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■■■ 「古事記」解釈 [2022.4.1] ■■■
[455][安万侶文法]矜持を示す音素文字
「古事記」で使用している音素文字を眺めていて、太安万侶の知識人としての気骨に触れている感じがしてきた。

儒教信仰に合致するように表記を整えていく言語標準化の流れは、国家統治を進めていく上では、避けて通れない。しかし、それは、営々と築き上げて来た精神文化を根本からひっくり返す所業になりかねないのも確かだ。そんなところから、官僚的合理主義一本で言葉を標準化すべきでないという姿勢を貫いているように見える。

それなら、それこそレッセフェールで、言葉の文字表記化を勝手に進めるべきかと云えば、それは違うだろう、という見方も堅持しているように見える。矛盾するが、それを承知の上で、妥協点を探ってみたということではなかろうか。

自立した知識人としての自負はあるものの、朝廷を支える一官僚でもあることを踏まえ、日本語の漢字表記に当たっては何を注意すべきかが、「古事記」に目を通せばわかるように誠心誠意書き込んだと言ってよいのでは。

そのあたりが透けて見えるのが音素文字としての≪を≫の表記。
文法上の意味がある文字としての≪を≫と、単なる音素文字≪を≫が見えなくなりかねない用法はできる限り抑えるべしというテーゼを打ち出していると見てよかろう。・・・
≪お≫
「古事記」用法
   意− 忍 於淤 隠
「万葉集」用法
   意憶 忍 於− − 応 飫

≪を≫
「古事記」用法
   袁
   遠
「万葉集」用法
  【「古事記」方式踏襲】
   袁
   遠
  【名転】
   尾 緒 麻・紵/苧
  【辞転】
   御
   雄/牡/男/夫
   小/少
    [巻四#489] 風小谷…風をだに
  【助転】
   乎[ヤ]
    [巻四#489] 風乎太尓…風をだに
   矣[ゾ]
    [巻二#161] 月矣離而…月を離れて
  【動転】
   呼[訓]よ-ぶ] [音]コ ク
    [巻四#781 路之長手呼…道の長手を
   越[訓]こ-す] [音]オチ エツ エチ
    [巻五#865 越等賣良波…娘子[をとめ]らは
   怨[訓]うら-む] [音]オン エン
    [巻五#819 奈良麻之勿能[ならましもの][]
   為[訓]な-す] [音]イ
    [巻三#475 花咲乎為里…花咲きををり
  【−】
   絃[訓]いと つる [音]ゲン ケン
    [巻二#99] 都良絃取波氣…[つる][]取りはけ

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