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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.12.16] ■■■
[522] 最終巻の構成
ようやくにして、巻三十一本朝 付雑事(奇異/怪異譚 拾遺)の構成のほどが、なんとなくわかって来た。
かなり気を入れて収録譚を選定しているように思えて来た。と言うか、本気度を感じさせる仕上がり方である。

序文の類が一切無い書だが、最終巻は後書き的役割を果たしていると見てもよかろう。「酉陽雑俎」は序文しか伝わっていないが、全巻通して読めば後書きがあったらこうなる感は自然に生まれてくる。「今昔物語集」でも同じことが言えそう。
  📖後書き考@「酉陽雑俎」の面白さ

この巻は、巻三十に引き続き、雑多な事柄ですゾ、としている訳だが、公事の裏には生々しい動きがあるもので、それを綺麗事にしてはならないとのご注意を最後にもってきたかったのだろう。

つまり、世間一般で言われていることは、8割程度の人々に該当する話と思っているが、実際は違うことの方が多いのですゾ、ということ。
正確に言えば、無意識的に、皆で同じように考えておこうとの人の割合が8割というに過ぎず、実態は違っていたりするから、お気をつけ遊ばせ、となる。

それでは、残りの2割の人々の見方を参考にすれば、間違いに気付けるかというと、そうもいかないのである。
ある一面から見ると、大多数はAだが、少数派Bも居り、たまに異端Zの存在に気付いたりするというに過ぎないからだ。ここで注意すべきは、滅多にみかけない気がするZを、A、B、Zと並列で考えてしまう習い性。
と言うか、分析的発想では、それは正解なのだから致し方ない。

実は、Zと非Zの2つに分けるべきで、この場合、非Z=A+Bではないのが普通。
AとBは表面的に対立しているが、実は同じ穴の狢。
政治で言えば、右と左、あるいは与党恵と野党系のようなもの。両者ともに、その内部は細々とわかれ、極端なセグメントも存在し、対立は激しい。そこばかりに目がいくのは致し方ない。
そのため異端に目を向けることは稀。しかし、その存在に気付いた時、初めて見方が変わり、社会がどうなっているかわかってくる。
つまり、Zは異端に見えるが、AやBに属しているということ。AにもBにも、顕在化していないZが含まれているのだ。そうした潜在的Zは顕在化したZほどに極端ではないということ。

・・・これでは、なにを言っているのかわからないか。
マ、これ以上書いても意味は薄そうなので、ご勘弁のほど。

最終巻冒頭から順次お話を読んでいけば感じる筈である。
奇異/怪異な出来事か、とんでもない変り者の行動を取り上げた話であると言えば、その通りだが、じっくり考えてみれば身の回りでも程度の差こそあれ発生しているのでは、と。
それに気付く感受性を、自分が持っているかご確認の程、とのアドバイスでもあろう。このセンスを欠けば知識人として失格だから、心してかかれと言っているようなもの。

「今昔物語集」はあくまでも知識人を読者としている書なのだから当然の姿勢。そこらは、「酉陽雑俎」の著者と似ている。
鬼神などあり得ぬ話と考えている人だが、「在る。」という人がいるなら、実は存在するとも。矛盾だが、世の中とはそんなものと見ている訳だ。
  📖尊師玄奘@「酉陽雑俎」の面白さ

例えば、
 "異界の話を収録したが、
  どれも君のすぐ傍にある世界と違うか。
  それに、気付かないのかネ。"
と指摘しているようなもの。

と言うことで、以下のようにグループ分けしてみた。
  <_1〜10> 一見珍奇譚
  <11〜18> 異界話
  <19〜26> 組織長の過誤
  <27〜32> ヒトの性情実態
  <_33_> 物語とは
  <34〜37> 最終譚グループ
  --- 完 ---


-----1〜10 一見珍奇譚-----
[_1] 東山科藤尾寺尼奉遷八幡新宮📖逢坂山越の寺
[_2] 鳥羽郷聖人等造大橋供養📖架橋 (後半欠文)
[_3] 湛慶阿闍梨還俗為高向公輔📖湛慶改め高向公輔
[_4] 絵師巨勢広高出家還俗📖巨勢派 (後半欠文)
[_5] 大蔵史生宗岡高助傅娘📖目利き
[_6] 賀茂祭日一条大路立札見物翁📖陽成院の御殿
[_7] 右少弁師家朝臣値女死📖一目会ってからあの世へ 📖法華経聖句譚
[_8] 移灯火影死女📖鳥辺山
[_9] 常澄安永於不破関夢見在京妻📖二人同夢
[10] 尾張国匂経方妻事夢見📖二人同夢
-----11〜18 異界話-----
[11] 陸奥国安倍頼時行胡国空返📖東丹國
[12] 鎮西人至度羅島📖度羅島
[13] 通大峰僧行酒泉郷📖大峰山 📖熊野の地
[14] 通四国辺地僧行不知所被打成馬📖四国辺地
[15] 北山狗人為妻📖狗人
[16] 佐渡国人為風被吹寄不知島📖粟島
[17] 常陸国□□郡寄大死人📖巨人死体
[18] 越後国被打寄小船📖漂着犀角
-----19〜26 組織長の過誤-----
[19] 【愛宕寺別当】愛宕寺鋳鐘📖小野篁
[20] 【霊巌寺別当】霊巌寺別当砕巌廉📖目利き
[21]【能登守】 能登国鬼寝屋島📖能登沖鬼ノ寝屋島
[22] 【讃岐守】讃岐国満農池頽国司📖目利き
[23] 【山階寺大衆代表】多武峰成比叡山末寺📖多武峰
[24] 【祇薗の別当】祇薗成比叡山末寺📖完璧な明尊護衛 📖祇園別当 📖興福寺僧一瞥
[25] 【大和守】豊前大君知世中作法📖除目推量
[26] 【関白】打臥御子巫📖打臥巫女
-----27〜32 ヒトの性情実態-----
[27] 兄弟二人殖萱草紫苑📖鬼の醜草 📖兄弟殺意
[28] 藤原惟規於越中国死📖紫式部の父弟
[29] 蔵人式部丞貞高於殿上俄死📖殿上頓死処置
[30] 尾張守□□於鳥部野出人📖要介護老女
[31] 太刀帯陣売魚嫗📖フェイク太刀魚
[32] 人見酔酒販婦所行📖汚染鮎鮨
-----33 物語とは-----📖竹取物語を祖とする意味
[33] 竹取翁見付女児養📖竹取翁
-----34〜37 最終譚グループ-----📖四事績:箸墓継體大織冠大友
[34] 【箸墓古墳】大和国箸墓本縁📖箸墓
[35] 【継體天皇】元明天皇陵点定恵和尚📖多武峰
[36] 【藤原鎌足】近江国鯉与鰐戦📖鯉と鰐
[37] 【大友皇子】近江国栗太郡大柞📖大柞 📖大友皇子鎮魂

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