文句がタイトルについているところを見ると、薀蓄本とはそのような需要に応えたものということか。 小生の場合は、魚の話をいろいろ書いてきたので、その部分だけ一寸気になったというところ。取り上げている魚は30種類。 "はじめに"よれば、こういうこと。 「たとえば、オジサン、・・・。いずれも 現存するいきものにつけられている名前である。・・・ どうしてそんなユーモラスな名を持つことになったのか。・・・ 答は本書のなかにある。」 そのオジサンだが、当サイトでも取り上げたことがあった。 小生も、長い名前には驚いた。地域的な別名なら、いかにもありそうなクチだが、正式名とされていたからだ。 → おじさん(2007年8月10日) この分野の学者は、そんな遊びの余裕を愛しているということでもあろう。 ちなみに本書の貝類冒頭に登場する熊坂貝/Pallid carrier shell/綴殼螺も書いたことがある。水族館でお会いしたが、名前とは違って水槽の底で結構活発に動いている可愛い貝だった。Conchologistといういことで、仏では学術誌アイドルだがさもありなん。 もっとも、小生は、クマサカ君をSea floor ragmanと見なすクチ。 → 貝殻収集貝類(2015年5月7日) 魚のイの一番は、「うっかりカサゴ」。小生、カサゴの煮つけは大好きだが、味はどうなのかな。どうせ、テレビ番組の「うっかり八兵衛」好きの学者さんがどうしてもつけてみたかったところかと思ったら違った。成程、そういうこともあるのか。 → かさご(2005年4月15日) 次は鯊について一言。 ハゼと聞くと、どうしても東京湾釣兼即時天麩羅食が頭に浮かんでしまう。しかし、沖縄辺りに行くとそれは様々な熱帯魚を指すことになる。棲んでいる場所を考えれば当然なのだがとまどう。熱帯だから、種類は矢鱈に多い訳で、名前も当然色々。南洋小魚はたいていは派手だから、面白名前も多かろう。小生は、それよりは、瀬戸内海産につけた茶殻の方に面白味を感じる。マ、単なる色名でもあるからつまらぬといえばそうなのだが。 → はぜ(2006年2月17日) → ちゃがら(2007年11月16日) 一方、一番ポピュラーな魚といえば、鯵か。これも、大型を筆頭に様々な呼び名がある。形状が鯵形といえばそうかもと言えなくはないが、素人からすれば見た目の印象が相当に違う。呼び名にはそれなりの工夫があるのだと思う。 → あじ(2005年11月4日) [続](2009年7月31日) → こがねしまあじ(2007年1月19日) → いとひきあじ(2008年7月18日) そうそう、紹介されているのはガーラの正式名。結構有名な南島の 魚ではないか。もっとも、釣りに興味が薄いと初耳だろう。 → ろうにんあじ(2007年1月12日) ここらの魚とは一線を画す魚にはそれなりの命名理由があるが、名前を見た瞬間驚くのは確か。こんな名前だと、気にならない筈が無い。 → よだれかけ(2007年5月11日) そうそう、絶滅危惧種の海馬に、親類がいたとは露知らず。どこにお住まいなのだろうか。 → たつのおとしご(2007年3月30日) 別名での不可思議な名前は、探す気になればいくらでもでてくるだろう。どこの地域にも、馬鹿話お得意の人はいるもの。ココ一発の冗談で皆笑い転げ、それが時として残ったりするもの。広く使われる名前は、それなりに知的センスが光っている。 → あゆかけ(2008年10月17日) 別名マンビキも紹介されている。万引きや万匹ではないと思うが、それならナンダと問われても答は持ち合わせていない。ただ、「死平」と呼ばれていたのだから、ゲームフィッシングや漁撈の対象としての名前だと違和感ありというにすぎない。 漂流中の友を現す言葉でしかるべきと見るのである。大海の孤独に耐えるという点では、水同様に貴重だから、蘭引かな。無理か。 → しいら(2006年6月23日) マ、この辺りになると、さほどの違和感はないが。 琴を弾く 薫の姿 身に沁みる 魚の気持ち よくわからない → (2007年2月2日) 油坊主と 蒲鉾は 小田原がよい → (2006年8月11日) 小生も、長名にはまいった。こんなものを未だにカタカナ表記なのだから。カタカナに拘るのはいい加減に止めて欲しいもの。漢字表記を認めるなら、このような呼び名大歓迎だが、そうでなければセンスゼロ。 → ウケグチノホソミオナガノオキナハギ(2013年2月2日) こちらになると確かに珍名と言えるかも。 「ざらびくにん」 同類→ びくにん(2015年2月7日) 「こんぺいとう」 同類→ だんごうお(2009年11月13日) 「てんぐのおとしご」 同類→ うみてんぐ(2007年5月18日) ところで、気になったことがあるので、それを述べて読後感にかえさせて頂こう。 皆知らんプリすることになっているが、この手の本なら書いてもよそそうに思うことアリ。・・・ 古事記には山の神の二人の姫君がお嫁に行くお話が掲載されている。海人と山人が婚姻関係を結ぶ訳だ。ところが、姉君はその容姿が原因で嫌われてしまい山に戻される。花のような妹君が天皇家の后として選ばれのである。従って、狩のために入山する際には、失意の姫君を喜ばせる仕草が不可欠なのである。現代では破廉恥行為になるようなことも必要だし、魚の顔としては異端に属す海の魚の虎魚[→おこぜ(2009年2月27日)]を捧げる訳だ。御免なさいネのご挨拶である。 山の淡水魚に姫君のお遣いがいて当然。 (本) 北嶋廣敏:「誰かに話したくなる 珍名いきもの124」世界文化社 2015年6月 本を読んで−INDEX >>> HOME>>> (C) 2016 RandDManagement.com |