→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2022.4.8] ■■■ [462][安万侶文法]奈ではなく那 那に拘る理由は、おそらく、仏典の梵語訳文字に使われているから。(旦那、刹那、那落、遮那/舎那 etc.)太安万侶は火葬を遺言したに違いなく、仏典の知識もあったに違いなく、那は好みの文字だった可能性もあろう。 ---多聞天陀羅尼[毘沙門天王陀羅尼神咒@「法華経」陀羅尼品]--- この<那>だが、邑から構成されていて、その由来がわかっているのだが、正確にはまったくわかっていないとも言える古代文字なのである。 ≪那[冄+邑/⻏]/哪≫ {冄+⻏}⇒柰@越語(不榖) 【忘却の原義】国家名(西夷国冄駹)⇒指示代名詞(人 事 物) [呉音]ナ [漢音]ダ [訓]なに なんぞ いかん やす とも 【用法】疑問表示の指示語 要するに、 "那⇒柰⇒奈"であり、このような文字変遷を知る太安万侶は、元字の那に拘ったとも云えよう。 しかし、全く同じという訳では無い。 ≪奈/柰[木+示]/㖠≫ 【原義】神事に用いられる果樹⇒疑問 [呉音]ナ ナイ [漢音]ダ ダイ [訓]いかん いかんせん いかんぞ [譯]からなし(林檎) 「古事記」用例はこれのみ。・・・ 奈何・・・いか‐ん[=如何] 現代でも、漢字を説明する時は、奈良とか神奈川で使うということになるから、もっぱら仮名バージョンの文字である。 「古事記」では、語気的助詞(哪と記載すべきか。)が結構多用されており、文法解説書からすると、意味的に疑問/反語/禁止系と願望の意志を感じさせる希望/詠嘆及び勧誘系があるようだ。 小生が感じた、「古事記」らしさの語気表現としては、独白的に映る台詞のような言葉に仕上げている箇所であるが。 ただ、<な>と読む語は他にも少なくない。仕分けはしているようだが、その辺りの方針は今一歩不透明である。・・・ 不 無 勿 名 汝 大"穴"牟遅神 天之真"魚"咋 菘"菜" 尚、"之"で前述した、後世にはあまり使われなくなった<の つ が>的な連体格助詞と思われる用例もある。 "奴那登母母由良爾"、天の真名井に振り滌ぎて 有名な箇所は、"久羅下那州多陀用幣琉"之時 "阿那邇夜志愛袁登賣袁" "阿那邇夜志愛袁登古袁"であろうが、仮名文字で使うことを、はっきりと記載している。 <訓鳴云那志><訓金云迦那><訓板擧云多那> <訓鳴云那留><訓波限云那藝佐> もちろん固有名詞にも多用されている。 【神名等】 伊邪那岐神 伊邪那美命 沫"那藝"神 沫"那美"神 頰那藝神 頰那美神 "志那都比古"神 奧津"那藝佐毘古"神 邊津"那藝佐毘古"神 葦"那陀迦"神 比那良志毘賣 少名"毘古那"神 若"沙那賣"神 ”登美能那賀須泥毘古" "比古伊那許志"別命 意富"那毘" 葛城之高千那"毘賣" 針間之伊那毘能大郎女 倭男"具那"命/王 伊那毘能大郎女 伊那毘能若郎女 袁那辨郎女 多遲摩比那良岐 那婆理之稻置 阿那臣 阿藝那臣 伊勢之佐那造 那婆理之稻置 阿藝那臣 建伊那陀宿禰 韋那君 【呪物名】草"那藝"之大刀/草"那藝"劍 【地名】"伊那佐"之小濱@出雲國 佐那那縣 和那美之水門 那良戸 沙紀之多他那美 那良山 那良山口 <那/な>仮名はほぼ確定的と言ってよいだろう。これだけ広範にに使われているのだから。