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■■■ 「古事記」解釈 [2023.1.28] ■■■
[歌の意味2]中巻恋歌
💖中巻は、初代から15代の天皇の各段構成になっているが、そもそも歌が欠落している段が多く、極めて偏在していることが特徴といえよう。
上巻では、国土に根付く神は恋にご執心であり、歌とはその呪的なもので、それによって神婚が成立するとの風情が感じられるが、その風土が一変したかのようだ。

   ①天皇段
上巻合計より多い13首もあるが、うち8首は有名な東征や皇位奪取クーデター予期であり、恋歌は💖皇后を娶る5歌のみ。
   ②〜⑨天皇段
そもそも、定型の記述と皇統譜以外に記載が無く、事績紹介を欠く以上、歌収載どころではない。
   ⑩天皇段
初国知らしし御真木天皇とされている位だから、話としては、結構ストーリー性があるものが収録されている段だが、直接天皇に結びつくものではない歌が1首あるのみ。恋歌ではない。
   ⑪天皇段
歌無記載。
   ⑫天皇段
ここが特徴的で天皇についての事績ではなく、全面的に倭建命の段と化している。収録歌が15首もあり、初代天皇段より多い。西・出雲・東の征伐と大御葬儀歌がメインであり、恋歌は美夜受比賣との💖初夜の月経歌のみ。
   ⑬〜⑭天皇段
歌無記載。
   ⑮天皇段
この段では14首秀才されているが、うち4首は<皇子に呼び寄せた女を譲り渡す>で、下巻冒頭の⑭天皇段への橋渡し的なもの。
皇統的には筋が良い大和の勢力との内乱を制した、父の皇后の力で即位したこともあり、恋歌とは言いかねるような、<この蟹やいづくの蟹>という💖結婚宴席御製が1首あるのみ。

・・・このようにまとめると初代皇后を娶る歌が代表歌かと思いがちだが、それは歌垣シーン4歌を含めているからで、そこには天皇は登場せず、代理の臣下とお嬢さんのやり取りである。歌垣はあくまでも、地祇系が培って来たその土地に根付いた文化なので、天皇は対応が難しかったことを物語っていそう。
しかし、宮に皇后を迎える段での御製になると、<葦原の穢しき小屋に>と、生々しい肉感的な表現ではない、正調の和歌のスタイルに仕上げてあり、儀礼的な印象を与える歌になっている。

一方、<この蟹やいづくの蟹>は、神婚時代を踏襲した作風を目指したようだが、かなり政治的な思惑も持ち込まれている。その割には、直接的に恋心を吐露しており、第一義はそこにありと云うことで、アンビバレントな感情をむき出しにしている訳だが。

中巻の恋歌とは、要するに、御製<葦原の穢しき小屋に>、倭建命の月経初夜歌、御製<この蟹やいづくの蟹>ということになるが、太安万侶一押しは、これらではなく。豐明の宴の開催辞としての御製とそこで召された髮長比賣を賜った(太子)大雀命の歌の一群だろう。

---INDEX---(ご注意)歌番号はテキストに従っておりません。
   《中巻初代天皇段》…13首(#10〜22) 📖
<東遷敗色脱却となる戦勝後の酒宴>…1首
[_10]①天皇⇒【自軍兵】@東遷宇陀の高城に鷸羂張る📖
<東遷続々勝利を誇る久米族>…5首
[_11]①天皇⇒【久米人】みつみつし久米の子等が頭椎い📖
[_12]①天皇⇒【久米人】みつみつし久米の子等が粟生には📖
[_13]①天皇⇒【久米人】みつみつし久米の子等が垣下に📖
[_14]①天皇⇒【久米人】神風の伊勢の海の📖
[_15]①天皇⇒【久米人】盾並めて伊那佐の山の📖
<即位後の皇后探し>…5首
[_16]【大久米命】大和の高佐士野を📖
[_17]【①天皇】姉をし枕かむ📖
[_18]【伊須氣余理比賣】何故黥ける利目📖
[_19]【大久米命】吾が黥ける利目📖
[_20]【①天皇】葦原の穢しき小屋に📖
<崩御後 皇后が皇子の危機を救う>…2首
[_21]【伊須氣余理比賣】狭井川よ雲立ち渡り📖
[_22]【伊須氣余理比賣】畝傍山昼は雲と居📖
   ②〜⑨天皇…歌無収載
   《中巻10代天皇段》…1首(#23) 📖
[_23]【少女】御真木入日子はや📖
   ⑪天皇…歌無収載
   《中巻倭建命関連》…15首(#24〜38) 📖
<出雲健騙し討ち成功で得意三昧>…1首
[_24]【倭建命】やつめさす出雲建が📖
<妻の身を捧げる愛>…3首
[_25]【(后)弟橘比賣命】さねさし相武の小沼に📖
[_26]【倭建命】新治筑波を過ぎて📖
[_27]【御火燒之老人】日々並べて夜には九夜📖
<東征完了後帰還し かねての約束通り初夜>…2首
[_28]【倭建命】久方の天香久山📖
[_29]【美夜受比賣】高光る日の皇子八隅知し📖
[番外]【倭建命】三歎詔吾妻はや📖
<辞世的に、最後の気力で心持発露>…5首
[_30]【倭建命】尾張に直に向かへる📖
[_31]【倭建命】倭は国のまほろば📖
[_32]【倭建命】命の全けむ人は📖
[_33]【倭建命】はしけやし我家の方よ📖
[_34]【倭建命】少女の床の辺に📖
<葬儀で遺族は深い悲しみに陥る>…4首[大御葬儀歌]
[_35]【倭建命后御子等】<大御葬儀歌>水漬きの田の稲柄に📖
[_36]【倭建命后御子等】<大御葬儀歌>浅小竹原腰難む📖
[_37]【倭建命后御子等】<大御葬儀歌>海処行けば腰難む📖
[_38]【倭建命后御子等】<大御葬儀歌>浜つ千鳥浜由は行かず📖
   《中巻15代天皇段》…14首(#39〜52) 📖
<反逆すれど敗退した忍熊王 琵琶湖で最期…1首
[_39]【忍熊王】いざ吾君振熊が📖
<天皇凱旋で母・臣が寿ぐ>…2首
[_40]【御祖 息長帶日賣命】此の御酒は吾が御酒ならず📖
[_41]【建内宿禰】酒楽之歌この神酒を醸みけむ人は📖
<国見寿ぎ>1首
[_42]【⑮天皇】千葉の葛野を見れば📖
<妃獲得の喜びを宴席で表明>…1首
[_43]【⑮天皇】この蟹やいづくの蟹📖
<皇子に呼び寄せた女を譲り渡す>…4首
[_44]【⑮天皇】いざ子ども野蒜摘みに📖
[_45]【⑮天皇】水溜る依網の池の📖
[_46]【(太子)大雀命】道の後こはだ乙女を雷の如📖
[_47]【(太子)大雀命】道の後こはだ乙女は争はず📖
<吉野勢力が皇子褒め>…2首
[_48]【吉野之國主等】品陀の日の御子大雀📖
[_49]【吉野之國主等】檮の生に横臼を作り📖
<渡来製造法の酒に酔う>…1首
[_50]【⑮天皇】すすこりが醸みし御酒に📖
<崩御後の皇位争奪闘争>…2首
[_51]【大山守命】千早振る宇遅の済に棹取りに📖
[_52]【宇遅能和紀郎子】千早人宇遅の済に渡り瀬に📖

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