→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2023.6.11] ■■■ [715] 助詞<を>の俗解 サンスクリット語は口誦叙事の話語を文字記録化したものであり文章構造自体は単純。これは「古事記」にもあてはまる。 そもそも統語論なる思想は、≪SVО≫言語世界の視点で世界をすべて解釈すべきとの見方で貫かれた学問に近い。印欧語で一番古くに文法が確立したと思われるサンスクリット語には無用の概念と思われるからでもある。(順序固定言語か否かが、本質的な分類と考えるべきなのは、ほぼ自明。) もともと、語順は口誦者の自由だったことになろう。換言すれば、語順による意味の違いは無かったに過ぎない。サンスクリット語は多義語が矢鱈に多い上に、類義語も少なくない。このことは、口誦で韻を自由自在に表現することに注力できることになる。それを文字表記化で、一番美しい思われる形に規定したということでは。 ともあれ、口誦叙事には、順序の柔軟性が必要だったと考える方が自然だ。と言うか、小生は、そんなことは当たり前と思うが。 そうなれば、話語である以上、強調したい語彙が文頭辺りに来るに決まっている。さらに、サンスクリット語で特徴的なのは、受動態型の文章だらけで、意味上での主語はほとんどの場合使われていない点。つまり、文法上の"主格"形とは、主語表記用という訳ではない。 文の核はあくまでも述語=動詞ということ。 そのために、動詞の活用が精緻に定められているとも言えそう。と言うか、極めて複雑な様相を示している。しかし、それは論理的な筋が通っている体系に則っており、壮大なスケールと言ってよさそう。(2500年前の、Pāṇini:"Aṣṭādhyāyī"は4000の文法規則を記載している。) それでなんなんだ、となるが、簡単に言えば、≪SVО≫発想を止める必要があるということ。深く染みついており、極めてむずかしいが、それに拘る限り「古事記」の倭語読みはできないと考えた方が良い。 我々が≪SVО≫発想にいかにどっぷりつかっているか、以下の例で考えればわかるのでは。・・・ ×[規定SОV文法表記文章]私は猫を好きです。 ⇔○[話語文字化文章]僕は猫が好き。 ⇒◎僕は猫好き。 <が>は格助詞で、主格とされるが、上記の話語では対格である。おそらく、倭語では、動詞に直接繋がる目的語は自明なら格助詞不要。必要な時に<を>つけたのだと思う。 ・・・もちろん、この様な解釈はご法度。話語では助詞が欠落することがあると考えよ、とされる筈。 これは助詞の問題であるが、語順で言えば、" " おそらく、倭語は、<を>≒<に>であり、1つの文章で同一助詞の複数使用を避けるということ以上ではないと思う。 「古事記」の用例で言えば、"乙女を路問へば"がすべてを語る。"(出逢った)乙女に路を尋ねたところ"という意味としか思えず、規定文法に従えば、"乙女に路を問へば"となる筈。 〜 [000]男を・・・・・乙女を📖 [001]その八重垣を📖 [002遠]賢し女を有りと聞かして 美し女を有りと聞かして📖 [003遠]汝鳥にあらむを📖 [004遠]若やる胸を素手抱き・・・・・寝は寝さむを📖 [005遠]黒き御衣を📖 [006 007 008 009] [010]立ち柧棱の実の無けくをこきし聶ゑね・・柃実の多けくをこきだ聶ゑね📖 [011 012 013 014 015] [016]大和の高佐士野を七行く📖 [017 018 019 020 021 022] [023]己が命を窃み死せむと📖 [024 025 026] [027]日には十日を📖 [028]手弱が腕を枕かむとは吾はすれど📖 [029] [030]一つ松吾兄を一つ松人に在りせば太刀佩けましを衣着せましを一つ松吾兄を📖 [031 032 033 034 035 036 037 038 039 040] [041]この神酒を醸みけむ人は📖 [042] [043]佐佐那美道をすくすくと我が行ませばや・・・・・丸邇坂の土を初土は・・その中つ土を頭著く真火には当てず📖 [044]赤ら乙女をいざ挿さば📖 [045] [046]道の後こはだ乙女を雷の如聞こえしかども📖 [047 048 049 050 051 052 053 054 055 056 057] [058]山代川を川上り📖 [059]山代川を宮上り📖 [060 061 062 063 064 065 066 067 068 069] [070]倉椅山を険しみと📖 [071 072 073 074] [075]枯野を塩に焼き📖 [076 077] [078]大坂に遇ふや乙女を路問へば📖 [079]下樋を走せ下問ひに 我が問ふ妹を下泣きに 我が泣く妻を今夜こそは📖 [080 081 082 083 084 085] [086]大王を島に葬らば📖 [087 088 089 090 091 092 093 094 095 096 097 098] [099]少女のい隠る丘を金鋤も五百箇もがも鋤き撥るもの📖 [100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111] [112]小谷を過ぎて百伝ふ📖 [113] (C) 2023 RandDManagement.com →HOME |