・・・ 【歌】那須夜伊多斗遠 【歌】奴延波那伎奴 迦祁波那久 那久那留登理加 【歌】那杼理爾阿良牟遠 那志勢多麻比曾 用波伊傳那牟 多多岐麻那賀理 毛毛那賀爾 伊波那佐牟遠 那古斐支許志 【歌】牟那美流登岐 幣都那美 牟那美流登岐 幣都那美 牟那美流登岐 幣都那美 和賀牟禮伊那婆 和賀比氣伊那婆 那迦士登波 那波伊布登母 宇那加夫斯 那賀那加佐麻久 【歌】那許曾波 那遠岐弖 遠波那志 那遠岐弖 多多岐麻那賀理 毛毛那賀邇 伊遠斯那世 【歌】阿米那流夜 淤登多那婆多能 宇那賀世流 阿那陀麻波夜 【歌】志藝和那波留 古那美賀 那許波佐婆 微能那祁久袁 宇波那理賀 那許婆佐婆 【歌】曾泥米都那藝弖 【歌】多多那米弖 伊那佐能夜麻能 【歌】那那由久 【歌】那杼佐祁流斗米 【歌】佐味那志爾阿波禮 【歌】本那迦邇多知弖 【歌】迦賀那倍弖 【歌】多和夜賀比那袁 那賀祁勢流 【歌】宇倍那宇倍那 都紀多多那牟余 【歌】都能佐岐那流 多多那豆久 【歌】那豆岐能 多能伊那賀良邇 伊那賀良爾 【歌】許斯那豆牟 阿斯用由久那 【歌】許斯那豆牟 【歌】迦豆岐勢那和 【歌】和賀美岐那良受 【歌】須久那美迦微能 【歌】志那陀由布 佐佐那美遲 波那美波志 比斯那須 曾能那迦都爾袁 阿波志斯袁美那 【歌】波那多知婆那波 那迦都延能 余良斯那 【歌】奴那波久理 【歌】許登那具志 【歌】伊良那祁久 加那志祁久 【歌】那爾波能佐岐用 【歌】麻祁流阿袁那母 【歌】玖毛婆那禮 【歌】斯賀波那能 【歌】那良袁須疑 【歌】曾能多迦紀那流 【歌】那美多具麻志母 【歌】那賀伊幣勢許曾 夜賀波延那須 【歌】多知迦阿禮那牟 【歌】那許曾波 余能那賀比登 【歌】余能那賀比登 【歌】那賀美古夜 【歌】斗那賀能伊久理爾 那豆能紀能 【歌】斯多那岐爾 和賀那久都麻袁 【歌】加那斗加宜 【歌】伊多那加婆 斯多那岐爾那久 【歌】和賀那斗波佐泥 【歌】布那阿麻理 【歌】那都久佐能 阿斯布麻須那 【歌】氣那賀久那理奴 【歌】那加佐陀賣流 【歌】麻多麻那須 加賀美那須 【歌】波那婆知須 【歌】麻比須流袁美那 【歌】蘇弖岐蘇那布 那爾於波牟登 【歌】加那須岐母 【歌】爾比那閇夜爾 那加都延波 淤知布良婆閇 淤知那豆佐比 美那許袁呂許袁呂爾 【歌】爾比那閇夜爾 曾能波那能 【歌】麻那婆志良 【歌】美那曾曾久 【歌】袁遲那美許曾 【歌】那袁理袁美禮婆 地文にも、もちろん、使われている。・・・ 故 爾伊邪那岐命詔之:「愛我"那邇"妹命乎 詔之:「愛我"那邇"妹命 然愛我"那勢"命 伊邪那美命言:「愛我"那勢"命 伊邪那美命言:「愛我"那勢"命 詔:「我"那勢"命之上來由者 我"那勢"之命爲如此 我"那勢"之命爲如此"登" 吾者到於"伊那志許米志許米岐" 於向股蹈"那豆美" "奴那登母母由良邇"・・・"奴那登母母由良邇" 於是萬神之聲者狹蠅"那須" 令占合"麻迦那波"而 "宇那賀氣理弖" 押分天之八重"多那"雲 "伊多玖佐夜藝帝阿理那理" 在其室待"伊那流" "那泥" 手足"和那那岐弖"不得殺 即匍匐廻其地之"那豆岐"田 "那豆美"行時歌曰 "那摩那摩邇"控坐 沙沙那美 是者天皇坐那理 者舂"佐那" 治天下那何 儛"訶那傳"歌參來 爲那何 ------------------------- 📖現代"の"文法との繋がり 📖"わ"は和 📖矜持を示す音素文字 📖琉を愛好 📖ヲを"遠"表記にする理由 📖ヲは袁にしたかったか 📖仮名案出の端緒 📖"之"文法の入り口 📖助詞<の>は乃でもよいのか 📖"ア"と"あ"を規定 📖語気詞の扱い 📖特別感嘆詞"然者" 📖接続詞不要の社会 📖ゴチャゴチャ表記の理由 📖構造言語文法は不適 📖句間字と文末字の重要性 📖膠着語の本質 📖日本語文法の祖は太安万侶 🗣📖訓読みへの執着が示唆する日本語ルーツ 📖日本語文法書としての意義 📖倭語最初の文法が見てとれる 📖てにをは文法は太安万侶理論か 📖脱学校文法の勧め 📖「象の鼻は長い」(三上章) 📖動詞の活用パターンは2種類で十分 📖日本語に時制は無いのでは 📖日本語文法には西田哲学が不可欠かも 📖丸暗記用文法の役割は終わったのでは 📖ハワイ語はおそらく親類 📖素人実感に基づく言語の3分類 📖日本語文法入門書を初めて読んだ 📖書評: 「日本語と時間」 📖日本語への語順文法適用は無理を生じる (C) 2022 RandDManagement.com →HOME |